Chapter.1
かつて“クルマ小僧”
だった大人へ
控えめで
あることの美徳
小・中学校では、クラスの半分ぐらいの男子がクルマやバイクが好きで、休み時間はスーパーカー消しゴムでのバトルに明け暮れ、新型車が発売されたと聞けば、自転車でディーラーに赴いてカタログをもらう。そんな子供時代を過ごしてきた世代も、いまやいい大人となった。これまでの人生でさまざまなクルマを乗り継いできたことだろう。まだ財布の軽い若いうちは、スポーティーなグレードのハッチバック。少し稼げるようになったら本格派のスポーツカー。その後はライフスタイルやライフステージの変化によって、ステーションワゴンやミニバン、SUVなどにも手を出してみたりして、気付けば酸いも甘いもかみ分けられるクルマ通になっているはずだ。
そんな経験を積んできた者にとって新型スカイライン400Rは、あの頃のワクワク感を思い起こさせるひとつの理想形ともいえる。エクステリアはスタンダードなスカイラインと大きくは変わらないが、ガンメタ塗装の19インチアルミホイールと、その内側にのぞくアルミレッドキャリパーの対向ピストンブレーキ、専用のブラック塗装ドアミラー、そしてテールエンドに燦然(さんぜん)と輝く400Rバッジなどで、圧倒的なパフォーマンスを内に秘めていることをさりげなく主張している。古くからのクルマ好きならば、「羊の皮をかぶった狼」がスカイライン伝説の重要なファクターだと知っているはずだ。
見るものを納得させる
上質なアピアランス
今回用意された試乗車は、特別塗装色の「カーマインレッド」を身にまとっていた。日本語では「洋紅色」と呼ばれる深く鮮やかな紅赤色。ベースコートの高輝度アルミが光をキラキラと輝かせ、着色クリア層のナノ顔料が光の散乱を抑制して透明感を増す塗装となっており、発色が鮮やか。陰影が強く出るのでボディーの抑揚を美しく見せる。光の加減や角度で表情を変えていくのも、見る者を飽きさせない。
インテリアは、精悍(せいかん)なブラック基調に、レッドステッチを効果的に施すスポーツセダンの伝統的手法が用いられる。本革スポーツシートはダイヤキルティングでちょっとおしゃれをしているが、乗り込んでみればほどよくタイトで体の収まりがよく、サイドサポートも完璧。ステアリングやシフトノブはもちろん本革巻きで、手になじみがいい。派手さはさほどないが、上質で走ることに集中できる空間になっている。