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【スペック】全長×全幅×全高=3395×1475×1610mm/ホイールベース=2550mm/車重=1110kg/駆動方式=MR/モーター+リチウムイオンバッテリー(モーター:64ps/3000-6000rpm、18.4kgm/0-2000rpm、バッテリー330V/16kWh)/航続距離160km/価格=459万9000円(テスト車=481万9500円/三菱マルチエンターテイメントシステム+ハイグレードサウンドシステム=22万500円)

三菱 i-MiEV(MR/1AT)【試乗記】

“家電化”も悪くない 2009.08.12 試乗記 生方 聡 三菱 i-MiEV(MR/1AT)
……481万9500円
2009年6月に待望のデビューを果たした電気自動車「i-MiEV」。走行中にCO2を排出しないEVは、環境にやさしいクルマとして注目されているが、もうひとつ忘れてはならないのは、走りっぷりの良さだ。


この日を待ち焦がれていた

三菱の量産型EV「i-MiEV」が、日本の街を走り始めた。カタチは「i(アイ)」と変わらないけれど、これからのクルマ社会を大きく変える可能性が、このコンパクトなボディに秘められている。

モノフォルムボディとミドシップレイアウトが特徴の軽自動車iをベースにつくられたi-MiEVは、合計88セルのリチウムイオンバッテリーをホイールベース間の床下に収納するとともに、エンジンやトランスミッションの代わりにモーターなどのパワーユニットを搭載することで、iが誇る広い居住スペースをそっくりそのまま受け継ぐことに成功。全長3395×全幅1475×全高1610mmのボディも、iに比べて全高がわずかに10mm増しただけで、特徴的なスタイリングは維持されている。

90年代前半からさまざまなEVに触れ、量産車の登場を待ちきれず、ガソリン車をEVに改造した経験がある私としては、スタイリングもパッケージングも破綻なく仕上げられたi-MiEVに、ただただ驚くばかり。ベースのiを知らなければ、EV専用にデザインされたクルマといわれても信じてしまいそうだ。こんなEVの登場を、長いこと待ち焦がれていたのだ。しかも、日本の自動車メーカーが、一般にもなんとか手の届く価格で発売したというのだから、喜ばずにはいられない!

冷房は電動コンプレッサーを、暖房は温水ヒーターを使用して温度調整を行う。いずれもバッテリーの電力を使うため、航続距離が短くなってしまうことを理解しておきたい。
冷房は電動コンプレッサーを、暖房は温水ヒーターを使用して温度調整を行う。いずれもバッテリーの電力を使うため、航続距離が短くなってしまうことを理解しておきたい。 拡大
リアエンジン・プラットフォームがもたらすiならではの広々とした居住空間。
リアエンジン・プラットフォームがもたらすiならではの広々とした居住空間。 拡大
 
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EVの醍醐味とは

そんなi-MiEVの市販モデルを、発売直後の7月下旬、公道で試すことができた。この日は薄曇りの空模様とはいえ、朝から気温が上昇。試乗車に乗り込み、パワーユニットを起動するとすぐに、助手席のKカメラマンがエアコンを全開にした。「よく効きますね」。当然、エアコンを使えば、バッテリーの電気を消費するから、そのぶん航続距離は短くなるが、EVだからといってガマンを強いるようでは多くの支持は得られない。

セレクターレバーをDに入れて、さっそくスタート。軽自動車だけに最高出力はきっちり64psに抑えられているが、0rpmから2000rpmまで180Nm(18.4kgm)の最大トルクを発生する特性の永久磁石式同期型モーターは、1100kgの車両重量をものともせず、余裕ある発進を切った。感覚的には2リッターエンジンを上回る力強さだ。そのままアクセルペダルを踏み続けると、静かに、スムーズに加速を続け、気がつくと狙った速度に達しているという感じ。トランスミッションは1段の固定式なので、もちろん変速のショックとは無縁。スピードが上がるにつれて徐々に加速は緩やかになるが、一般道はもちろんのこと、高速道路の合流や追い越し車線に飛び出すときでも、必要な加速が得られるのは頼もしい。

そのうえ、アクセルペダルに対するモーターのレスポンスが鋭く、それがダイレクトに反映されるのも、ガソリン車やハイブリッド車では経験できないEVの醍醐味。私がEVに惚れる理由が、実はここにある。EVはドライビングプレジャーに満ちあふれているのだ。

発進加速は、ガソリンターボ搭載車を凌ぐ。もちろん音も静か。
発進加速は、ガソリンターボ搭載車を凌ぐ。もちろん音も静か。 拡大
給油口ならぬ充電口は左右に備わる。運転席側はAC100V/AC200Vの普通充電用。助手席側は急速充電用。
給油口ならぬ充電口は左右に備わる。運転席側はAC100V/AC200Vの普通充電用。助手席側は急速充電用。 拡大
0rpmから最大トルクを発生する力強い発進加速は電気自動車ならでは。
0rpmから最大トルクを発生する力強い発進加速は電気自動車ならでは。 拡大

新時代のプレミアムコンパクト

ただし、力強さを楽しんでばかりでは、航続距離も短くなってしまう。そこで、i-MiEVにはパワーをセーブするEcoポジションが用意されている。セレクターレバーを切り替えると、確かにそれまでの勢いはなくなるが、それでも不満を覚えるほどもどかしいわけではなく、EVの気持ち良さを堪能することができた。

アクセルペダルを戻すと、パワーメーターの針が「Charge」を指し、回生ブレーキが効いているのがわかる。三菱のエンジニアによれば、その効き具合は、Dを4速相当のエンジンブレーキとすれば、Ecoは3速相当、もうひとつのBなら2速相当なのだそうだ。フットブレーキのフィーリングはとても自然だが、ハイブリッド車のように回生ブレーキとの協調制御を行わないから、それも当然のこと。市街地での航続距離を少しでも伸ばそうとするなら、回生ブレーキとの協調制御が将来必要になるだろう。

ところで、i-MiEVはガソリンモデルに比べて200kg重量が増えており、そのぶん、足まわりが強化されているが、乗り心地は重厚で快適。床下のバッテリーが、重心を低くしていることも、落ち着いた動きにつながっている。EVならではの静粛性も手伝って、i-MiEVの挙動には軽自動車の枠を超えた上質さが感じられる。新時代のプレミアムコンパクトと呼びたいクルマだ。

静粛性が高いため、住宅街も気兼ねなく走れる。
静粛性が高いため、住宅街も気兼ねなく走れる。 拡大
メーターパネルには、速度のほか電気残量、航続可能距離、電気の使用・充電状況などが表示される。
メーターパネルには、速度のほか電気残量、航続可能距離、電気の使用・充電状況などが表示される。 拡大
 
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足りないところもあるけれど

試乗して気になったところもある。たとえば、高速道路を走行中、多少直進性が心許なく思える点。また、スピードが上がると、乗り心地に粗さが目立つときもあった。パワーユニットが静かなぶん、高速ではロードノイズが耳につくなんてこともある。ただ、このi-MiEVで高速を延々と走るわけではないから、このあたりのマナーは大目に見てもいいのではないか?

一方、多くの人が気にするのが、i-MiEVの航続距離だろう。メーカーによれば、i-MIEVの航続距離は、10・15モードで160km。実際には、市街地で冷暖房を使わないときが約120km、冷房を使うと約100km、暖房を使うと約80kmというのが目安だそうだ。これを十分と見るかどうかは人それぞれだが、シティコミューターとして割り切れば、実用に足る数字だと私は思う。過去、EVは航続距離を延ばすために、バッテリーを増やし、それによるボディの拡大や重量増が災いして、結局は航続距離があまり延びないという悪循環に陥ることがよくあった。そもそもEVはガソリン車の代わりにはならないし、長距離走行は、ハイブリッド車や燃料電池車に任せたほうがいい。

EVはオールマイティじゃないけれど、シティコミューターに特化すれば、他のエコカーとは別次元の効率や使いやすさを発揮する。そんなEVの価値が理解できる人なら、このi-MiEVにきっと満足するはずだ。

(文=生方聡/写真=菊池貴之)

走行費用は、夜間電力を使えば同クラスガソリン車の1/9程度、昼間の電力でも1/3程度で済む。
走行費用は、夜間電力を使えば同クラスガソリン車の1/9程度、昼間の電力でも1/3程度で済む。 拡大
ベース車と同様のスペースが残された荷室。フロア下に車載充電器、DC/DCコンバータ、モーターなどが搭載される。
ベース車と同様のスペースが残された荷室。フロア下に車載充電器、DC/DCコンバータ、モーターなどが搭載される。 拡大
個人ユーザーに対しては、2009年7月に予約受付が開始され、2010年4月に販売が開始される。
個人ユーザーに対しては、2009年7月に予約受付が開始され、2010年4月に販売が開始される。 拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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