ドイツ語圏のつらさ

そんなことを思いながら、ふと明かりとりの天窓を見て驚いた。雪が積もり始めているではないか。スマートフォンの天気アプリで見たら、ミュンヘン一帯は零下である。
やはりドイツは寒いのだ。それはシャワールームにある物でさらに実感することができた。一見エアシューターのカプセルのように見える棒は、お湯を足もとにためるための栓である。イタリアではお目にかからないグッズだ。

考えてみれば、たとえ寒くない時期でも、「ボクはやっぱりドイツ語圏に住めない」と思われるカルチャーがある。それは、ヴァンデルンク(ハイキング)だ。週末というと、家族や仲間と連れ立って郊外の自然の中を、とにかくよく歩くのだ。目的は? などと考えるのがやぼなのはわかるが、以前スイス人に無理やり連れて行かれたことがあって、いやーまいった。

ドイツ系スナック菓子も複雑な心境になる。その代表が「ビーフィ・ロール」というサラミソーセージ系スナックだろう。長期保存可というコンセプトによるものなのだろうが、スティック状のサラミ部分といい、それを包むパサパサのパンといい、「ドイツにはうまいソーセージもパンもあるのに、なんでこんなものにするのか」と言いたくなるほど、素っ気ない風味である。
オーストリアにも似たようなスナックがあるが、同じような味だ。今回、空港内のスーパー「エデカ」で久々にビーフィ・ロールを買ってみたが、数年前南ドイツでひと月ほどホームステイしたとき、来る日も来る日も「ビーフィ」をおやつに持たされたのを思い出して泣けてきた。

ミュンヘンのエアポートホテルで。雪落としの靴トレイが、厳しい冬を無言のうちに物語っている。
ミュンヘンのエアポートホテルで。雪落としの靴トレイが、厳しい冬を無言のうちに物語っている。 拡大
シャワーの受けにお湯をためるため
の栓。
シャワーの受けにお湯をためるための栓。 拡大
ドイツにおけるポピュラーなおやつの一例「ビーフィ・ロール」。
ドイツにおけるポピュラーなおやつの一例「ビーフィ・ロール」。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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