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“GT”を極めた男が魅せられたクロスオーバーSUV “GT”を極めた男が魅せられたクロスオーバーSUV

「神は細部に宿る」という言葉がある。それでは、「トヨタC-HR」をC-HRたらしめている圧倒的な個性は、どのようなデザイン要素や、技術的背景の上に成り立っているのだろうか。詳しく解説する。

文=生方 聡/写真=荒川正幸、トヨタ自動車

サイズを超えた存在感

国内外を問わず、いま最も活気にあふれているのがコンパクトSUV市場だ。その注目のマーケットにおいて、2017年、2018年と2年連続でSUV新車販売台数国内1位を獲得したのがトヨタC-HRである。そんな数字を挙げなくても、路上をさっそうと走り抜けるC-HRの姿に目を奪われる機会が多いことから、その人気の高さを肌で感じ取っている人は多いはずだ。

C-HRが多くの支持を集める理由として、真っ先に挙げたいのが、印象的なエクステリアデザイン。全長×全幅×全高=4360×1795×1550(4WDは1565)mmとSUVとしてはコンパクトなボディーにもかかわらず、サイズを超えた強い存在感を放っているからだ。メリハリを効かせた彫刻のような造りに、クーペを思わせる躍動感のあるルーフライン、逞しさを映し出す大径タイヤと大きく張り出したフェンダーが、C-HRのキャラクターを際立たせている。

中でもフロントマスクは印象的で、力強い面で表現されたフロントバンパーとフロントフェンダーにシャープなヘッドライトを組み合わせることで、精悍(せいかん)な表情を作り上げる。そのうえ、空力や冷却性能に加えて、歩行者保護性能を配慮したデザインにまとめ上げられているというのも見逃せない。

抑揚に富んだサイドビューも見どころのひとつで、大きく張り出した前後フェンダーと、ダイヤモンドをモチーフに強く絞り込んだボディーとの対比が、SUVに不可欠な力強さをアピール。クーペのようなルーフラインを持つC-HRは、薄いグラスエリアやリアドアに溶け込むドアハンドルと相まって、まるで2ドアクーペのように躍動的だ。

  • フロントまわりでは、大きな台形のロワーグリルやボディーサイドにまで回り込むヘッドランプなどで、ワイド感と踏ん張り感を表現している。

  • リアでは、キャビンを絞り込んだ一方で、フェンダーとリアコンビランプは外側へと張り出したデザインを採用。安定感のあるスタンスを表現した。

  • ボディーサイドにつけられた抑揚が美しいサイドビュー。SUVらしからぬ小さなグラスエリアも特徴的だ。

デザイナーの遊び心に触れる

そんなエクステリアとは対照的に、C-HRのインテリアはスタイリッシュで洗練された雰囲気に包まれている。コックピットはドライバーを中心にデザインされ、センターパネルやスイッチ類をドライバーに向けてレイアウト。さらにドライバーを囲むコンソールが機能的かつ居心地のいいスペースを生み出している。高めのアイポイントや開放的な視界のおかげで、運転がしやすいのもC-HRの魅力のひとつだ。

インストゥルメントパネルに施されるステッチ付きのパッドや、美しい仕上げの金属調オーナメント、ピアノブラックのパネルなど、その一つひとつが高い質感で仕上げられており、統一された色使いも手伝って、上質な大人の空間を演出。ステアリングスイッチやヒーターコントロールスイッチ、ドアトリムなどには、ダイヤモンドのモチーフが繰り返され、そんなデザイナーの遊び心に触れる瞬間がまた楽しい。ホールド性に優れたシートに身を委ねれば、走りだす前からドライビングへの期待が高まるに違いない。

  • インテリアでは、インストゥルメントパネルからドアトリムまでつながるソフトパッドなどで、横方向の広がりを表現。センタークラスターはドライバーに向けてレイアウトされている。

  • ハイブリッドの「G」および1.2リッターターボの「G-T」グレードには、レザーとファブリックのコンビシートが標準装備。ロングドライブでの疲れにくさに配慮した設計となっている。

  • ドアパネルを飾る、ダイヤモンドのドットパターン。こうしたデザイナーの遊び心が面白い。

オーナーの個性を彩るバリエーションモデルも

その期待に応えるのが、TNGA(Toyota New Global Architecture)により、低重心パッケージと高いボディー剛性を手に入れ、意のままの走りを実現するC-HRの運動性能だ。フロントにマクファーソンストラット、リアにダブルウイッシュボーンのサスペンションを採用し、さらに名門「ザックス」のショックアブソーバーを標準装着するなどして、優れた乗り心地と高い操縦安定性を達成。その高い次元の走りは、デビューに先立ち、2016年5月に参戦したニュルブルクリンク24時間耐久レースで、完走を果たしたことでも証明済みだ。

パワーユニットは、1.8リッターエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムと、1.2リッターダウンサイジングターボエンジンの2種類を用意。ハイブリッドシステムは、122psのシステム最高出力と30.2km/リッター(JC08モード)の低燃費を実現。一方、最高出力116psの1.2リッターターボは、その特性を引き出す新制御方式のCVTにより、ドライバーの要求に応えてくれる。駆動方式はFFを基本に、1.2リッターターボでは4WDも選択可能だ。

このように魅力的なコンパクトSUVに仕上げられたC-HRは、1.2リッターターボ搭載車が229万円(2019年1月現在)から、ハイブリッド車が261万4000円からと、手頃な価格設定となっているのもうれしいところ。ツートーンのボディーカラーが選べたり、すべての光源をLED化した“LEDパッケージ”が用意されていたりと、選択肢が豊富な点も見逃せない。さらに、内装をブラック基調としてクールな印象を高めた“Mode-Nero”と、同じくブラウン基調として上質な印象を高めた “Mode-Bruno”といった特別仕様車も登場。豊富なモデルバリエーションによって、オーナーの個性を彩ってくれるに違いない。

  • 「C-HR」の特別仕様車「G“Mode-Bruno”」(左下)と「G“Mode-Nero”」(右上)。前者はメッキ仕立てのドアハンドルなどでよりおしゃれに、後者はブラックのホイールでクールかつスポーティーにコーディネートされている。

  • ブラウンを基調とした「C-HR G“Mode-Bruno”」のインテリア。シート表皮やインパネアッパー、コンソールボックスにダークサドルタン(ブラウン系)を配している。

  • 「C-HR G“Mode-Nero”」のインテリアはブラックを基調に、アクセントカラーとしてシート表皮の本革部分にクールグレーを配している。