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DS 7オペラE-TENSE 4×4(4WD/8AT)

変わってるだけではない 2023.05.31 試乗記 高平 高輝 マイナーチェンジによって車名が新しくなり、自慢のキラキラフェイスにも磨きがかかった「DS 7」。これならインスタグラマーの皆さんも納得に違いない。相変わらず多少のクセはあるものの、中身もきちんとつくり込まれた使いでのあるSUVである。

個性的であるには勇気がいる

万人受けを狙ってるつもりはありません、なんてプレゼンテーションはしょっちゅう耳にするが、数は少なくても本当に好きな人に届けばいい、分かる人にだけ分かればいいという姿勢を貫くのは、もちろん難しい。ビジネスでは採算がとれなければおしまいなのである。個性的あるいは風変わりなことでは当代随一のDSブランドを心配するのはまさにその点である。他人とは違うということでこの先もやっていけるのだろうか? とついつい気になってしまうのだ。

2014年にシトロエンから分離独立したDSブランドのフラッグシップSUVがDS 7である。「DS 9」が登場するまではDSブランド全体のフラッグシップでもあったミドルクラスSUVだが、先ごろマイナーチェンジを受けて従来の「DS 7クロスバック」からシンプルにDS 7に変更された。パワートレインは1.6リッター4気筒“ピュアテック”ガソリンターボとそのエンジンをベースにしたプラグインハイブリッドの「E-TENSE 4×4」の2本立て(ディーゼルモデルは廃止)、トリムグレードも最上級グレードの「オペラ」のみとなった。

フロントグリルやヘッドランプまわり、「DSライトヴェール」なる縦型のシグネチャーライトなどは新しいが、全体としては従来型とほとんど変わりなし。もちろんADAS系やインフォテインメントシステムは最新バージョンにアップデートされているようだ。

マイナーチェンジに伴い「DS 7クロスバック」から「DS 7」に車名を変更。改良は内外装のデザイン変更が中心だ。
マイナーチェンジに伴い「DS 7クロスバック」から「DS 7」に車名を変更。改良は内外装のデザイン変更が中心だ。拡大
ダイヤモンドがモチーフのドットがちりばめられたフロントグリルが新しい。ヘッドランプの端から下に伸びるシグネチャーライトは1本から5本に増え、「DSライトヴェール」を名乗るようになった。
ダイヤモンドがモチーフのドットがちりばめられたフロントグリルが新しい。ヘッドランプの端から下に伸びるシグネチャーライトは1本から5本に増え、「DSライトヴェール」を名乗るようになった。拡大
「DSライトヴェール」の一番外側はウインカーになっている。始動時にヘッドランプの内部ユニットが回転するギミックがなくなった。
「DSライトヴェール」の一番外側はウインカーになっている。始動時にヘッドランプの内部ユニットが回転するギミックがなくなった。拡大
今回の試乗車のボディーカラーは新規設定された「グリラケ」。これも含めて全5色から選べる。
今回の試乗車のボディーカラーは新規設定された「グリラケ」。これも含めて全5色から選べる。拡大
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パワフルな電動4WD

プラグインハイブリッドのパワートレインも従来型と変わりなし。ガソリン1.6リッター直噴ターボにモーター内蔵の8段ATを組み合わせたうえに、リアアクスルにも電動モーターを備えたいわゆるe-4WDである。リチウムイオン電池の容量は13.2kWh、普通充電のみに対応し、EV走行距離は56kmという。要するに「プジョー3008 GTハイブリッド4」と中身は事実上同じである。

フロントに搭載される1.6リッター4気筒ターボは200PS/6000rpmと300N・m/3000rpmを発生。フロントモーターは110PSと320N・mを生み出し、リアモーターは112PSと166N・mを発生。前後アクスルは連結されておらず後輪はリアモーターだけで駆動される。変速機はこれまでのグループPSA各車に採用されてきたアイシン製「EAT8」をベースに、トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを採用しモーターを内蔵した「e-EAT8」と称する8段ATだ。すべてを合計したシステムトータル出力は300PS/520N・mと相当に強力である。

普通に走りだす場合には後輪モーターによる電動走行。当然滑らかに静かにスルリと動き出すが、負荷に応じてエンジンも始動。その連携はスムーズで音も十分に抑えられている。センターコンソールのスイッチで選択するドライブモードは、「エレクトリック」「ハイブリッド」「コンフォート」「スポーツ」「4WD」という5種類だ。とはいえ、どれを選んでも可能な限り電動走行優先となるようだ。始動時の基本モードはエレクトリックで(従来型はハイブリッドモードだったはず)、気づかずに走り続けているとあっという間にバッテリーがなくなる(最低限はキープされる)。「セーブ」モードも「チャージ」モードも備わらないから、たとえスポーツモード(エンジン走行が多くなる)にしても走行中に充電するのは難しい。

今回の試乗車はプラグインハイブリッドモデルの「E-TENSE 4×4」。システム最高出力は300PSとパワフルだ。
今回の試乗車はプラグインハイブリッドモデルの「E-TENSE 4×4」。システム最高出力は300PSとパワフルだ。拡大
足まわりは20インチが標準。タイヤは「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3」を履いていた。
足まわりは20インチが標準。タイヤは「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3」を履いていた。拡大
リアのガーニッシュはメッキからグロスブラックに。「CROSSBACK」のロゴは「DS AUTOMOBILES」に置き換えられている。
リアのガーニッシュはメッキからグロスブラックに。「CROSSBACK」のロゴは「DS AUTOMOBILES」に置き換えられている。拡大
駆動用モーターの最高出力はフロントが110PSでリアが112PS。
駆動用モーターの最高出力はフロントが110PSでリアが112PS。拡大

なぜそうなっているのか? が分からない

以前にもリポートしたが、このPSA系ハイブリッドシステムは一風変わったロジックを持っている。左右のシフトパドルが使えるのはエンジンが稼働しているときのみ、アップダウンのある山道を走行中でも(たとえスポーツモードでも)スロットルペダルを戻すといつの間にかエンジンが停止してDレンジ(回生ブレーキを強めたい場合はBレンジもある)に戻り、そうなるとパドルを引いてもまったく反応しない。何のためのパドルなのか、なぜこのような設定なのか、いまだに釈然としない。

いっぽうで300PSと520N・mのシステム出力はだてではなく、全開にするとちょっと驚くほどのダッシュ力を披露する。コーナーの立ち上がりなどではリアモーターの力強いキックも感じられ、切れ味鋭く曲がっていける。結果的にはまあ不満のないパワートレインといえるのだが、ドライバー側で何もできないのがちょっと物足りない。燃費追求型のPHEVではなさそうなので、マニュアル固定モードなどがあればモヤモヤが解消するかもしれない。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は13.2kWh。EV走行換算距離は56km(WLTCモード)。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は13.2kWh。EV走行換算距離は56km(WLTCモード)。拡大
かつては「リヴォリ」「バスティーユ」なども設定されていたインテリアトリムは最上級の「オペラ」に一本化。ダッシュボードとドアトリムにはナッパレザーが貼られている。
かつては「リヴォリ」「バスティーユ」なども設定されていたインテリアトリムは最上級の「オペラ」に一本化。ダッシュボードとドアトリムにはナッパレザーが貼られている。拡大
ナビゲーションが標準装備になったのも新しい。12インチのタッチスクリーンは「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応している。
ナビゲーションが標準装備になったのも新しい。12インチのタッチスクリーンは「Apple CarPlay」と「Android Auto」に対応している。拡大

「アクティブスキャン」も心もとない

DS 7にはDS 9などと同じく、「DSアクティブスキャンサスペンション」なる可変サスペンションが備わっている。上述のパワートレインのモードと連動で切り替わる設定で、サスペンションをコンフォートにしてパワートレインをスポーツに、というような組み合わせにはできない。「アクティブスキャン」はフロントカメラで前方の路面状態を常時スキャンし、電子制御ダンパーを最適にコントロールするという触れ込みで、コンフォートモード時のみ作動するという。カメラ検知だけ、可変ダンパーだけ、でどれほどの制御ができるのかは疑わしいが(サスペンション制御についてもいまだに詳細不明)、そもそも各モード間の違いはあまり大きくない。スポーツにすれば若干引き締まり、コンフォートにすればなるほどボディーの上下動はフワリとやや大きめになるものの、5種類もの走行モードが必要かといわれると、ちょっと疑問だ。ハイブリッドモードひとつでほぼすべてをカバーできるのではないだろうか。頑健でフラットな乗り心地は好ましいのだけれど、段差や橋の継ぎ目などではダシンとタイヤの重さをバタつきとして感じさせることもあるのが惜しいところだ。

というわけで、相変わらずちょっと捉えどころがないのがDS 7である。個々のメカニズムやデザインに大きな問題があるわけではないが、その背景や理由について筋の通った説明がないのがクルマ好きには不満かもしれない。ちょっとクラシックでキラキラ絢爛(けんらん)豪華なインテリアの仕立てが大好きという方にはそれ以上必要ないかもしれないが、オジサンたちはフレンチラグジュアリーなんて言葉だけでは納得できないのである。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

シフトセレクターを囲むようにシルバー装飾入りのウィンドウスイッチやドアのロック/アンロックスイッチが並ぶ。
シフトセレクターを囲むようにシルバー装飾入りのウィンドウスイッチやドアのロック/アンロックスイッチが並ぶ。拡大
シート表皮は腕時計のベルトがモチーフだというウオッチストラップデザイン。一枚物のナッパレザーで仕立てられている。
シート表皮は腕時計のベルトがモチーフだというウオッチストラップデザイン。一枚物のナッパレザーで仕立てられている。拡大
センターコンソール後端にエアアウトレットがせり出しているため、後席に3人が座るのは難しい。背もたれは電動調整が可能。
センターコンソール後端にエアアウトレットがせり出しているため、後席に3人が座るのは難しい。背もたれは電動調整が可能。拡大
テールゲートはボディーの側面までカバーするタイプ。フロアボードの端をめくって充電ケーブルをスマートに収納できる。
テールゲートはボディーの側面までカバーするタイプ。フロアボードの端をめくって充電ケーブルをスマートに収納できる。拡大

テスト車のデータ

DS 7オペラE-TENSE

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4590×1895×1655mm
ホイールベース:2730mm
車重:1940kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:200PS(147kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/3000rpm
フロントモーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
フロントモーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
リアモーター最高出力:112PS(83kW)/1万4000rpm
リアモーター最大トルク:166N・m(16.9kgf・m)/0-4760rpm
システム最高出力:300PS(221kW)
システム最大トルク:520N・m(53.0kgf・m)
タイヤ:(前)235/45R20 100V XL/(後)235/45R20 100V XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
ハイブリッド燃料消費率:14.0km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:56km(WLTCモード)
EV走行換算距離:56km(WLTCモード)
交流電力量消費率:209Wh/km(WLTCモード)
価格:799万円/テスト車=807万8715円
オプション装備:メタリックペイント<グリラケ>(7万1500円)/ETC+取り付けキット(1万7215円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:3166km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:302.0km
使用燃料:27.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.0km/リッター(満タン法)/11.7km/リッター(車載燃費計計測値)

DS 7オペラE-TENSE
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