ポルシェ・パナメーラS ハイブリッド(FR/8AT)【ブリーフテスト】
ポルシェ・パナメーラS ハイブリッド(FR/8AT) 2012.01.12 試乗記 ……1710万1000円総合評価……★★★★
ポルシェの4ドア4シーターモデル「パナメーラ」にハイブリッドモデルが追加された。スポーツサルーンにしてリッター14.1kmの燃費を誇る期待のモデルに試乗した。
「電化」のポルシェに思う
CO2の排出規制は今後どんどん厳しくなる。ヨーロッパでは、販売する新車の平均燃費を2015年には130g/km(燃費に換算すると18.1km/リッターに相当)にせよと規定されており、その後2020年にはさらに厳しい95g/km(同24.7km/リッター)という目標が待ち受けている。こうなると、さすがのディーゼルエンジンでも達成は難しく、内燃機関はハイブリッドシステムなどによる「電化」がマストになってくると言われている。あれだけディーゼルにご執心だったヨーロッパのメーカーが、ここ数年でハイブリッド派に転向してきている理由はその辺にある。
となると、スポーツカーメーカーの中には20年後、いや10年後にも淘汰(とうた)されてしまうところが出てくるかもしれないが、ポルシェは安泰だろうな、というのが今回強く感じたことである。「パナメーラSハイブリッド」で270kmあまりの試乗を終えて、いわゆる満タン法で得た燃費は11.5km/リッターだった。車重が約2トン、エンジンとモーターを合わせたシステム出力で380psを誇り、0-100km/hを6秒で走り切るハイパフォーマンスカーにしてこの燃費なら大したものだ。
そこでひとつ、ポルシェに聞きたいことがある。電化によってポルシェは今後、われわれにどんな「ストーリー」を見せてくれるのだろうか。
クルマは走るものではなく、走らせるものだ。純ガソリン時代のポルシェの速さは、サーキットにおける数々の名勝負によって脳裏に焼き付いており、ジャッキー・イクス、デレック・ベル、ワルター・ロール、あるいはスティーブ・マックイーンなんていう「ポルシェ使い」がいてこそ、ポルシェの記憶は立体感を帯びたのだと信じる。
では、ハイブリッド時代のポルシェを彩るのは、どんな勝負で、どんな人物なのだろうか。それがないうちは、ハイブリッドポルシェはまだ、本当の意味で走ったとは言えないのではないか? これからがとても楽しみである。