THE NEW RANGE ROVER EVOQUE
Chapter 5-1
出会いは30年近く前のこと
「僕、ずーっとレンジ(ローバー)派だったんですよ」
新型レンジローバー イヴォークを運転するのはもちろん初めてなのに、勝手知ったるクルマのごとくスイスイ走らせながら、小山薫堂さんは落ち着いた声でそう言った。

現在4種類のモデルがラインナップされるレンジローバーシリーズ。中でもレンジローバー イヴォークは、最もコンパクトで都会的なキャラクターのモデルだ。
「最初に買ったのは1990年だから、もう30年近く前。その後、いろいろレンジを乗り継いだんですけど、やっぱり“クラシック・レンジ”がよくて、自分が手放したレンジを探し出したんですよ。見つけ出したとき、それは部品取り用の事故車両になっていたので、結局、同じ色で同じ型の、普通に走るレンジローバーを買って、そっちをドナーにすることで思い出のレンジをよみがえらせたんです。普通に走るクルマをつぶしちゃったから、それはちょっと罪悪感もあったんですけど」
「初代のレンジは、運転席のポジションが好きなんです。いまよりもっと馬車に乗っている感じで、座面が高くて、もっとサイドガラスの位置も低いじゃないですか。いまのモデルは安全性のためにドアももっと厚くなっていますし、あのペラペラ感がよかったというか。当時は、よく徳大寺(有恒)さんが『砂漠のロールス・ロイス』とおっしゃっていて、『なんでこれがロールス・ロイスなんだろう』といま乗ると思いますけど(笑)。それでも、僕はあれぐらいでちょうどいいなと思いますけどね。車幅も狭いですし。いまのはどれも大きくなっちゃって」

英ランドローバーのSUVの中でも、特にラグジュアリーなモデルに冠されるレンジローバーというモデル名。その起源は1970年に誕生した初代レンジローバーにさかのぼる。
1990年に日本での販売が始まった初代レンジローバーは全長×全幅×全高4470×1780×1780mmで、ホイールベースは2540mmにすぎなかった。当時、ブリティッシュグリーンのレンジローバーを愛車にしていた徳大寺さんがこんな意味のことをよく語っておられた。「背が高いから大きく見えるけど、クラウンより小さいんです」
対して新型イヴォークは、4380×1905×1650mmと2680mmで、グッと短くてドカッと幅広くて、ギュッと低い。そのサイズからして、コンパクトでクーペライクな、21世紀の都会派SUVという、コンセプトもメカニズムも初代とはまったく異なることをよく示している。

左右フェンダーの上に覆いかぶさるクラムシェル型のボンネットや、車両の前後に大きくあしらわれた「RANGE ROVER」のロゴなどは、初代レンジローバーから受け継がれるアイコンだ。
「これ、レンジらしさは感じないんですけど。いい意味で感じない」
薫堂さんの第一印象は、新型イヴォークのキャラクターを素直に表したものだった。

小山薫堂(こやま くんどう)
『カノッサの屈辱』や『料理の鉄人』『ニューデザインパラダイス』など、斬新な番組の企画・構成を数多く手がけてきた放送作家・脚本家。初の映画脚本となる『おくりびと』では、日本アカデミー賞最優秀脚本賞など、国内外で多数の賞を獲得。「それは新しいか?」「それは誰を幸せにするか?」「それは自分にとって楽しいか?」を常に自分に問いかけ、企画に臨んでいる。1964年、熊本県生まれ。
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現在4種類のモデルがラインナップされるレンジローバーシリーズ。中でもレンジローバー イヴォークは、最もコンパクトで都会的なキャラクターのモデルだ。
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英ランドローバーのSUVの中でも、特にラグジュアリーなモデルに冠されるレンジローバーというモデル名。その起源は1970年に誕生した初代レンジローバーにさかのぼる。
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左右フェンダーの上に覆いかぶさるクラムシェル型のボンネットや、車両の前後に大きくあしらわれた「RANGE ROVER」のロゴなどは、初代レンジローバーから受け継がれるアイコンだ。
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小山薫堂(こやま くんどう)
『カノッサの屈辱』や『料理の鉄人』『ニューデザインパラダイス』など、斬新な番組の企画・構成を数多く手がけてきた放送作家・脚本家。初の映画脚本となる『おくりびと』では、日本アカデミー賞最優秀脚本賞など、国内外で多数の賞を獲得。「それは新しいか?」「それは誰を幸せにするか?」「それは自分にとって楽しいか?」を常に自分に問いかけ、企画に臨んでいる。1964年、熊本県生まれ。