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【スペック】全長×全幅×全高=4570×1760×1490mm/ホイールベース=2635mm/車重=1530kg/駆動方式=4WD/2.0リッター直列4DOHC16バルブ・ターボ(240ps/6000rpm、35.0kgm/3000rpm)/価格=298万2000円(テスト車=343万3500円/リアスポイラー=4万2000円/7インチワイドモニターHDDナビゲーション+ロックフォードフォズゲートプレミアムサウンドシステム=32万5500円/サイドカーテンエアバッグ=8万4000円)

三菱ギャラン・フォルティス ラリーアート(4WD/6AT)【試乗速報】

エボとは似て非なる存在 2008.07.24 試乗記 生方 聡 三菱ギャラン・フォルティス ラリーアート(4WD/6AT)
……343万3500円


ギャラン・フォルティスの最上級グレードとして、ランエボ譲りのメカを一部採用し誕生した「ラリーアート」。それはランエボともまた違うクルマに仕上がっていた。

ランエボと何が違う?

「ランエボで〜す!」と紹介したら8割以上の人が信じるんじゃないかと思えるくらい姿形がそっくりなこのクルマ。このモデルこそ、以前から登場が噂され、このたびギャラン・フォルティスの最上級グレードとしてラインアップに加わった「ギャラン・フォルティス ラリーアート」だ。

ギャラン・フォルティスのアイデンティティといえば、伝統の逆スラントノーズと台形のラジエターグリル。三菱はこのグリルを“ジェットファイターグリル”と呼んでいるが、その外周をメッキで囲んだら、まんまとランエボ風に仕上がった。さらに、風通しが良さそうなアルミ製ボンネットとともに、2リッターの直列4気筒ターボやACD(アクティブ・センター・ディファレンシャル)によるフルタイム4WD、ツインクラッチSSTなど、ランエボを特徴づけるアイテムをちゃっかり手にしている。 こうなると、「ランエボはほしいけど、あの硬い乗り心地はちょっと」とか「ギャラン・フォルティスがもう少しスポーティだったら……」と、これまで購入に二の足を踏んでいた人は気が気でないはず。ツインクラッチSST搭載のランエボGSRの375万600円と比べ、約77万円安い価格も魅力的だ。

ではいったい、ギャラン・フォルティス ラリーアートとランエボは何が違うのだろうか?

ワイドフェンダーのランエボと比べると、標準ボディのラリーアートは全幅が50mmスリム。だが、見た目の印象ではその差は感じない。
ワイドフェンダーのランエボと比べると、標準ボディのラリーアートは全幅が50mmスリム。だが、見た目の印象ではその差は感じない。 拡大
ノーズ上端の張り出しが40mmほど前方に突き出た専用グリルにより、伸びやかなスタイルが追求されたラリーアート(左)。写真は、ランエボ(右)との比較。
ノーズ上端の張り出しが40mmほど前方に突き出た専用グリルにより、伸びやかなスタイルが追求されたラリーアート(左)。写真は、ランエボ(右)との比較。 拡大
ホイールベースはランエボよりも15mm短い。
ホイールベースはランエボよりも15mm短い。 拡大
三菱 ギャランフォルティス の中古車

あくまでギャラン・フォルティス

見た目も技術的ハイライトもランエボに迫るギャラン・フォルティス ラリーアートだが、そのポジションは、あくまでギャラン・フォルティスのいちバリエーションであって、ランエボの廉価版ではない。それはボディサイズひとつを見ても明らかだ。ラリーアートを含め、ギャラン・フォルティスの全長、全幅、ホイールベースはそれぞれ4570mm、1760mm、2635mm。これに対してランエボのサイズは4495mm、1810mm、2650mmと、ランエボのほうがショートかつワイド、ホイールベースも長いのがわかるだろう。

この違いは、両者の足まわりの違いを意味している。ランエボは専用のサスペンションを採用するため、ホイールベースが長く、トレッドも広いのだ。対してギャラン・フォルティス ラリーアートは専用のスポーツサスペンションが装着されるものの、ギャラン・フォルティスの強化タイプにすぎない。

一方、ギャラン・フォルティス ラリーアートのエンジンは、ランエボに搭載される4B11型MIVECのデチューン版で、両者ともエンジン本体は基本的に同じ。おもな違いはターボとインタークーラーといった部分で、たとえばターボは、ランエボのツインスクロールに対して、ギャラン・フォルティス ラリーアートではシングルスクロールタイプに変更されている(どちらもターボは1基)。さらにチューンなどに差をつけることで、40ps、8kgmずつ控えめな240ps/6000rpm、35.0kgm/3000rpmのスペックを手に入れているのだ。

そして、4WDの部分では、ランエボの走りを特徴づけるAYC(アクティブ・ヨー・コントロール、RSには非装着)が、ギャラン・フォルティス ラリーアートには搭載されていない。こういった違いが実際の走りにどう影響しているのか、興味津々、試乗車に乗り込んだ。

シングルスクロールターボ搭載のラリーアートのスペックは、最高出力240ps、最大トルク35kgm。十分にトルクフルだが、ランエボと比べるとやはりその差は感じ取れるという。
シングルスクロールターボ搭載のラリーアートのスペックは、最高出力240ps、最大トルク35kgm。十分にトルクフルだが、ランエボと比べるとやはりその差は感じ取れるという。 拡大
ツインクラッチSSTの搭載は、多くのユーザーからの支持を受けそうだ。このオートモード付き2ペダルマニュアルが、ラリーアートの価値を高めているのは間違いのないところ。
ツインクラッチSSTの搭載は、多くのユーザーからの支持を受けそうだ。このオートモード付き2ペダルマニュアルが、ラリーアートの価値を高めているのは間違いのないところ。 拡大
リアバンパーの意匠もランエボと異なる。リアスポイラーはオプション扱い。
リアバンパーの意匠もランエボと異なる。リアスポイラーはオプション扱い。 拡大

程よくスポーティ

コクピットを覗くと、基本的にはギャラン・フォルティスSPORTと同じデザインだ。シートはスウェード調の生地こそランエボから受け継ぐが、形状はSPORTと同じということで、サイドサポートの張り出しも普通な感じだ。 さっそく走り出すと、スポーツサスペンションに215/45R18タイヤの組み合わせとは思えないくらいマイルドな乗り心地にひと安心。これなら、ふだん使ううえでもガマンを強いられることはない。

240psの2リッターターボエンジンは、低回転からレスポンスよく、最大トルクを絞り出すポイントが3000rpmと低いことから、常用する回転域でも余裕があって、実に頼りになるのがうれしい点だ。ツインクラッチSSTのシフトのマナーもよく、シフトそのものが素早いのにも感心する。ただ、ヒルスタート機構がないのは残念。早急な対応を期待したい。

ワインディングロードに辿り着いたところで、遠慮なくアクセルを踏み込むと、2000rpm台後半からトルクが一層太くなり、自然吸気エンジンのギャラン・フォルティスとは段違いの速さを見せつける。さすがにランエボほどのパンチはないが、勢いは5000rpmを超えたあたりまで途切れない。この、日常重視の程よくスポーティな性格が、ギャラン・フォルティス ラリーアートの魅力といえそうだ。

細かな採用部品の違いこそあるものの、インパネまわりの基本造形はフォルティス、ラリーアート、ランエボはみな同じ。
細かな採用部品の違いこそあるものの、インパネまわりの基本造形はフォルティス、ラリーアート、ランエボはみな同じ。 拡大
シートは、形状はフォルティスと同じで、表皮のみランエボと共通のスエード調ニットを採用する。
シートは、形状はフォルティスと同じで、表皮のみランエボと共通のスエード調ニットを採用する。 拡大
サスペンションはフォルティスのそれをベースとするため、コーナーでの身のこなしはランエボと異なる。
サスペンションはフォルティスのそれをベースとするため、コーナーでの身のこなしはランエボと異なる。 拡大

キレのある走りはランエボの十八番

そんな好バランスのギャラン・フォルティス ラリーアートを駆って、唯一物足りなく思えたのがコーナーでの振る舞い。ランエボのようなキレのある走り、つまり、コーナーでノーズがクッと入っていく感じとはほど遠いのだ。それは、アクセルのオン、オフにかかわらないから、AYCの有無ではなく、サスペンションにより決定づけられた持ち味の違いということになる。

このハンドリングの違いをどう見るかで、ギャラン・フォルティス ラリーアートの評価は変わってくる。軽快なハンドリングに執着しなければ、速く、安く、快適なギャラン・フォルティス ラリーアートは、とてもお買い得なスポーティセダンということになる。一方、キレのある走りを求めるなら、妥協することなくランエボを手に入れておいたほうが、後悔にはつながらない。

要するに好みの問題なのだが、今の時代、限界性能にまでこだわらないという人が支配的だとすると、クラストップレベルを競い合うランエボより、ラリーアートぐらいの運動性能を持ち、価格が手頃なほうが受け入れられやすいのかもしれない。というわけで、この新たな選択肢がギャラン・フォルティスのファン拡大に貢献するのは確実といえそうだ。

(文=生方聡/写真=高橋信宏)

モータージャーナリストの生方聡氏。
モータージャーナリストの生方聡氏。 拡大
ボディ剛性を決定づける基本骨格はフォルティスと同じ。もちろんランエボのベースとなったのもこのプラットフォームだ。
ボディ剛性を決定づける基本骨格はフォルティスと同じ。もちろんランエボのベースとなったのもこのプラットフォームだ。 拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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