
タウンスピードでの乗り心地も良好ではあるけれど、キャデラック エスカレードが持ち味を発揮するのはやはり関越自動車道に入ってからだ。
乗り心地は、ソフトな部類に入るといっていいだろう。微妙にザラザラした路面、小さな凸凹、路面の継ぎ目、明らかに補修が必要な不整路面。そういった大小さまざまの"障害"を乗り越える瞬間、足まわりがしなやかに伸び縮みして、路面とタイヤの衝突を丸く収める。四隅の足は、法定速度の範囲であれば速度を上げれば上げるほど、柔軟に動くように感じられる。ドライバーは、まさに大船に乗った気分を味わうことができる。
不思議なのは、ふんわり軽い乗り心地と、しっとり重厚な乗り心地、さらにコーナリング時にはロール(横方向の傾き)を抑えたしっかりとした走りっぷりと、三つの異なる性格を備えていることだ。通常であれば、三つのうちの一つがそのクルマの味となるはずだ。
その理由は、マグネティックライドコントロールという先進的なサスペンション技術に見つけられる。ショックアブソーバー内部の磁性流体(鉄粒子を含んだ液体)は、磁気を通すことで瞬時に粘性が変化する。この特性を生かして、1/1000秒単位で路面状況をチェックしながらサスペンションの性格を調整しているのだ。
足まわりだけでなく、心臓もハイテク満載。エンジン負荷が低い状況、例えば軽くアクセルペダルに足を載せて高速巡航をするような場面では、アクティブフューエルマネジメントシステムが作動して、6.2リッターV型8気筒のうち4気筒だけが働くように制御されるのだ。可変気筒数とも可変排気量ともいえる、進んだテクノロジーを用いている。
しかも8気筒から4気筒への切り替えは、どんなに意地悪に観察しても感知できない。優雅に泳ぐ白鳥が水面下では激しく水をかいているように、ラグジュアリーに走るエスカレードの内部では各種ハイテク装置がものすごい勢いで作動しているのだ。