ふたつの違いははっきりわかる

前置きが長くなってしまったが、そろそろ試走した印象をお伝えしよう。

まず、「日産セレナ」に“ミニバン専用スタッドレスタイヤ”のウィンタートランパスMK4αと“一般車用(?)スタッドレスタイヤ”のガリットG5を装着し、その違いを確認してみた。

いやいや、これが実に面白いくらい違うのである。ウィンタートランパスMK4αは、ただまっすぐ走っているだけでもタイヤが圧雪路をしっかり捉えている様子がステアリングを通じて伝わってくる。スラロームを試みても、滑りながら何かの拍子で向きが変わったかのようなガリットG5と異なり、ウィンタートランパスMK4αは前輪が確実にグリップしながら進路を左右に変えていく様子がわかる。横グリップレベルも間違いなくウィンタートランパスMK4αのほうが上。安心してコーナリングできる速度は、ガリットG5の10〜15%増しに思えた。

では、ガリットG5にはメリットがないかというとそんなことはなく、技術者によれば縦方向のグリップはウィンタートランパスMK4αを確実に凌(しの)ぐという。また、車重の軽いクルマにウィンタートランパスMK4αを装着すると乗り心地に少し跳ねる傾向が出てくるそうだ。つまり、ウィンタートランパスMK4αは横グリップ重視で中重量車向き。ガリットG5は縦グリップ重視で軽量車にもマッチすると考えればよく、あとは用途にあわせて選べばいいようだ。

今回は、4輪にガリットG5を装着した「フォルクスワーゲン・ゴルフ」、それに「スバル・レガシィツーリングワゴン(4WD車)」にも試乗できた。ただし、レガシィのほうは右の前後にガリットG5、左の前後にはあえてクルミを抜いた特製のガリットG5を装着していた。先にレガシィの話をすると、左右でグリップ力に差がありすぎて、スロットルを踏み込んでいくとまっすぐ走らない。ブレーキを踏んでもどうしても右側に巻き込んでしまう。それくらい、クルミのあるなしで雪を捉える力が変わってくることが確認できた。

これに比べると、左右ともガリットG5を履いたゴルフは実にバランスのいい走りをする。もっとも、氷の上で定常円旋回をすればアンダーステアといってフロントが外側に逃げていく傾向が現れる。こういうときは、スロットルを抜いてフロントのグリップを回復させたくなるが、ESP(横滑り防止装置。ESC、VSCなどとも呼ばれる)装着車ではむしろ駆動力を与えてステアリングを大きく切ったほうが旋回しやすくなるという働きがある。いきなりクルマが横滑りを始めたときに試すのはお勧めできないが、安全な広い場所で、ハンドルを切ってスロットルを踏み込んだときに自分のクルマがどういう動きをするか、あらかじめ体験しておくといい。

いずれにせよ、どんなに素晴らしいスタッドレスタイヤを履いていても、雪上もしくは氷上では制動能力がガクンと落ちる。その点を織り込んでおくのが、安全運転の最大のコツといえるだろう。

(文=大谷達也/写真=トーヨータイヤ)


第137回:キーワードは“クルミ” トーヨータイヤの最新スタッドレスを体験の画像 拡大
圧雪路で「ウィンタートランパスMK4α」を試す。タイヤが路面をしっかり捉える感触がステアリングから伝わってくる。
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「フォルクスワーゲン・ゴルフ」には「ガリットG5」を装着。氷雪路でのハンドリングを試す。
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右の前後に「ガリットG5」、左の前後には特製の“クルミなし”「ガリットG5」を履く「レガシィ」。左右のグリップ力の違いは明らかで、発進時には左、制動時には右にハンドルをとられる結果に。
右の前後に「ガリットG5」、左の前後には特製の“クルミなし”「ガリットG5」を履く「レガシィ」。左右のグリップ力の違いは明らかで、発進時には左、制動時には右にハンドルをとられる結果に。 拡大
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