英国諜報部のスポンサーとは?

前作ではイギリス王室を乗っ取ろうとする陰謀を見事に(?)阻止したジョニーだったが、今はチベットの僧院で修行と瞑想(めいそう)の日々を送っている。モザンビークでヘマをやらかし、いたたまれなくなった彼は任務から逃亡して引きこもっていたのだ。チベットのはずがなぜか少林寺(しょうりんじ)風の拳法の修行をしていたりして、そのあたりは大ざっぱな東洋の神秘ということらしい。

そこにMI7から復帰命令が下る。英中首脳会談で中国首相暗殺の計画が動いているということで、かつての敏腕スパイが呼ばれたのだ。8年ぶりに戻ると、MI7はすっかり様子が変わっていた。民営化の流れには逆らえず、スポンサー付きなのだ。日本の家電メーカーがネーミングライツを取得したようで、ロゴにも誇らしげに企業名が入っている。「Spying for You」とキャッチフレーズも付けられている。

新たな上司はやり手の女性局長ペガサス(ジリアン・アンダーソン)で、「銃も速いクルマも男尊女卑も、今のスパイには時代遅れよ!」と古き良きスパイ像を全否定されてしまう。ダンディズムの消えた世界では、ボンドだって居心地が悪いだろう。

そもそも、東西冷戦が終わってしまい、スパイの活動範囲はずいぶん狭くなってしまった。上映中の『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』だって、敵は国家ではなくてサイコ気味な個人なのだ。悪が存在しないと、ヒーローは輝くことができない。

鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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