続々出てきた“タフ系スバル”「ウィルダネス」 その国内展開の見通しは?
2023.05.08 デイリーコラムアメリカ独自の企画商品
スバルの北米市場専売車である「ウィルダネス」シリーズ。概要を簡単に説明すると、「アウトバック」や「フォレスター」などのSUVをさらなる本格オフローダーに仕立てた派生車種で、クロカンSUV並みの悪路走破性能をうたっている。最近になって、スバルのラインナップのなかではベーシックモデルに位置づけられる「クロストレック」にもウィルダネスが設定され(関連記事)、日本国内でも一部の層で話題となった。
外装は樹脂バンパーの大型化やアンダーガードの追加装着などを実施し、ヘビーデューティーな雰囲気をより高めながら、最低地上高もさらにアップ。アウトバックベースのウィルダネスでは、実に241mmものロードクリアランスを誇る。標準装着されるタイヤは「ヨコハマ・ジオランダーG015」とするなど、本格オフローダーとしての性能を向上させた。
スバルは、昭和の「レオーネ」時代から高めの車高と屈強なAWDシステムによる悪路走破性能を重視してきた歴史があり、乗用車をベースとしたクロスオーバー車づくりのパイオニアでもあったため、持ち前の得意分野を磨いた派生モデルといえる。ウィルダネスシリーズは、アメリカのスバルが日本の東京オートサロン出展車からアイデアを得て、独自の商品企画として生まれた。生産もアメリカで行われており、北米市場で一定の人気を博している。
日本国内ではフォレスターなどで“アゲ系”と呼ばれるリフトアップのカスタマイズが一部で人気を博していることもあり、特定のファンから熱いまなざしを注がれてきた。さいたま市のロッキーなど、逆輸入車の販売を得意とするディーラーが輸入し、法規面を日本国内で登録可能な仕様に仕立てて販売している。
アウトバック ウィルダネスは日本仕様のアウトバックとは異なり、2.4リッターのターボエンジンを搭載するなど、パワートレインの内容が国内で待望される仕様であることも、静かな人気の理由だ。円安が進む以前は650万円ほどで販売され、十数台が日本に上陸。スバルのSUVに特化したYouTubeチャンネル『SGP FORESTER TV』など、実際にアウトバック ウィルダネスを購入した人の詳細リポート動画も人気だ。
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オプションや特別仕様車に期待
筆者はオーナーさんのご厚意によりアウトバック ウィルダネスに試乗した経験を持つが、国内の現行型アウトバックの良さはほぼそのままに、アメリカのSUVらしいおおらかさが加味された魅力が実感できた。国内スバルのSUVでも装備される、泥濘(でいねい)路などでの走破性を高める電子デバイス「X-MODE」は速度が40km/hを超えても解除されず、エンジンの制御がアクティブなものに切り替わるなど、国内仕様とは異なる機能も面白い。左ハンドルということもレアな存在だし、マニア心をくすぐる魅力にあふれていた。
そんなウィルダネスシリーズだが、国内導入を待望する声も一部にあるとはいえ、それが実現する可能性は「万に一つもない」と断言できるほど低いのが現実だ。ウィルダネスシリーズが備える悪路走破性能は北米大陸の内陸部などで実際に必要に迫られるものであり、日本国内では明らかに過剰な性能。輸入コスト、あるいは同じ仕様を国内で生産するためのコストを考えても現実的ではない。
特にアウトバックは、日本国内での販売台数があまり見込めないこともあり、ウィルダネスを国内導入するメリットはほとんどないと思われる。ユーザーとしても、日本では普通に売られていないクルマだからこそ多少高額でも希少性に魅力が感じられるので、そこが損なわれるのは微妙なところだろう。
ただ、昨今のアウトドアブームもあって、ウィルダネス的な機能が求められるところは大いにあるため、東京オートサロン2023に出展された「クロストレック ブーストギアコンセプト」で見られたような、アウトドア現場でのユーティリティー機能を高めたオプションパーツの展開や、特別仕様車が実現することは十分考えられる。ウィルダネスシリーズの方向性はもともとスバルが得意としている分野なので、これを生かした今後の商品展開には大いに期待が持てる。
(文=マリオ高野/写真=スバル/編集=関 顕也)
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