アストン・マーティン ラピード(FR/6AT)【試乗記】
希代の二枚目スタア 2010.08.24 試乗記 アストン・マーティン ラピード(FR/6AT)……2339万3150円
アストンの最新4ドアスポーツカー「ラピード」に試乗。その走りは? 乗り心地は?
この格好よさ、簡単ではない
大舞台でセリフや歌詞をまちがえたって動じない。もちろんみんなも、それを責めたりしない。なぜなら彼はスター(いやこの場合スタアと言った方が雰囲気か)だからだ。みんな、彼の一挙一動を気にしているし、彼の表情がどう変わったかという小さなことにすら話題が集まる。言うなれば「存在すること」そのものが仕事。アストン・マーティンは自動車界の数少ないスタアのひとりである。
とまあ、そういうわけでアストンはスタアだからして、人前で私生活など明かさないし、こちらとしてもバラエティ番組に出て本音を吐露してもらいたいなんて願ったりしない。だから「後席が狭そうですが、どういう用途を想定しているのですか」とか、「リーマンショックで開発や販売を見直しましたか」なんて質問は、ちょっと恐れ多くてできないのである。
まだクルマもまばらな早朝の都内で「ラピード」の鍵を受け取った筆者は、久しぶりにスタアなクルマが発する毒気に当てられ、尻込みしてしまった。この英国車の“不条理主義”たるや、その道の手だれであるベントレーやロールス、いや場合によってはブガッティすら超えている。アストンの顔をしているのに長さが5m超もあるボディ、しかも後席はかなり上等なレザーが張られ、リアエアコンまで備えているのに“オマケ”ときている。カッコいいとかスゴいなどといった陳腐な言葉では、ちょっとカバーしきれない。
インパネの中央にキーを突き刺して押すという、アストンおなじみのフェチな作法でエンジンを掛ける。すると477psを発生する6リッターV12エンジンはウワン! とひとほえし、ビルの壁に豪快にはね返った。