イタリアン・スポーツカーABARTH 124 spiderしみ

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ABARTH

REPORT 2 日常にサソリの刺激を

文=竹岡 圭/写真=荒川正幸

小粋なイタリアのオープンスポーツカーで
あなたの日々にいろどりを!
女性モータージャーナリストが
「124スパイダー」の“日常性”を語る

サソリのエンブレムに心が高ぶる

フロントマスクに堂々と据えられているのはサソリのエンブレム。リアにもサイドにもサソリがいて、運転席に座ればステアリングホイールの真ん中に鎮座するサソリと向かい合う。ああ、「アバルト」に乗っているんだなと、ドライバーは常に意識することになる。クルマ好きであれば、それだけでドキドキだ。サソリで身を飾った「アバルト124スパイダー」はどれほど刺激的な走りを見せてくれるのかと、期待に胸をふくらませるに違いない。

クルマの歴史に興味がある人なら、アバルトという名を聞いたことがあるはず。天才エンジニアのカルロ・アバルトに由来するブランドだ。オーストリアに生まれたカルロは二輪ライダーとして大活躍。でも大事故で死にそうになったりしたこともあって、第2次世界大戦が始まると父の祖国イタリアに移住する。戦後はF1マシンの開発などに携わり、1949年に自らの会社を設立した。レーシングカーの設計を手がける一方、一般向けのスポーツカーも製作。非力な「フィアット500」に高度なチューンを施し、ホットなマシンに仕立て上げた。

彼の生まれ星座にちなんで採用されたサソリの紋章は、高性能の証しとして誰もが憧れる存在に。1971年にフィアットの一部門となった後も、アバルトはレースで目覚ましい戦績を残した。2007年に復活が正式にアナウンスされ、「595」や124スパイダーという魅力的なモデルが登場している。

アバルトの名にふさわしい仕上がり

既存のモデルをベースに走りを磨くのがアバルトの手法だが、単なるチューンドカーにとどまらないのが伝統。サソリのエンブレムが与えられるのは、アバルトの名にふさわしいモデルだけなのだ。124スパイダーがベースの良さを生かしているのは確かだけれど、やはりアバルトとしか呼びようのないクルマになった。モアパワーをかなえるターボエンジンとオリジナルのデザインにより、コンパクトで刺激的で、オトナも楽しめるスポーツカーに仕上がっている。

あまりの出来の良さに、アルファ・ロメオ・ブランドからリリースすることも検討されたらしいけれど、私としてはアバルトから登場してくれて本当によかったと思う。小さなボディーと小さなパワートレインで大きなライバルをカモるのがアバルトの身上。124スパイダーの成り立ちは、このブランドの歴史を背景にしている。ストーリー性があるから、スペシャリティーなオープンカーという特別なモデルを購入したくなるのだ。

正直なところ、2シーターのオープンカーをファーストカーとして所有するのはかなりハードルの高い行為だ。それでも、あえてアバルト124スパイダーをファーストカーに選ぶという決断は決して酔狂じゃないと思う。多少の不便や苦労があっても、それを補って余りある走りの喜びがあるからだ。サソリの紋章を選ぶことは、アバルトの歴史を身にまとうことでもある。

黒を基調に、各所に赤いアクセントが用いられたインテリア。スポーティーなだけでなく上質感も備わっており、インストゥルメントパネルやメーターフード、アームレストなどはレザー張りとなっている。

写真のフェンダーパネルのほかにも、ボンネットやトランクフード、ステアリングホイールなど、各所にアバルトの“象徴”であるサソリのエンブレムが施されている。

オリジナルのエクステリアデザインやパワフルなターボエンジンに加え、独自のチューニングがなされた足まわりも124スパイダーの特徴。刺激的な走りを実現している。

全長4060mm、車両重量1150kg(AT仕様)と、今日のクルマとしては軽量コンパクトな部類に入る124スパイダー。しかし、その中身はまごうかたなき本格スポーツカー。機械式のLSDも標準装備される。