
今、アメリカの自動車社会に大きな変化が現れている。大きく重たいクルマが急速に姿を消して、その代わりに中型や小型のクルマに置き換わっていっているのだ。それは街中でもフリーウェイでも、ちょっと走ってみれば一目瞭然だ。
例えば、フレーム付きシャシーを持つFRのフルサイズセダンが数を減らし、軽いモノコックボディーを持つ中型のFFセダンが増えてきている。当然、そうしたクルマに載っているエンジンの排気量は小さく、気筒数も少ない。同様の変化が、SUVやピックアップトラックにも起こっている。
決定的だと思わされたのは、タクシーやパトカーまでもが大型セダンから、中型セダンやSUV、ミニバンなどに取って換わられていることだ。体格のいいポリスマンやタクシードライバーがフルサイズセダンから降りてくるのはアメリカの典型的な風景のひとつだったが、過去のものになりつつある。
それもこれも、時代の要請によるものだ。ガソリン価格が1ガロン4ドルの壁を越えたのは数年前のこと。彼らは1年間に、僕ら日本人の2倍以上の距離を走行するから、燃料費の高騰は切実な問題なのだ。CO2排出量も削減しなければならないから、少しでも燃費に優れたクルマへの乗り換えが猛烈な勢いで進んでいる。
アメリカの路上には、もうひとつ注目すべき変化がある。それはクロスオーバー車の出現だ。クロスオーバーとは、異なるもの同士を結び付け、それまでなかった新しいものを生み出すことである。
セダンとステーションワゴン、あるいはステーションワゴンとSUVというように峻別(しゅんべつ)されていたものが融合し、止揚されて誕生したのがクロスオーバーである。「キャデラック SRX クロスオーバー」は、そんな新しいカテゴリーの、ラグジュアリークラスの代表格だ。