ポルシェ・ボクスター スパイダー(MR/6MT)【試乗記】
目方の軽いは七難かくす 2010.10.19 試乗記 ポルシェ・ボクスター スパイダー(MR/6MT)……1106万円
最強・最軽量のボクスター「ボクスター スパイダー」が日本に上陸した。「ボクスターS」より80kg軽く10ps強力な、ピュアスポーツの実力は?
原点への回帰
個人的に言わせてもらえば、今ある中で最も理想に近いポルシェ。どうも最近のスポーツカーは大きく重く豪華になりすぎた感じで、パワーがあるし各種の安定維持装置も完備だから簡単に猛速で行けるけれど、ドライバーとしての工夫とか、素直にクルマと語り合う喜びが薄れた気がする。
名作「ポルシェ911」だって例外ではない。その濃密な魅力は疑いようもないが、「カレラS」「ターボ」「GT2」「GT3」に「RS」に「RSR」と際限なく速さを求めたあげく、よほどの腕利きがサーキットで攻める以外には、自分の才覚で性能の一端さえ引き出せた実感を持てなくなってしまっている。そこそこ公道で活躍しても、「速いクルマですねえ」とは言われるが、「運転、うまいですね」と褒められることはない。
そこで、新しい「ボクスター スパイダー」に注目というわけだ。そのコンセプトは“原点への回帰”。もともと「ボクスター」は、ポルシェの中で最もスニーカー的なカジュアル風味が特徴だが、そこに真正のスポーツカーらしい魂を叩き込んだのがスパイダー。そもそも本当のポルシェ第1号車はミドエンジンだったから、これが本当のポルシェだとも言える。
仕立て方の手順はスポーツカーの正統で、走るために必要度の低いものを省略し、何より軽量化を最優先している。たとえばドアなど大きなパネルをアルミ化したのをはじめ、ルーフの開閉も電動式をやめたばかりか幌それ自体も簡略化されている。このクルマはオープンが原則で、本降りの雨の時だけ臨時に傘をさすといった感覚だ。だから最近のオープンカーのように、閉じれば耐候性が完璧というわけではない。