イタリアン・スポーツカーABARTH 124 spiderしみ

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ABARTH

REPORT 3 その美声に酔いしれる

文=黛 健司/写真=郡大二郎

走りだす前から期待が高まる

レコルドモンツァ装着車といっても、テールエンドの4本出しパイプフィニッシャーは純正となんら変わるところはないので、外観からそれを知る手だてはない。しかし、バンパーの下をのぞきこんでみると、純正のそれとはまるで異なる、複雑かつ有機的な曲線を描くエキゾーストパイプが押し込まれていて驚く。メーカー純正のチューニングパーツゆえ、フィッティングには寸分の狂いもないところもいい。

「アバルト595」シリーズ用のオプションとして用意されたレコルドモンツァ同様、排気は2系統に別れている。外側左右一対のテールパイプへはサイレンサーを通って排気され、内側の一対はサイレンサーは通らず直接排気される構造で、低負荷・低回転時はサイレンサーを経由した2本だけで排気し、負荷が高く高回転になるともう2本のストレートパイプにも排気が流れる仕組みだ。高負荷・高回転時に奏でられる、この両者が混じり合ったサウンドはどんなものか、乗り出す前から期待が高まる。

高性能エンジンならではの音の魅力

エンジンをかけた瞬間、ノーマルの124スパイダーとはあきらかに異なる、勇ましい響きが辺りにこだまする。街中を流していても、3000rpmを超えるあたりで一段とハイピッチなトーンへと変貌を遂げ、それまでの、ちょっとくぐもった音から、透明度を増して少し乾いた音へと転調し、まるで朗々と歌いあげるパバロッティでも聴くかのようで快感を覚える。

さらにフルスロットルでもくれようものなら、イタリアン・スーパーカーのごとき咆哮(ほうこう)をまき散らし、スロットルオフではパンッ、パンッ、パンッとアフターファイアーの音も混じる。どこかで聴いた覚えがあると記憶をたぐったら、「アルファ・ロメオ4C」のエキゾーストノートにそっくりなことに気づいた。アルファ・ロメオとアバルト、それぞれ個性の違いはあるにしても、いかにも高性能エンジンならではのサウンドの魅力は共通でおもしろい。

2系統の排気経路を持つオプションの排気システム「レコードモンツァ」。高負荷・高回転時のみサイレンサーを“素通り”する経路が開く仕組みで、刺激的なサウンドを楽しむことができる。

鮮やかな赤で彩られた124スパイダーのエンジン回転計。レッドゾーンは6500rpmからで、3000rpmを過ぎると「レコードモンツァ」のストレートパイプが開く。

シラカバの林にエキゾーストノートを響かせて走る、「レコードモンツァ」を装着した124スパイダー。低回転域では力強い、高回転域ではスーパーカーを思わせるハイトーンのエキゾーストノートを楽しむことができた。