そのクラブとは

なるほど、ヨーロッパ自動車界から消え去ったブランドの墓場という設定か。なかなかユーモアの効いたクラブだ。しかしながら、メイクはばらばらである。さっそくスタンドで番をしていたメンバーをつかまえてみる。「墓場」に相応しく、黒スーツ、黒ネクタイの礼装でキメていた。手が込んでいる。
「あの、皆さんどういうクラブですか?」と尋ねると、「同性愛者による古典車クラブです」と教えてくれた。
壁に貼られたプレートには「Queerlenker(クイアレンカー:セクシャルマイノリティのドライバー)」とクラブ名が書かれている。

「クイアレンカー」は1998年、オランダ/ベルギーに接したドイツの街アーヘンで設立された。発足時のメンバーは12人だったが、現在60名にまでその数を増やしているという。
毎年春参加しているこのテヒノクラシカには、毎回メンバーたちがアイデアをひねったディスプレイを展開してきた。さらに2010年は、春から秋にかけて、5回のイベントやツーリングを企画。加えてそのデザインセンスが評価されたのだろう、彼らのウェブサイトは、ドイツの古典車誌「モータークラシック」誌のウェブサイトコンテストで2位を獲得した。

フランスやベネルクス諸国、そして英国にある同様の同性愛者古典車クラブとも緊密な連絡をとっている。この原稿を書いている2010年12月中旬には、フランスの同性愛者団体と「ヨーロピアン・ゲイ・カーオブザイヤー」の投票を実施中だ。その活動ぶりは、きわめて活発かつ、国際的なのである。
また、ガイジンのボクに対する彼らの熱心な説明には、他の自動車クラブのメンバーに勝るとも劣らない誠実さと、自動車に対する並々ならぬ愛情を感じた。

ヴァルトブルクの前に立てられた墓標。ネズミも顔を出している。
ヴァルトブルクの前に立てられた墓標。ネズミも顔を出している。 拡大
教会の屋根には「安らぎの錆(さび)」とつづられていた。
教会の屋根には「安らぎの錆(さび)」とつづられていた。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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