小さな旧車のイベント「U1000 in しらこばと公園」の会場から
2017.03.01 画像・写真2017年2月26日、埼玉県越谷市のしらこばと公園で旧車イベント「U1000 in しらこばと公園」が開かれた。イベント名のU1000とは「アンダー1000」の略で、参加資格は原則として1988年(昭和時代)までに生産された、排気量1000cc未満の車検付きの三輪車/四輪車。古くて小さなクルマだけのミーティングというわけだが、5回目となる今回は、1983年に設立された「ホンダN360」シリーズのワンメイククラブである「ホンダN360エンジョイクラブ」とコラボレートしての開催となった。ホンダ初の軽乗用車であり、実用的な乗用車でもあったN360の発売は1967年3月。誕生50周年を記念した特別企画というわけである。派生モデルを含め20台を数えたN360シリーズをはじめ、絶好のイベント日和に恵まれた会場に集まった参加車両はおよそ120台。それらのなかから、リポーターの目に留まった参加車両を紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)
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1/28ホンダN360エンジョイクラブのメンバーを中心に「N360」シリーズが18台、派生モデルである軽トラックの「TN-V」と「バモスホンダ」が1台ずつエントリーした。
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2/281968年「ホンダN360S」。「N360」は1967年3月にモノグレードで発売され、同年12月にデラックス仕様の「Mタイプ」、そして翌1968年2月にスポーティー仕様の「Sタイプ」が加わった。スポーティーモデルとはいえエンジンはノーマルと同じで、ツインキャブの「Tシリーズ」が加わるのは同年10月のことだった。
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3/28「ホンダN360S」のディテール。左上から時計回りにボディー同色のスポーツミラー、リアクオーターのエアアウトレットカバーとトランクリッドのエンブレム、通称NⅠ(エヌワン)と呼ばれる第1世代の「N360」の「Sタイプ」のなかでも、初期型だけに付く専用ホイールキャップ、そして革巻きのステアリングホイールやタコメーターの備わるダッシュボード。二輪と同じコンスタントメッシュ(常時噛合)式の4段ギアボックスのシフトレバーは、「シトロエン2CV」や「ルノー4」のようにダッシュ下から生えている。
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4/28「ホンダNIII360デラックス」。「N360」シリーズは1969年1月にマイナーチェンジを受けて通称NII(エヌツー)となり、さらに1年後の1970年1月に再びフェイスリフトを受けてNIII360に改称。顔つきが大人びたほか、トランスミッションがコンスタントメッシュから一般的なフルシンクロとなるなどの改良が施された。アルミホイールはノンオリジナル。
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5/28「N360」ベースの商用バンである「LN360」。テールゲートはこの横開き式と、写真右下の上下開き式の2種類が用意されていた。多く売れたのは上下開き式とのことだが、横開き式は今見るとシャレている。
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6/281973年「N600」。「N360」のボディーに594ccに拡大した空冷並列2気筒SOHCエンジンを搭載した輸出仕様。日本でも一時期「N600E」の名で販売され、「プアマンズ・ミニクーパー」の異名をとった。ただし居住性はN360と変わらず、税金・保険などの維持費は普通車となれば一部のマニア向けにとどまり、販売台数は1500台程度といわれる。輸出仕様には仕向け地によって「N400」も存在したという。
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7/28当時のホンダ二輪用エンジンそのままと言っても過言ではない、「N360」用の空冷4ストローク2気筒354ccエンジンのシリンダーと同ヘッド(右)。31ps/8500rpmというアウトプットは、当時、既存の軽の約5割増しだった。左側はディーラー向けであろう試乗会の予告ポスター。今や貴重品である。
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8/28「ホンダ・ライフ ツーリングSL」。「N360」シリーズの後継として1971年にデビューしたライフ。4ストローク2気筒SOHCエンジンは水冷化され、日本で初めてカム駆動にコッグドベルトを使用し、やはり国産初のバランサーも採用。N360の弱点だった騒音・振動を大幅に低減した、まろやかな乗り味が特徴だった。「ツーリング」は翌1972年に追加されたツインキャブエンジン搭載の高性能版。
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9/282台の「ホンダ・ライフ ピックアップ」。前出の軽乗用車「ライフ」のプラットフォームに、セミキャブオーバーのバンボディーを架装した商用バンが「ライフ ステップバン」で、その兄弟車となるピックアップ。1972年に登場した。
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10/28JCCAニューイヤーミーティングのリポートでも紹介した、ホンダ初の市販四輪車であるDOHCエンジンを積んだ軽トラック「ホンダT360」(左)と、そのシャシーに鉄棒で製作したスケルトンのボディーを載せたモデル(右)。見るほどにすばらしい出来栄えだ。
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11/281960年に登場したマツダ初の乗用車が「マツダR360クーペ」。この個体は一部の補修塗装を除いてはオリジナルのままという希少な1962年式。軽量化のためアルミを主体に一部にマグネシウムも使用した空冷4ストロークVツインエンジンをリアに積む。
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12/281966年「マツダ・キャロル360 2ドアデラックス」。「R360クーペ」に次ぐマツダの乗用車第2弾として1962年に登場したキャロル360。クリフカットされたルーフが特徴的なボディーのリアに、総アルミ合金製の水冷4ストロークOHVヘミヘッドの4気筒エンジンを積んだ高級軽乗用車で、翌1963年には軽初となる4ドアセダンも加えられた。
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13/281972年「マツダ・シャンテ」。シングルローターのロータリーエンジン搭載を前提に開発されたが、諸事情により軽商用車の「ポーター」用をベースにした水冷2ストローク2気筒エンジンを積んで発売された、「キャロル」の後継車。駆動方式はFRだが、360cc軽最長の2200mmのホイールベースを持ち、室内は広かった。しかしキャロルと違ってボディーは2ドアしかなく、スペック的に後退した2ストロークエンジンの評判も芳しくなく、セールスは苦戦した。
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14/281968年「三菱ミニカ デラックス」。軽商用バンの「三菱360」をベースに、1962年に登場した三菱初の軽乗用車だった初代ミニカの最終型。独立したトランクルームを備えた、当時の軽では珍しい3ボックスボディーのフロントに空冷2ストローク2気筒エンジンを搭載、後輪を駆動するという平凡だが堅実な設計。
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15/281967年「スバル360デラックス」。1958年に誕生した、日本が世界に誇る傑作車であるスバル360の、内容的に完成に近づいた年代のモデル。エクステリアはオリジナルに忠実で、程度もすばらしい。
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16/281971年に登場した「スズキ・フロンテクーペ」。水冷2ストローク3気筒エンジンを搭載した、360cc規格の軽のなかで最もスポーツカー的なモデル。左から1台目と2台目の間に置かれているのは、2台目のオーナーが製作したエキスパンションチャンバー(2ストロークエンジンの性能を左右する排気デバイス)。
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17/28美しく仕上げられた、唯一の戦前型国産車だった1938年「ダットサン17型クーペ」。16ps/3600rpmを発生する水冷直4サイドバルブ722ccエンジンを搭載。当時のダットサンには、このクーペのほかに2ドアセダン、フェートン(セダンのオープン版)、ロードスター(クーペのオープン版)というボディーバリエーションが存在した。
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18/281970年「ダイハツ・コンパーノ スパイダー」。商用バンから派生したダイハツ初の量産乗用車である「コンパーノ」の、4座コンバーチブルの後期型。オリジナルのスタイリングを手がけたのはイタリアのヴィニャーレで、コンパーノという車名は「仲間」を意味するイタリア語、スパイダーという呼称もイタリア風。インパネに後付けされた8トラックのカーステレオには、「フィンガー5」のカートリッジテープが挿入されていた。飾りではなく、現役で愛用しているというオーナーの心意気がいい。
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19/281965年「ホンダS600」と「同S600クーペ」。双方ともオリジナルに忠実かつ美しく仕上げられている。
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20/281968年「スバル1000バン」。4ナンバーの商用バンだが、4輪独立懸架をはじめセダンと同様の独創的かつ進歩的な設計を持った、今日のスバル製ワゴンのルーツ的なモデル。
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21/28後ろにある「ダイハツ・ミラ ウォークスルーバン」に積まれてきた1963年「トーハツ105Y」。トーハツ(東京発動機から命名)はかつて二輪で名をはせたメーカーで、1964年に倒産。会社再生後は今日までマリーンエンジンや消防ポンプのメーカーとして存続している。二輪メーカーとしてはモペッドの「ランペット」などで知られるが、これは空冷2ストローク2気筒50ccエンジンを積んだ貴重なワークスレーサー。
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22/281968年「ダフ44」。ミケロッティの手になるボディーのフロントに空冷4ストローク水平対向2気筒844ccエンジンを搭載。リアアクスルの前方に置かれた、バリオマチックと称するラバーバンドを使った元祖CVTで後輪を駆動する、オランダ製の小型セダン。メーカーであるダフ(DAF)の乗用車部門は、1970年代にボルボに吸収された。
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23/281971年「ジネッタG15」。英国のスペシャリストであるジネッタが、1967年から1974年までにおよそ800台を“量産”したライトウェイトスポーツ。角パイプで組んだラダーフレームにFRP製ボディーをかぶせ、パワートレインをはじめメカニカルコンポーネンツはリアエンジンの小型セダンである「ヒルマン・インプ」から流用。
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24/28「ジネッタG15」の後端に積まれた、F1用エンジンで名を上げたコベントリー・クライマックス設計の、「ヒルマン・インプ」用アルミ合金製875cc直4 SOHCエンジン。シリンダーが大きく傾斜しているのは本来の姿だが、ロードクリアランスが低くオイルパンを打ちそうで怖い。
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25/281934年「モーガン3ホイーラー」。数年前に復刻版が登場したモーガン3ホイーラーの、戦前に作られたモデル。ノーズにむき出しで積まれたマチレス製の二輪用空冷Vツインエンジンで、後ろの一輪を駆動する。
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26/281965年「ASA1000GT」。フェラーリが企画したものの、諸事情により生産を断念した「フェラリーナ」(小型フェラーリ)の製造権を買い取ったASAにより、100台前後作られた小型GT。スタイリングはベルトーネ時代のジウジアーロ、シャシー設計はフェラーリ出身のジオット・ビッザリーニ、1032cc直4 SOHCエンジンの設計も元フェラーリのカルロ・キティと、開発スタッフはオールスターキャストである。
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27/28「ASA1000GT」のディテール。上の2枚はノーズにあるASAのエンブレムと、フロントフェンダーに貼られたベルトーネのエンブレム。インテリアのデザインおよび仕上げは、当時の高級GTそのもの。カムカバーが結晶塗装された1032cc直4 SOHCエンジンは、φ40のウェバー製ツインチョークキャブレターを2基備え、97ps/7000rpm、9.0kgm/3800rpmを発生するという。
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28/28ヌオーバ・チンクエチェントこと2代目「フィアット500」とそのアバルト仕様、セイチェントこと「フィアット600」などが並んだ一角。よく見ると1台だけ「ミニ」が交じっている。