見えないところがスゴいファントム

女性局長からは否定されていたが、悪者退治には銃に加えてスパイグッズが必要だ。007における「Q」のような工房があって、さまざまな秘密兵器を開発している。もちろん、ボンドカーならぬイングリッシュカーも提供してくれるのだ。スピリット・オブ・エクスタシーをボディー先端に擁した「ロールス・ロイス・ファントム・クーペ」である。

諜報活動用に仕掛けが施されている設定なのだが、実際にこのロールスは特別仕様のものだったらしい。通常のファントムのエンジンは6.8リッターV12だが、映画で使われたモデルには9リッターV16エンジンが搭載されていたのだ。どうやら、ロールス・ロイス社がこの巨大なエンジンを開発したことを知ったアトキンソンが、直談判で頼み込んだらしい。クルマ好きらしいエピソードではあるが、巨大なパワーを映像で表現するのは困難だ。イギリスからスイスへと移動する途中で、警察の取り締まりに遭った際にスピードガンの表示が214km/hになっていたが、映画では実際にそんなスピードを出す必要もない。

クルマではないが、高速移動のツールがもうひとつ出てくる。電動車イスだ。バッキンガム宮殿の外側で、警察のクルマやバイクに追われて逃走する。本当に速い車イスを製作し、80km/hほどのスピードが出たそうだ。危険なシーンだから普通ならスタントマンが演じるはずだが、アトキンソンは自分でやりたいといって譲らなかった。もう57歳だっていうのに、困ったことに乗り物のことになるとガキ同然である。

(文=鈴木真人)

「ロールス・ロイス・ファントム・クーペ」
ファントムの名は戦前から使われていたが、BMW傘下となって2003年に現行モデルが発売された。クーペモデルは2008年から販売されている。
「ロールス・ロイス・ファントム・クーペ」
ファントムの名は戦前から使われていたが、BMW傘下となって2003年に現行モデルが発売された。クーペモデルは2008年から販売されている。 拡大
『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』
2012年1月21日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー!
http://je-kiyasume.jp/
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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