クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

ポルシェ911カレラ4 GTS(4WD/8AT)/911カレラ4S(4WD/8AT)/911ターボ(4WD/8AT)【海外試乗記】

楽しさいろいろ 2023.05.26 アウトビルトジャパン AUTO BILD 編集部 「911カレラ4 GTS」に「911カレラ4S」、そして「911ターボ」。このなかで最も高い満足が得られるのは、どの911なのか? さまざまな道での乗り比べを通して、人気スポーツカーの実像に迫った。

※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。

興味深い同門対決

ゴールデン・ミーン(golden mean:中庸)とは、極端に偏ることなく、その中間にあるがゆえに最適であることを意味する。そして、それこそが、私たちが求めているものなのだ。今回取り上げる3台の911の違いはどのようなものか? 「カレラ4 GTS」は「カレラ4S」と「ターボ」の間に挟まれている。その差を縮めたいだけなのか、それとも単なるマーケティングの結果なのか、はたまた余計なお世話なのか。あるいは、「GTS」とは最終的には「何でも屋」で、カレラにおいてオールラウンダーなのだろうか? それを見極めよう。

そもそも、この911トリオは公平に比較することができるだろうか? それはもちろん可能だ。今回は19インチホイールとスチールブレーキを装備したモデルはなく、1台は21インチホイールとセラミックブレーキを装着したうえでテストに臨んだ。われわれとポルシェは、3台のテストカーの装備の違いがせいぜいボディーカラーと飾りステッチだけとなることを確認すべく、細心の注意を払ってチェックした。

この3台の911は、同等のドライビングダイナミクス機器を搭載してテストに臨んだ。最高出力580PSのターボには4WDシステムが標準装備されていて、さらにリアアクスルステアリング、20インチ/21インチホイール、スポーツクロノパッケージが追加料金なしで搭載されている。したがって、カレラ4Sとカレラ4 GTSもこれらの要素を備えていなければならないことは明らかだった。さらに、ドライビングダイナミクスのレパートリーも充実させるため、PDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロールシステム)、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメントシステム/GTSにはターボと同様のヘルパースプリングを標準装備)、セラミックブレーキなどの装備も追加された。

また、カレラ4Sには、カレラ4 GTSに近い外観のスポーツデザインパッケージが、カレラ4Sとターボにはスポーツエキゾーストシステムが用意された。そして、“ポポメーター(お尻メーター)”がどこでも同じように快適に感じられるように、3台とも同じ18通りに調整可能なスポーツシートが用意された。

ビジュアル面では3台はそっくり。「911カレラ4S」と「911カレラ4 GTS」にはほとんど違いがなく、「911ターボ」はエプロンで見分けることができる。
ビジュアル面では3台はそっくり。「911カレラ4S」と「911カレラ4 GTS」にはほとんど違いがなく、「911ターボ」はエプロンで見分けることができる。拡大
ポルシェ 911 の中古車webCG中古車検索

価格差の意味は?

さて、価格の話だ。ターボはドライビングダイナミクス装備で22万0328ユーロ(約3300万円)。これはすごい! PASMとスポーツエキゾーストシステムを除けば、すべてを標準装備している「ターボS」よりも1万1000ユーロ(約165万円)安いのだ。カレラ4 GTSはターボよりいくら安いのか? 答えは4万9117ユーロ(約735万円)。では、カレラ4Sはどうかといえば、ターボより6万0999ユーロ(約915万円)も安いのだ。

しかし、911を愛し、週末にはサーキット走行会に参加し、300km/hで追い越し車線をゆったりとクルーズしたいあなたにとって、値段の差が何を意味するのだろうか。追加料金を払ってでも、ターボに乗りたいのか、カレラ4 GTSこそが911を思う存分楽しめるのか、それともノーマルの4Sでも十分なのか……それが、今わかる。乗り込んで、テストコースに向かおう。街なか、そして田舎道も。さらに、高速道路も300km走る。

その前に、エンジンと重量について少し語ろう。カレラ4Sもカレラ4 GTSも、リアには、同じ3リッターのツインターボボクサー(水平対向)エンジンを搭載している。カレラ4Sは最高出力450PS、カレラ4 GTSは同480PSだ。

カレラ4 GTSは、フロントの新しいエアディフレクターと、より急峻(きゅうしゅん)に伸びたリアスポイラーによって、30kgのダウンフォースを獲得している。先代のような、オプションのセミスリックタイヤ「ピレリPゼロ コルサ」は、需要不足のため廃止された。その代わり、ライトウェイトパッケージが用意されている。これにはカーボン製バケットシートやすべてのウィンドウの軽量ガラス化、軽量バッテリー、リアシートの廃止、断熱材の削減などが含まれ、25kgもの軽量化を実現する。

最高出力450PSの「911カレラ4S」。静止状態から100km/hまで、3.4秒で加速できる。
最高出力450PSの「911カレラ4S」。静止状態から100km/hまで、3.4秒で加速できる。拡大

レスポンス良く快適に走る

ターボはどうか? ターボSで650PSを発生させるのと同じ、試行錯誤の3.8リッターエンジン? そうではない。ターボチャージャーは、ターボSに比べて小さくなっている。ターボのコンプレッサーホイールは2mmコンパクトで、ターボ自体は55mmと同じ大きさだ。それ以外は、ターボとターボSはオールラウンドに同じ外観であり、フロントとリアに格納式スポイラーを備えたアクティブエアロな仕様である。では車重は? 今回試したターボは、1651kgと3台中最も重い。カレラ4Sは1610kg、カレラ4 GTSはさらに5kg軽くなっている。

カレラ4Sに乗り込み、250km/hで左車線を行く。そしてドライバーは、ゆったりとくつろぐ。PASMのスポーツサスペンションを搭載していることもあるが、911のレスポンスの良さには驚かされる。快適性については語るまでもなく、誰も揺さぶられることはない。どんな環境にも適しているといえる。カレラ4 GTSとターボは少し荒っぽく、シャシーは一貫して、よりレーストラックに向いている。

3台とも911は動きすぎ、フロントアクスルは食いつきが良すぎるから、常にステアリングに両手を添えていなければならない。ポルシェがなぜ横方向のサポートが充実した快適な18ウェイのスポーツシートをすべてのクルマに搭載しているのか、その理由がわかろうというものだ。

911のリアアクスルステアリングは、狭いカーブでの俊敏性を高めるだけでなく、ステアリングインパルスを強化し、コーナリングの安定性を向上させるという役割を担っている。911は、ある瞬間はとても簡単でシンプルな運転ができ、一瞬のうちに非常にスポーティーな一面を見せるという偉業を成し遂げている。市街地はもちろん、ワインディングロードやカントリーロード、そして高速道路におけるツーリングカーとしての本領を発揮する。

「911ターボ」のパワーのアドバンテージは明確だ。しかし、わずかに遅い「911カレラ4 GTS」のほうが、ほんの少し楽しく感じられた。
「911ターボ」のパワーのアドバンテージは明確だ。しかし、わずかに遅い「911カレラ4 GTS」のほうが、ほんの少し楽しく感じられた。拡大

燃費の差は大きくない

レーストラックについては後に紹介する。その前に燃料補給についてひとこと。ターボは他の2台に対するパワーアップにより、燃料消費量が大幅に増えているのだろうか? 否である。ターボの燃費はリッターあたり8.3kmで、カレラ4Sは同9km、カレラ4 GTSは同9.4kmと、その差はわずかだ。

では、スプリントとブレーキングのテストに移ろう。スポーツクロノパッケージが備わるため、2台いずれもローンチコントロールを搭載している。だから、スタートで失敗することはない。ターボが始動し、すべてをスポーツプラスに設定し、ブレーキを踏み、スロットルを全開にすると発進する。その光景は、文字どおり息をのむほど美しい。シルバーの911ターボはスタートブロックから飛び出し、メーカー仕様よりも、コンマ1.6秒速く、完全停止状態から0-100km/hと0-200km/hまでを、2.7秒と9.1秒で駆け抜ける。

どう猛とまではいかないが、ほかの2台も退屈しないダッシュを見せる。0-100km/hはカレラ4 GTSが3.2秒、カレラ4 Sが3.4秒と、ターボとそれほど離れてはいない。ただし、ギアの違いはだいぶ意識される。一方、ブレーキについては、誰もが納得するところだ。

「911ターボ」は、テストコースにおけるタイム計測では他の2台をしのいでみせた。
「911ターボ」は、テストコースにおけるタイム計測では他の2台をしのいでみせた。拡大

“速さ”が違う

では、レーストラックに移ろう。全長20.8kmのノルドシュライフェ(ドイツ・ニュルブルクリンクの北コース)では、ターボとカレラ4 GTSの差は、わずか3秒だった。より短いザクセンリンクに比べれば、これはまばたきのようなものでしかないはずだ。再び、ターボの出番だ。2021年初頭、われわれはターボをゲストとして迎え、ターボSよりもわずかコンマ6秒遅いだけの、1分31秒03というセンセーショナルなタイムで私たちを驚かせた。

今回も、ターボはアスファルトと一体化し、4輪にトルクを完璧に配分する。縁石を乗り越えても、カーブでの極端なレイトブレーキと同じように、冷たさを感じさせない。ステアリング、ブレーキ、シャシーが完璧にかみ合い、クルマを自在に操ることができ、すべてのリアクションが透明でコントロールしやすい。今回のラップタイムは? 前回とほぼ同じ1分31秒15だった。

カレラ4Sに乗り換えると、最初の1mで、すでにターボとの違いをはっきりと感じることができた。コーナーの立ち上がりでお尻を蹴られることもなく、スタートからフィニッシュまでの最高速度はターボに対して20km/h近く落ちている。しかし、全然遅くはない。ステアリング、サスペンション、ブレーキ、すべてが完璧だ。いくつかのコーナーでは、シャシーがかなり大きな馬力を想定して設計されていることが感じられる。だから、常に限界までマシンを追い込むことができる。1分33秒56、立派なラップタイムだ。

そしてカレラ4 GTSにチェンジ。ここでも数m走っただけで、この911が、ターボよりも“カレラであること”は明らかだった。カレラ4Sに比べてパワーがあり、速いのだが、いかんせん排気量が足りない。ハンドリングはカレラ4Sとターボの中間ではなく、別物だ。レシピは独自のもので、他の2台ほど臨床的ではなく、すべてのコーナーで、よりカリスマ性があり、ドライバーはより努力することができる。いや、しなければならない。

カレラ4 GTSはターボよりもさらに俊敏にステアし、カレラ4Sよりも明らかにボディーの動きが少なく、荷重変化のダンスがない、それがカレラ4 GTSの速さなのだ。タイムではターボより1.2秒遅いが、カレラ4 Sよりは1.2秒速い。その差は歴然としている。

第1位(297点): ポルシェ911カレラ4 GTS
価格で勝負。今一番面白い911パッケージだ。

第2位(293点): ポルシェ911ターボ
オールラウンダー? 横方向と縦方向のダイナミクスをすべてこなせる。運転しやすく、楽しみが多い。

第3位(292点): ポルシェ911カレラ4S
決して退屈ではない。速くて楽しいが、カレラ4 GTSよりずっと安いはずだ。

結論

大げさかもしれないが、私にとってGTSは、カレラにおける「GT3」だ。このクルマはドライバーに挑戦し、911ターボに対してもそれほど遅くはない。そして、価格・性能比という点で、まさにそのとおりなのだ。

(Text=Guido Naumann/Photos=Ronald Sassen、AUTO BILD)

記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)

「ポルシェ911」における各モデルの違いは、わずかな差であり大きな差といえる。だからこそ、このスポーツカーは多くの人をとりこにするのだ。
「ポルシェ911」における各モデルの違いは、わずかな差であり大きな差といえる。だからこそ、このスポーツカーは多くの人をとりこにするのだ。拡大
AUTO BILD 編集部

AUTO BILD 編集部

世界最大級のクルマ情報サイトAUTO BILDの日本版。いち早い新車情報。高品質なオリジナル動画ビデオ満載。チューニングカー、ネオクラシックなど世界のクルマ情報は「アウトビルトジャパン」でゲット!

車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

ポルシェ 911 の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連記事
関連サービス(価格.com)

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。