ポルシェらしい走りっぷり

スポーツセダンというと、大排気量で多気筒エンジンで、と考えるひともいるかもしれない。その観点からすると、ポルシェ パナメーラS E-ハイブリッドは控えめだ。先にも触れたように、3リッターV6エンジンなのだ。しかしながら、そこにこそ、パナメーラS E-ハイブリッドは来るべき時代のスポーツセダンであるゆえんがある。

スーパーチャージャーを利用して低回転からしっかり力を出す3リッターV6エンジンに電気モーターが組み合わされたパナメーラS E-ハイブリッドのハイブリッドシステム。システム合計で306kW(416ps)、トルクの合計は590Nm(60.2kgm)と驚くほど力がある。静止から100km/hまで加速する時間はわずか5.5秒。ポルシェによると「V8と同等のパフォーマンス」となる。全長5015mmの車体を持つ大型セダンとしてはかなり立派な数字だ。実際に体験しても、加速感はスムーズで、すばらしくナチュラルだ。ターボチャージャーなどとも違う、新しい感覚が味わえる。

アシッドグリーンのニードルが採用される「パナメーラS E-ハイブリッド」のメーター。電力を使ったモーターアシストや充電の状況が表示されるのは、プラグインハイブリッド車ならではの特徴だ。

ステアリングホイールを切ったときの車体の反応は速い。低重心のスポーティーな感覚がしっかりあるのだ。バランスもよく感じられ、市街地では静粛性の高い移動手段、高速では快適なグランドツアラー、そしてワインディングロードではスポーツカー。3つの重要な要素をすべてそなえている。ドライバーを楽しませようという意図がしっかり感じられるのだ。余裕ある車体サイズでありながら、単に広い室内空間で快適な居心地という、パッケージングだけが優先されているのではない。スポーツカーメーカーが作るセダンなる存在意義がパナメーラS E-ハイブリッドにはある。これこそ希有(けう)な価値といえるだろう。

ブレーキキャリパー、ロゴまわり、さらにメーターのニードルなど、要所要所に、パナメーラS E-ハイブリッドとわかるアシッドグリーンの差し色が使われるなど、特別感があるのもいい。ポルシェならではのお金がかかった演出だ。新しい時代のセダンに乗っていることを誇りたいユーザー心理を考えてくれているのである。新しい時代を運んできてくれたポルシェ パナメーラS E-ハイブリッドこそ、いま最も注目に値する新世代のラグジュリーセダンなのだ。

「パナメーラS E-ハイブリッド」の燃費は、JC08モードによるハイブリッド燃料消費率で12.3km/リッターとされる。

(文=小川フミオ/写真=田村 弥)