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RANGE ROVER

時代の先を行くSUV

レンジローバー イヴォーグという選択

空前のSUVブームといわれて久しいが、なかでもひときわ強い輝きを放つのが、英国生まれのプレミアムSUV「レンジローバー イヴォーク」だ。では、このモデルのどんなところがわれわれを引きつけるのだろうか? 最新の2024年モデルを連れ出し、その魅力に迫った。

文=渡辺敏史/写真=郡大二郎

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自動社界のインフルエンサー 自動社界のインフルエンサー

2008年のデトロイトモーターショーでお披露目されたランドローバーのコンセプトカー「LRX」は、その鮮烈なスタイリングが大きな話題を呼んだ。デザインを担当したのは、ジェリー・マクガバン氏。現在はジャガー・ランドローバーとなった同社のクリエイティブを統括するトップだ。

しかし、LRXで注目すべきは形だけではない。16年前の当時掲げたコンセプトは「サステイナビリティー」だ。リサイクル材の使用や材料置換による軽量化、ディーゼル+モーターで前後に伝達系を持たないハイブリッド4WDなど、クラシック&アナログなキャラクターこそが売りだったランドローバーを未来へと導く、その指標となるものだった。

そして2010年、LRXの意志を受け継ぐモデルとして登場したのがレンジローバー イヴォークだ。斬新な3ドアのスタイリングはほぼそのままに、実用的な5ドアも設定されたイヴォークは、ランドローバー史上最大のヒット作となる。後に同クラスのSUVがスポーツクーペ的なデザインコンセプトを多用するようになったのも、イヴォークの影響が大きかったからだということは、想像に難くない。

そして2018年に2代目となったイヴォークは、LRXから続く趣旨をしっかり継承しながら、よりスタイリッシュに、よりサステイナブルに変貌を遂げた。

内装では、リサイクル材を採用し、テキスタイルにもファブリックの選択肢を設けるなど、持続可能性により踏み込んだ配慮がなされている。そして2022年には、プラグインハイブリッドモデル(PHEV)が加わった。「リアをモーター駆動とする電動4WD」といえば、まさにLRXが掲げたメカニズムだ。2代に及ぶ伏線の回収にはちょっと感心させられる。

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多様なパワートレインで期待に応える 多様なパワートレインで期待に応える

2024年型として内外装を中心にマイナーチェンジを受けたレンジローバー イヴォークは、このPHEVの「P300e」に加えて、「P250」と「P200」という2つのガソリンエンジン、そしてディーゼルエンジンの「D200」と、4つのパワートレインがグレードに応じて設定される。今回の試乗車はPHEV。グレードはこのP300eとP250に設定される「オートバイオグラフィー」だ。

P300eのパワートレインは前軸用に1.5リッター3気筒直噴ガソリンターボエンジンと、発電および駆動補助のベルトドリブンモーターを組み合わせ、最高出力200PS/最大トルク280N・mを発生する。そして後軸用には109PS/260N・mのモーターを搭載。おのおのが独立した動力源であり、システムアウトプットは足し算で309PS/540N・mとなる。最高速はP250よりも低い213km/hだが、0-100km/h加速は6.4秒と、車名のとおり3リッター級を思わせる瞬発力だ。

BEV走行時は後輪駆動となり、135km/hまではモーターのみでの走行が可能だ。バッテリーの容量は15kWhで、WLTCモードでの電動航続距離は65.1kmとなる。急速充電は備わらず家庭等での普通充電が基本となるが、満充電までの所要時間は3時間以内におさまるだろう。

つまり、通勤や買い物等、自宅から半径20km程度の往復や回遊であれば、モーター走行のみで賄える。そしてイレギュラーな状況でも、ガソリンエンジンで走行できるため足を止められることがない。読者の皆さんには釈迦(しゃか)に説法だろうが、PHEVは使い方を多様に組み立てられることにユーザーメリットがある。

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つくり手のこだわりが伝わってくる つくり手のこだわりが伝わってくる

イヴォークに限らず、昨今のレンジローバー系銘柄はシンプル&ミニマルであることに対する執念が他とは一線を画している。パテでスムージングしたカスタムカーのようにバンパーやボディーバネルの凹凸がならされ、そのパネル間の隙間はぴっちりと詰められる。造形や加飾などのディテールに威嚇的なものはない。むしろ素っ気なくも感じるが、塊全体での強烈な緊張感が見る者をぐいっと引き込む。

内装もまたしかりだ。最新デザインの採用によって中央のダッシュパネルからセンターコンソールにかけて配されるものは、映り込みを防ぐ曲面ガラスを用いた11.4型のセンタースクリーンと小ぶりなシフトセレクターのみとなった。フラッグシップの「レンジローバー」と「レンジローバー スポーツ」は一部に物理スイッチを残すが、「ヴェラール」とこのイヴォークはコンセプトを先鋭的に表すためにシンプル化も徹底している。

インフォテインメントはジャガー・ランドローバー全体で採用を推し進めるPivi Proにアップデートされており、さまざまな機能を直感的なタッチコントロールで使うことが可能だ。Apple CarPlayやAndroid Autoなどスマートフォンとのコネクト性もしっかり担保されており、日々使い慣れた環境を車中にシームレスに持ち込むことができる。そのモニター下部から続くオーナメント部はふた付きのポケットとして相応の容量を確保。Qi規格のワイヤレスチャージ機能も標準装備とした。グリーンハウスがキックアップするデザインもあってそうは見えないが、実は荷室の容量が591リッターもあるという点は意外に思われるかもしれない。PHEVのP300eはモーター搭載の関係で472リッターとなるが、それでもライバルと同等以上の容量が確保されている。

試乗車は最上級グレードでありながら、あえてデンマーク製の上質なウールブレンドをメインのテキスタイルに使用している。座ってのふわりとした肌触りはレザーとは一線を画するものだ。加えてルーフライニングにはアルカンターラが貼り込まれるなど、室内はアニマルフリーとなる。質感のみならず価値観でもレンジローバーはラグジュアリーの新しいスタイルを提案し続けており、その姿勢はイヴォークでも変わらない。

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「さすが」と言いたくなる走り 「さすが」と言いたくなる走り

リアの駆動モーターのアウトプットは存外に力強く、街なかから都市高速のような低中速域環境では、運転に気遣わずとも静かで滑らかなBEV走行が楽しめる。この域でのイヴォークは車格をなんら意識させない動的質感をみせてくれた。履いているタイヤも結構な大径だったが、その質量を持て余さないバネ下の動きの精度感やしっかりカドが丸められた路面のアタリのよさは、現行型の登場時点から確実に進化している。

メーター内にはアクセルワークで電力をうまく使いこなせるよう、エンジンがかかる踏みしろを示唆するインジケーターも用意されているが、エンジンが稼働しても音・振動の類いはうまく封じ込められており、特段の不快感はない。特に振動については、3気筒エンジンであるにもかかわらずうまく封じられていると思う。始動および駆動へのつながり感については前軸のモーターが果たす役割が大だが、アイシンが手がけるこのeアクスルは、さすがに制御がこなれている。

エンジンとモーターの協調による加速はさすがに力強い。高速域でもストレスのない加速感には確かに3リッター相当のパワフルさが感じられる。一方ハイブリッド車でありながら有段トランスミッションを持つことによる、加減速のダイレクト感の高さも魅力のひとつだろう。こちらはなにも高速域に限らず、低速で一定の回転数をキープしたいオフロード走行時にも効果的に用いることができる。

かつてイヴォークで悪路を走る機会があった際には、都会的なルックスにもかかわらず地上高やアプローチアングルもしっかりとられていて、先行するレンジローバー スポーツにしっかり追従できる走破性に驚かされたことがある。なんちゃって的な四駆は絶対につくらないというのはランドローバーの矜持(きょうじ)だが、イヴォークもいかに悪路でトラクションを確保するか、その駆動制御に一日の長を感じさせてくれた。

最新のイヴォークもパワートレインは何であれ、その絶対的なポリシーは守られているだろう。見た目だけではない、そのこだわりこそイヴォークが他と一線を画する、そしてユーザーの満足度を高める最大の要因になっているのだと思う。

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