会場の外でもビックリ
ってなわけで、ショー会場の雰囲気も展示車両も欧米や日本とはかなり異なるインドだが、違いがもっと印象的だったのは、その外で見られた道路事情だった。
まずはガンジー空港だ。到着ロビーを出るや全体がモヤーっとしていて、妙に白っぽい。後でわかったことだが、そこら中でたき火を、それもガソリンをまいた布などを燃やしているせいなのだ。
新興国にありがちな渋滞は当然のこととして、それ以上に、クルマと混在して歩く“車道の人”の数がハンパじゃない。
路肩はもちろん、センターライン上も人がワンサカ歩き、交差点では、クルマが止まる前から当たり前のようにフラフラと人が飛び出してきては鼻先をかすめる。
数年前の中国の上海や北京でも、キレイに整備された高速道路の路肩を歩く人を、必ずと言っていいほど見かけた。だが、これほどまでに人とクルマが“入り乱れている”国は他に見たことがない。多くの交差点に信号がないのが一番の原因だが、この感覚は日本人には理解不能だ。
クルマに乗る側の安全意識にも驚かされる。コンパクトカーのリアシートに4〜5人乗るのは当たり前。トラックの荷台に大勢乗っているだけじゃなく、うずたかく積み上げた荷物の上に、さらに人が座ってたりする。
命の安さ、リスクの高さは、間違いなく今まで見た新興国の中で一番。交通事故者数が社会問題化しているのもよく分かる。2000年に8万人だった交通事故の年間死亡者数は、2011年では12万人に達しているとか……その数、日本(4611人)のおよそ26倍!
インドの総人口は約12億人で日本の約10倍だから、その危険率は高いと言わざるを得ない。今回のモーターショーでも、子供を対象としたセーフティードライブのデモなどを見かけたし、交通事故は社会問題化しているようだ。
2人乗りのオートバイは、必ずと言っていいほどライダーがヘルメットをかぶっていて後ろの人はノーヘルなのだが、これは「1台につき、ヘルメットは最低1個」が義務付けられているのに関係がある。つまり、金銭的に余裕がないから、運転者だけ。安全確保のためには、お金の問題が関わることを、インドに来ると実感させられる。

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』
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