
いくつかのコーナーを抜けたところで「やっぱり、期待通りだな」と感じた。高速道路を流している時点で、すでにステアリングの応答性の確かさを実感していたからだ。直線を走るのに気遣いが要らない、絶妙な手応えをもったクルマは、大抵そこから曲げていく時にも気持ちが良いもの。果たしてキャデラック CTS クーペは、ワインディングロードでも見事期待に応えてくれたのだった。
コーナーに向けて減速しながらステアリングを切り込んでいくと、CTS クーペはこちらの思った通りのラインをきれいになぞっていく。いたずらに鋭いのではない、正確な反応が心地良い。
車体のロールはそれなりにある。とはいっても、ふわふわと落ち着かないわけではない。伸びも縮みも動きはしっかり抑えが効いていて、その落ち着いたロールが、むしろ挙動のつかみやすさ、安心感につながっている。
こういう場面では、6速オートマチックトランスミッションはステアリングホイールから手を離さずに操作できるタップシフトでマニュアル変速するのがお薦めだ。3.6リッターと排気量があるだけに街中や高速道路で多用する低中回転域でもトルクは十分なのだが、ワインディングロードでは、やはり38.0kgmの最大トルクを発生する4900rpmから先を使った方が、リズミカルに速度を乗せていくことができる。
ここから最高出力322psの発生回転数である6800rpmまでの間のパワー感はなかなかのもの。かといって、有り余るパワーに翻弄(ほんろう)される感じもなく、アクセルを思い切り踏み込む楽しみも味わえる。
そうやって走らせていると、ついつい夢中になってしまう。車体は決して小さくはないのに、あらゆるレスポンスが思いとぴたりと一致するから、クルマとの一体感をとても強く感じるのだ。正直言って、期待以上であった。