
ブレーキングで感じた違和感
三浦さんのクルマがどんな状態なのか確かめるため、さっそく藤トモ先生に試乗してもらった。
「ちょっと乗っただけでは、前後のタイヤが違うということは気づきませんね。まあまあ、静かではあります」
ハンドルを取られてうまく走れないというようなひどい状態ではない。特に問題はなさそうに見えたが、しばらく走っていると藤トモ先生の表情が曇る。
「ブレーキを踏んだ時、前後の動きが違うような……。おかしいですね。Eクラスにはもっとピシッとした直進性があるはずなんですが。街なかでこのくらいのスピードで感じるのだから、高速道路走行時にブレーキングしたらもっとわかりやすいでしょうね」
助手席で藤トモ先生の運転を見守る三浦さんはちょっと不安そう。
「ずっと乗っているうちに気にならなくなっていたのかな。そんなに違いますか……」
クルマの現状を知るべく、三浦さんと藤島さんとで交互に「メルセデス・ベンツEクラス」をドライブ。タイヤが原因と思われるクルマの動きの違和感を、藤島さんが次々に指摘していく。
前と後ろでタイヤの動きが違う
道路に赤いストライプがあしらわれた段差舗装に差しかかると、さらに明確に弱点が浮かび上がる。
「前後の入力が違うのがはっきりとわかりますね。ゴムの柔らかさが違うようです。メーカーが違えばタイヤの構造が変わりますし、設計思想も違います。同じ動きにならないのは当然ですね」
カーブを曲がる時には不自然な動きが現れた。
「フロントがたわんだ後に戻る動きが変ですね。タイミングが遅れるんです。無理に粘っているというか、素直さが感じられません。ただ、ちょっとした違和感なので、乗っているうちに“こんなものかな”と思ってしまうんでしょうね」
タイヤ交換した時には変だと感じていたかもしれないが、日常的に運転しているうちに三浦さんは慣れてしまったのだろう。藤トモ先生は、フラストレーションがたまってきたようだ。
「うーん、もったいない! せっかくのEクラスなのに、持ち味が出せていませんから」
メーカーや銘柄によって、トレッド面のゴムの固さや雨の日の排水性、サイドウオールの固さなどはまちまち。前後で異なるタイヤを履いたり、クルマのキャラクターとかけ離れたタイヤを選んだりするのは、やはりオススメできる行為ではないようだ。