CHAPTER 03 走りのプロが実力を語る ~ レーシングドライバー試乗インプレッション ~CHAPTER 03 走りのプロが実力を語る ~ レーシングドライバー試乗インプレッション ~

特別なチューニングが施されたG'sノア/ヴォクシーの走りは、どのようなものなのか?
開発に関わったTOYOTA GAZOO Racingのレーシングドライバーに、その印象を聞いた。

G’s NOAH
意のままに運転できる
~大嶋和也

ノアの“G's”には、袖ヶ浦フォレストレースウェイというサーキットで試乗しました。ノーマルモデルも用意されていたので、しっかりと比較できましたね。

一番違うのは、ボディーの剛性感。ほかの“G's”モデルにも試乗していますが、ノア“G's”の違いは際立っている。これは、レーシングドライバーでなくても、普通のお父さんが乗っても、絶対にわかります。

運転席に座ってゆっくり動きだした時に、まずタイヤから伝わってくるフィーリングがまったく違う。ちょっとハンドルを切っただけで、クルマの反応が速く、しかも素直なのがわかります。道とドライバーをつなぐ、インフォメーションが豊かなんですね。ミニバンというのはどうしても、ハンドルを切った時にボディーがよれて、意図しない動きが出るものなんです。それがなく、思ったように動かせるので、運転していて楽しく感じられるんです。

場所がサーキットだったので、全開走行も試しています。タイトなコーナーが多くてたいていのミニバンが苦手とするコースなのに、ノア“G's”は違いました。背が高いからコーナリング中のロールは大きいのですが、違和感のないきれいな動きをするので怖さがないんです。実際にタイムは計っていませんが、ノーマルよりも確実に速く走れると思いますよ。

ノア“G's”はミニバンだから、家族を乗せることが多いでしょう。その点、助手席の奥さん、後席の子供たちにとってもいいクルマに仕上がっていますね。僕の場合、誰かを乗せているときは、その人たちにいかに不快感を与えないように運転するかを考えるんですが、“意のままに動くクルマ”なら、それが実現できる。ボディー剛性が上がり、足まわりもしっかりしているおかげで、ていねいな運転もしやすくなっています。

足まわりを固めているので、段差で一瞬トンッというのはある。ただ、その後の収まりがとてもいいです。乗る人によっては、そのほうが心地よく感じるかもしれません。僕自身、後席での試乗もしていて、その間ノートに評価リポートを書いていました。それくらい快適に過ごせるということです。

もともとは、自分の勉強のために車両開発のテストに参加させてもらっていたのですが、最近はよく意見を求められるようになりました。レーシングカーと市販車両の開発は別物とされた時もありましたが、GAZOO Racingでニュルブルクリンクに行き始めてからフィードバックが必要とされるようになりました。いまやミニバンも、レースとつながっているんです。

大嶋和也(おおしま かずや) 1987年生まれのレーシングドライバー。2007年に全日本F3選手権とSUPER GT選手権(GT300クラス)のチャンピオンに輝くなど、国内外のさまざまなレースで活躍。2016年シーズンは、LEXUS TEAM LEMANS WAKO'SからSUPER GT選手権(GT500クラス)に参戦。5月のニュルブルクリンク24時間レースにも出場した。