スズキ・アルト エコS(FF/CVT)【試乗記】
ハロー、低燃費時代 2012.01.19 試乗記 スズキ・アルト エコS(FF/CVT)……99万5000円
スズキの軽乗用車「アルト」シリーズに、史上最高の燃費性能を掲げる「アルト エコ」が登場。クルマとしての仕上がりをテストした。
33パーセントもの燃費向上
年末年始の自動車CMは、各社が低燃費アピールを競い合っていた。トヨタは「プリウス」でイラストを使ってみんなのHVイメージを盛り上げ、「アクア」ではブロンディの名曲に乗せてポップさを強調していた。「ダイハツ・ミラ イース」はブルース・ウィリスに「ウレテルノ?」「オレノオカゲ?」と言わせて実績を誇示した。
対して「スズキ・アルト エコ」は香里奈が「ハロー、30.2」と呼びかける強硬路線を選択した。わずかリッター0.2kmのアドバンテージでも、確かに現時点でガソリン車低燃費ナンバーワンを名乗れるのはアルト エコだけなのだ。
ダイハツが「低燃費・低価格」を売りにしたリッター30.0km(JC08モード値)のミラ イースを発表したのは、2011年9月20日のことだ。アルト エコが発売されたのは、約2カ月後の11月25日である。後発だから数字で上回ることが絶対の課題になるわけだが、こんな短期間に0.2の値を搾り出すことなどできるはずがない。スズキは、2年前から準備を進めていたのである。軽自動車の開発競争は、かくも熾烈(しれつ)なのだ。ビッグスリーが焦って「軽自動車は非関税障壁だ」と言いたくなるわけである。
ベースとなるアルトがリッター22.6kmだから、33パーセントもの燃費向上である。2年前ならこの数字でも低燃費を名乗れたのだから、思えば牧歌的な時代だった。劇的な改善の要因は、ミラ イースや「マツダ・デミオ13-SKYACTIV」と同様に、既存技術のさらなる磨き上げだ。エンジン、トランスミッションの低フリクション化、車体の軽量化などを徹底的に追求したのだ。なぜ今までできなかったのかという疑問が浮かんでしまうが、開発の優先順位が変更され、燃費低減に最大限のパワーが集中された結果なのだろう。