お父さんの「V40」

ここに紹介するアントニオは62歳。日本でいうと「とら年」である。彼のクルマは2003年型の初代V40だ。1.9リッターのディーゼル仕様で、オドメーターはすでに20万8000kmを刻んでいる。
「丈夫なクルマだ」とはいうものの、彼の場合、その選択の経緯はそれほど感動的ではない。いつも中古で、よいクルマを見つけては乗ってきた延長らしい。

アントニオの仕事は、ボクが住むイタリア・シエナの包丁研師である。30歳のとき親方に弟子入りして以来、毎日グラインダーの前で刃物を研ぎ続けてきた。家庭用刃物の使い捨て化が進んだ昨今、気がつけば県内唯一の研師となってしまったが、今も彼を頼りにして訪ねるプロ料理人や大工たちは多い。苦労人の彼ゆえ、ふたりの子どもができてからはクルマなどに時間を割いている暇はなかったのだろう。

使い込まれて、塗装がはげてしまったシフトノブ。
使い込まれて、塗装がはげてしまったシフトノブ。 拡大
シート脇には、ボルボの側面衝突安全システム「SIPS」が採用されていることを示すサインが。
シート脇には、ボルボの側面衝突安全システム「SIPS」が採用されていることを示すサインが。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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