この新しいエンジンを得て、ジャガーの魅力に変化はあったのだろうか。答えはイエスでありノーである。
何より大きな進化を感じるのは、ドライバビリティーの向上ぶりだ。アクセルオンの後、トルクが湧き上がるまで一瞬待つことがなく、どこからでもすぐに加速に移れる特性は、クルマとの一体感を倍加させている。
さらに言えば、8段ATとのマッチングによる、いかにも効率の良さそうな感触もうれしくさせるポイントだ。矢継ぎ早にシフトアップを繰り返して、エンジンのトルクバンドをうまく生かす加速もそうだし、ちょうど100km/hの場合で1500rpmを下回るほど低い回転域を使うリラックスできる高速巡航も、これまで味わったことのないもの。新しいテクノロジーは新しい時代の走りの楽しさにつながっている。
ついでに言えば、「ジャガーに2リッターエンジン」という意外性それ自体も、気分をアゲる要素と言えるだろう。この記号性は強力である。
また、カタログ上の車重には大きな違いはないのだが、従来モデルに比べ、走っていてノーズが軽く感じられるのも好印象だ。あるいは重量配分や重心高の変化が、ポジティブに働いているのかもしれない。そもそもXFはハンドリング自慢のサルーンだが、そこにさらに磨きがかけられているのだ。
それでいて、ジャガーならではの豊潤な味わいは変わらず継承されている。高効率化の一方でさらなる余裕が加えられたことで、XFの走りは飛ばしてもいいし、あえてゆったりと走らせても心地良いものへと懐がグンと深まった。
そう、高効率性、ひいては環境への配慮こそを最たる目的として選択したように感じられたこの新しいパワートレインだが、実際には得たものはそれだけにはとどまらず、XFの、ジャガーの走りの世界に新たな魅力を付け加え、また深化させることにもつながっていたと言える。
XFは、このパワートレインを得て、今の時代にふさわしい、いや、これからの時代を先取りするプレミアムサルーンへと進化を遂げたのだ。