
今にして思えば、13年前の1999年1月にオープンしたデトロイト自動車ショーは、歴史的に非常に重要なイベントだった。そのショーは素晴らしくエキサイティングだった。中でも、最も激しく燃えていたのはアメリカ最大の自動車メーカー、GM、しかもその頂点に立つブランド、キャデラックだった。
キャデラックは、年々攻勢を強めるヨーロッパや日本からの高級車に真っ向から対抗すべく、未来に向けて大胆なコンセプトを打ち出し、新世代のアメリカンラグジュアリーカーへの大転換を狙ったのだ。
そのテーマとして打ち出された言葉は「アート&サイエンス」、そして、その言葉を具体化するコンセプトカーとして「エボーク」と名付けられたスポーツカーが発表された。このときに「キャデラック・ルネッサンス」は開花し、それが今日までつながっていると言っていい。
1999年のデトロイトショーで公開された「キャデラック エボーク」。このコンセプトカーを発展させる形で、2003年に「キャデラック XLR」が発表された。
アートは芸術だけでなく、革新的な工学も意味し、サイエンスは科学技術、先端技術を含む言葉である。ちょうど時は20世紀の末、新たな21世紀に向けて、キャデラックは再び世界の最先端に挑もうとして、このコンセプトを打ち出したのだろう。
日本の一般の人がキャデラックと聞くと、派手でおおらかなアメリカのよき時代の象徴のように受け取る人が多いが、実際はキャデラックの歴史は、最新技術と設計思想の歴史であり、単なる高級車ではなくて、アメリカ、いや世界の自動車技術の先端的な存在だった。セルフスターターから始まり、パワーステアリング、AT、エアコンなどの快適技術、安全合わせガラスやエアバッグなどの安全技術、そのいずれも世界でまずキャデラックが実用化したのである。また、どの時代においてもキャデラックはデザインリーダーでもあった。
2010年に発売された「キャデラック SRX クロスオーバー」。3リッターV6エンジンを搭載し、「ラグジュアリー」と「プレミアム」の2グレードが設定される。