「知」と「力」からなるジャガーの新しい心臓

インジニウムエンジンの
ここに注目

文=金子浩久/写真=小林俊樹

コンセプトは
しっかりと燃焼させること

F-PACEのディーゼル車に搭載されている2リッターターボチャージド4気筒エンジンは「INGENIUM(インジニウム)」と名付けられた最新型だ。ジャガー・ランドローバー社が設計から生産までを手がけ、バーミンガム近郊にある、同社のウィルバーハンプトン工場で製造されている。

INGENIUMとはラテン語で「知の力」という意味で、のちに転じて英語の「ENGINE」となっているほどだ。単なる「力」ではなく、「知」が冠せられる辺りに開発の狙いが込められているように聞こえる。力強いだけでなく、効率と環境性能にも優れていることも求められるのが極めて今日的ではないか。

INGENIUM
フォードグループから離れるということは、それまでグループ内で利用できていたプラットフォームやパワートレインなどのさまざまなリソースを自前でそろえなければならなくなることを意味していた。それはジャガー・ランドローバーに限ったことではなく、ボルボにとってもマツダにとっても同じことだった。ボルボは「Drive-E」と称する新エンジンを開発したし、マツダも「スカイアクティブ」を生み出した。
ジャガー・ランドローバージャパンの内藤久善氏は「インジニウム」エンジンについて次のように語った。「開発は、“ジャガーはパフォーマンスブランドなので、特にディーゼルの特性を生かし、しっかりと燃焼させよう”というコンセプトで進められました」
燃焼効率を高めることによって低回転域から430Nmというクラストップの最大トルクと180psの最高出力を発生させている。ライバルは400Nm未満である。
「エンジン内部の摩擦抵抗をいかに減らすかが開発目標のひとつです」(内藤氏) 具体的にはカムシャフトへのニードルローラーベアリングの使用やピストンへの特殊コーティング、排気バルブの可変タイミング化などである。排出ガス対策には、排ガス中のNO(一酸化窒素)とNO2(二酸化窒素)を窒素に還元するアドブルー方式が採用されている。
インジニウムエンジンはまずこの2リッターのディーゼル版がリリースされたが、同排気量のガソリン版も控えている。さらには3気筒や6気筒の計画も存在していることも、内藤氏は否定していない。この点は、4気筒一本やりのボルボとは対照的なところだ。今後の展開に期待したい。