なんちゃって◯◯風が多いんですけど……

話は変わって、2012年、日本ではトヨタ車体が超小型EV「コムス」を発売したことで、マイクロカーが久々に注目を浴びた。
フランスといえば、いまなおEVよりもパワーユニットの主流は500cc前後の汎用(はんよう)ディーゼルエンジンなどの内燃機関であるとはいえ、イタリアと並ぶ欧州屈指のマイクロカー普及国である。出力4kWのモデルは、筆記試験のみの免許で16歳から運転できる。

パリモーターショーでは毎回フランスのマイクロカーメーカーが出展するが、今年は4ブランドが共同でスタンドを設営していた。思わず笑ってしまったのは、そのボディースタイルだ。いずれも、昨今人気のプレミアムコンパクトカーにそっくりなのである。「なんちゃってデザイン」だ。
担当者に話を聞くと、開口一番「こちらは(シトロエン)『DS3』風、あちらは『MINI』風です」と、ボクが指摘する前に解説されてしまった。そういえば、以前フランスのマイクロカーには、あの「ルノー・アヴァンタイム」風もあったっけ。
アヴァンタイムはともかく、言い換えればフランスのマイクロカーメーカーのモチーフになるということは人気車の証しだろう。マーケットを食い合うものではないので、“本物”のデザイナーとしては、怒るどころか実は内心喜んでいるのに違いない、とボクは信じている。

ちなみにフランスのマイクロカーメーカーの名誉のために記せば、彼らは商用車分野でEV普及の推進役を果たしている。フランスを代表するマイクロカー製造者のひとつ、リジェ社の商用車「ビーサン」は、フランス郵便の配達車として、確実に実績を上げているのだ。「2015年には現在の10倍の1万台が国内を走っているであろう。EVの普及には、商用車が重要な役割を果たす」と彼らの鼻息は荒い。

手前の「MINI」風なマイクロカーはミクロカー社の「M8」。奥の「シトロエンDS3」風の2台は、リジェの「JS50」。
手前の「MINI」風なマイクロカーはミクロカー社の「M8」。奥の「シトロエンDS3」風の2台は、リジェの「JS50」。 拡大
「リジェJS50」の運転席。このカテゴリーは、年を追うごとにフィニッシュが向上している。
「リジェJS50」の運転席。このカテゴリーは、年を追うごとにフィニッシュが向上している。 拡大
リアはスマートの香り漂わせるミクロカーの「M8」。
リアはスマートの香り漂わせるミクロカーの「M8」。 拡大
マイクロカーのブランド連合「ドライブプラネット」で販売店ネットワークを担当するピエール・マルタン氏。
マイクロカーのブランド連合「ドライブプラネット」で販売店ネットワークを担当するピエール・マルタン氏。 拡大
近年リジェがフランス郵便に納入実績をあげているマイクロEV「ビーサン」。
近年リジェがフランス郵便に納入実績をあげているマイクロEV「ビーサン」。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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