アルファ・ロメオ ミト コンペティツィオーネ(FF/6AT)【試乗記】
いよいよ本番! 2010.10.20 試乗記 アルファ・ロメオ ミト コンペティツィオーネ(FF/6AT)……318万円
アルファ・ロメオのコンパクトハッチ「ミト」にオートマチックトランスミッションを搭載した新グレードが登場。新型の走りと乗り心地を試す。
2年前に感じたこと
「ミト」はヒットまちがいなし。2008年の7月、イタリアにあるアルファのバロッコ・テストコースで最初に「ミト」に乗ったとき、筆者は強くそう感じた。そう思うといてもたってもいられなくなり、正規輸入に先立って雑誌で「ミト」のイタリア仕様を並行輸入するという企画を立案。1年あまり長期テストさせてもらった経験がある。
「ミト」は期待通りいいクルマだった。だから、東京から関西ぐらいの距離なら「ミト」で行ったし、同好の士のイベントにも参加したし、それはそれは楽しい日々だった。しかしだ、肝心のヒットの方はいまだその気配がない。3ドアのみ、マニュアルトランスミッションのみ、ついでに後席とトランクは狭し、という男らしい(?)素性がいけないのか、街中では本物の四葉のクローバーと同じぐらい、見つけるのが大変なクルマのままだ。筆者はバツの悪い気持ちのままでいる。
しかし筆者は再びこう宣言したい。「ミト」はヒットまちがいなし、だと! Alfa TCT(Twin Clutch Technology)と呼ばれる乾式デュアルクラッチ内蔵ATの出来は「フォルクスワーゲン・ゴルフ」と比べたって何の遜色(そんしょく)もないし、吸気バルブを電子制御する新型マルチエア・エンジンの仕上がり具合だって素晴らしい。ようやく「ミト元年」が訪れた――今度こそ、そんな気がしている。
小気味よさが際立つ
今回登場したのは、135psのマルチエア1.4リッターターボ・エンジンに6段のTCTトランスミッションを組み合わせた「スプリント」と「コンペティツィオーネ」と呼ばれる仕様である。「スプリント」は装備内容がベーシックな普及版、「コンペティツィオーネ」は装備充実でスポーティなぶんやや高価という設定だ。
ちなみに今年の夏、ひと足先に「クアドリフォリオ ヴェルデ」というモデルがデビューしているが、これは今回の「コンペティツィオーネ」よりさらにひとまわりスポーティな仕様である(車名が持つ迫力からすると、本来逆のような気もするが……)。170psのマルチエア1.4リッターターボに6段MTを組み合わせ、シリーズで唯一、電子制御ダンパー付きのダイナミックサスペンションを備えている。
それはともかく、まずはTCTトランスミッションの出来だが、これがなかなか素晴らしい。いい意味でその存在を感じさせないトランスミッションだ。乾式クラッチというと街中のストップ・アンド・ゴーや車庫入れなど極低速時でのギクシャク感が気になるものだが、半クラッチの制御が巧みなのか、車両の動きはとてもスムーズである。
一方、スロットル全開での加速時は、期待どおりデュアルクラッチならではのトルク変動がきわめて小さい、テンポのいい変速が体感できるので、今まで以上に小気味いいドライビングを味わうことができる。「コンペティツィオーネ」のステアリングにはクリック感が心地いいパドルシフターが付いているので、小気味よさがさらに際立つ。
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燃費に期待
TCTと同様に今回初登場となる135psのマルチエア・ユニットの印象の方は、170psバージョンに比べると中速域のトルクもトップエンドの迫力も数字どおりといった印象。「ミト」に十分以上の動力性能を与えてはいるものの、これならではの個性というものは特に感じられなかった。今回はチェックできなかったが、燃費に期待といったところか。
少々気になったのはエンジンが発する音だ。どうしたことか、今回は5000rpmあたりから音量を増してくるエンジン音に、心地よさを感じることができなかった。官能的に歌うというよりは、ちょっとノドの調子が少々よろしくない感じ。まあアルファということで、こちらの要求値もついつい高まってしまうのは事実だが。
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それと215/45R17サイズのタイヤを履く「コンペティツィオーネ」は、「スプリント」と比較してサスペンションのセッティングが明らかに硬く、回頭性は良いものの乗り心地が少々ハードなのが気になった。
筆者は個人的にアルファの足まわりはドイツ車などに比べればタッチが軽快で、しなやかにロールして(その姿勢から平行ロールなんて言われたりする)、コーナーで粘るのが身上だと思っているクチなので、そういう意味では195/55R16タイヤを履く「スプリント」の方に共感を持った。ロール剛性が低いぶん、ターンインのシャープさは甘くなるし、タイヤからのスキール音も早々にあがる。しかし乗り心地はいいし、なにより「らしい」のが気に入ったのである。
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(文=竹下元太郎/写真=荒川正幸)
