
思いにぴたりと応えてくれる走りに、ついついむちを入れてしまったが、クールダウンも兼ねてペースを落として流しても、そこにはまた違った気持ち良さが待っている。キャデラック CTS クーペは、ゆっくり走らせても充実感があるクルマだ。
あらゆるリアクションは正確なのだが、だからといってドライバーをむやみに刺激してくるわけではない。トルクの出方も、ステアリングの反応もそう。ゆっくり行きたい時には、そんな気分を尊重してくれる。力を抜いて、周囲の景色に目をやりながら走りたい時には、決してそれを邪魔しないのだ。
ひとりで走る時にはもちろん、大切な誰かを乗せてのドライブの時には、これがとてもありがたい。クーペはスポーツカーじゃない。キャデラックは、大人のクーペのツボをよく分かっている。
CTS クーペは、昔のイメージのアメリカ車のような、ユルユルとしたクルマではない。けれど、ゆったり走らせたい時には、そんな気分に応えてくれる懐深さが、しっかりと息づいている。乗れば乗るほど、みずみずしい新しいキャデラックの走りの奥に、受け継がれたアイデンティティーを実感するのである。
ひと通り走りを堪能したあと、あらためてCTS クーペのエクステリアを、ちょっと離れたところから眺めてみる。アート&サイエンスというテーマの下、直線とフラットな面を軸に構成されたエッジの効いたフォルムは、都会の街並みの中でも、あるいは海や空、遠くの山々が美しい風景の中でも、とてもよく似合う。溶け込んでしまうのではなく、その中でくっきりと存在感を示して景色を一変させるあたりが心憎い。
CTS クーペを走らせるというのは、つまりそういうこと。自分と同乗者が気持ち良い時間を過ごすことで、周囲の風景まで変えていくのだ。そう思ったら、走らせるのがさらに楽しくなった。美しく、走りの気持ち良いクーペは、自らにも周囲にも彩りをもたらしてくれるのである。
キャデラック CTS クーペの詳細情報はこちら
全長×全幅×全高=4800×1900×1420mm/ホイールベース=2880mm/車重=1830kg/駆動方式=FR/3.6リッターV6DOHC24バルブ(322ps/6800rpm、38.0kgm/4900rpm)