謎が解ける

イタリア一般市民の間でカルロス・ゴーンは知られていないが、セルジオ・マルキオンネを知らない人はいない。ちなみに現在彼は、仕事場のトリノと家族の住むスイスをフェラーリで往復する生活だ。

マルキオンネのファッションの話に戻ろう。

彼は、セーターのまま、かなりフォーマルな場所まで出席する。
2番目の写真から、彼が愛用している一着はドイツのHUGO BOSS製であることがわかる。ご本人の身長がデカいこともあり一見ボサッとしているが、やはりCEOなりに良いものを選んでいるのである。

なぜそんなにセーター好きなのかは、長いこと明かされる機会がなかった。
だが、ようやく先日、その謎が解けた。2008年3月トリノで、新型「フィアット500」の「オート・ヨーロッパ2008」授賞式が行なわれたときのことである。その日も、マルキオンネはセーター姿で現れた。
ラ・スタンパ紙によると、会場で彼は自らのファッションについて記者の質問に、「けっしてパフォーマンスではない。セーターを着るのは、自分が楽だからだ」と答えたという。
ついでに、整っているのを見たことがない髪について質問されると、「くしを使わないからね」と笑いながら教えたらしい。
そのうえで、窮屈そうなネクタイ姿の人物を見ると、「どうやって我慢すればいいのか考え込んでしまう」ともコメントした。

実はフィアット復活を成功させる前の彼は、他のビジネスマン同様スーツ姿だった。したがって今は、成功者だけに許されるマイスタイルともとれる。だがそれを差し引いても、今いちばんイタリアで脚光を浴びているカリスマ財務マンは「見かけではなく実力で勝負」と無言のうちに示しているのかもしれない。

2006年ジュネーヴ・ショーで。会場視察のときはすでにノーネクタイ。
2006年ジュネーヴ・ショーで。会場視察のときはすでにノーネクタイ。 拡大
スーツ姿のジャン・トッド。写真入りIDカードの律儀な着用が人柄を感じさせる。
スーツ姿のジャン・トッド。写真入りIDカードの律儀な着用が人柄を感じさせる。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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