CHAPTER 2.
ガソリンとディーゼル、2台のF-PACEを乗り比べる
ジャガーの理念が生きている
文=今尾直樹/写真=郡大二郎/取材協力=旧軽井沢 ホテル音羽ノ森
SUVらしからぬ俊敏さ
2015年10月に、日本への導入が告げられたジャガー初のSUV「F-PACE」。そのデリバリーが今夏から始まっている。F-PACEには、380psの3リッターV6スーパーチャージドに加えて、同じエンジンの340ps版、そして180psの2リッター直4ディーゼルターボがラインナップされる。
そこで、340psのV6ガソリンと、主力というべき180psのディーゼル、2つの違いをじっくり味わうべく、深紅の「35t R-SPORT」と純白の「20d PRESTIGE」の2台を借り出して、軽井沢方面へと向かった。
スポーツカーのDNAを継承するSUV「F-PACE」。リアビューにも力強さがみなぎる。
最初に35tのキーを手にしたのは、ボディー色の鮮烈さに加え、R-SPORT独自の精悍(せいかん)なスタイルにグッときたからである。ガソリンの方が静かで速くて痛快に決まっている、というゴリゴリの先入観もあった。しかも、スポーツカーの「F-TYPE」と同じエンジンである。最高出力340ps/6500rpm、最大トルク450Nm/3500rpmという数値を聞かずとも、だれだってこちらを選ぶだろう。
ドアを開けて着座してみる。筆者にとってF-PACE初体験である。意外やフロアは全然高くない。ほとんど普通のサルーンのように乗り降りできる。ドライビングポジションもまた普通の乗用車に近い。ランドローバーのようなコマンドポジションを期待していると大違いである。ジャガーは彼ら独自の微妙な高さを選んでいる。
「BLADE」と名付けられた、「35t R-SPORT」の20インチアロイホイール(オプション)。
時刻は午後6時。小雨のそぼ降る中、ガスに覆われた八ヶ岳高原ラインを35t R-SPORTは、なんの不安もなく駆け抜けていく。F-PACEの四輪駆動システムは、通常のドライ路面だと前後トルク配分10:90と、ほぼ後輪駆動で走行し、必要時にのみ電子制御の油圧多板クラッチを介して前輪に適正なトルクを配分する。この制御は滑ってからではなくて、滑ることを予測して行う。つまり、スリップしない。それゆえ、ウエット路面でも絶大な安心感がある。
動きの俊敏さたるや、従来のSUVの概念とは異なる。なにしろ開発のベースとなっているシャシー、サスペンションがF-TYPEである。ボディーデザインが示しているように、F-PACEのDNAにはF-TYPEが組み込まれているのだ。
「F-PACE 35t R-SPORT」のコックピット。色鮮やかなシートがドライバーを迎える。
特徴的なことは、乗り心地が硬派のスポーツカー並みにキリリと引き締まっていることだ。「アダプティブ・ダイナミクス」と呼ばれる可変ダンパーが付いているけれど、ノーマルからダイナミックモードに切り替えても、乗り心地の硬さはほとんど変わらない。徹頭徹尾硬い。おかげでノーズダイブもスクワットも、ロールとも無縁で、ボディーはフラットに保たれている。
「The Ultimate practical Jaguar sport car(究極の実用性を持つジャガーのスポーツカー)」というメーカーのキャッチフレーズ通り、F-TYPEのES細胞を取り出し、それをSUVに育てあげたのがF-PACEなのである。
アクセルを踏み込むと、340psのV6スーパーチャージドはスポーツカーさながらの金属的咆哮(ほうこう)をあげる。胸のすく加速に、世の憂きことが吹っ飛んでいく。
高原の道を行く。「ジャガーF-PACE 35t R-SPORT」は、0-100km/h加速5.8秒の俊足を誇る。
そこで、340psのV6ガソリンと、主力というべき180psのディーゼル、2つの違いをじっくり味わうべく、深紅の「35t R-SPORT」と純白の「20d PRESTIGE」の2台を借り出して、軽井沢方面へと向かった。

最初に35tのキーを手にしたのは、ボディー色の鮮烈さに加え、R-SPORT独自の精悍(せいかん)なスタイルにグッときたからである。ガソリンの方が静かで速くて痛快に決まっている、というゴリゴリの先入観もあった。しかも、スポーツカーの「F-TYPE」と同じエンジンである。最高出力340ps/6500rpm、最大トルク450Nm/3500rpmという数値を聞かずとも、だれだってこちらを選ぶだろう。
ドアを開けて着座してみる。筆者にとってF-PACE初体験である。意外やフロアは全然高くない。ほとんど普通のサルーンのように乗り降りできる。ドライビングポジションもまた普通の乗用車に近い。ランドローバーのようなコマンドポジションを期待していると大違いである。ジャガーは彼ら独自の微妙な高さを選んでいる。

時刻は午後6時。小雨のそぼ降る中、ガスに覆われた八ヶ岳高原ラインを35t R-SPORTは、なんの不安もなく駆け抜けていく。F-PACEの四輪駆動システムは、通常のドライ路面だと前後トルク配分10:90と、ほぼ後輪駆動で走行し、必要時にのみ電子制御の油圧多板クラッチを介して前輪に適正なトルクを配分する。この制御は滑ってからではなくて、滑ることを予測して行う。つまり、スリップしない。それゆえ、ウエット路面でも絶大な安心感がある。
動きの俊敏さたるや、従来のSUVの概念とは異なる。なにしろ開発のベースとなっているシャシー、サスペンションがF-TYPEである。ボディーデザインが示しているように、F-PACEのDNAにはF-TYPEが組み込まれているのだ。

特徴的なことは、乗り心地が硬派のスポーツカー並みにキリリと引き締まっていることだ。「アダプティブ・ダイナミクス」と呼ばれる可変ダンパーが付いているけれど、ノーマルからダイナミックモードに切り替えても、乗り心地の硬さはほとんど変わらない。徹頭徹尾硬い。おかげでノーズダイブもスクワットも、ロールとも無縁で、ボディーはフラットに保たれている。
「The Ultimate practical Jaguar sport car(究極の実用性を持つジャガーのスポーツカー)」というメーカーのキャッチフレーズ通り、F-TYPEのES細胞を取り出し、それをSUVに育てあげたのがF-PACEなのである。
アクセルを踏み込むと、340psのV6スーパーチャージドはスポーツカーさながらの金属的咆哮(ほうこう)をあげる。胸のすく加速に、世の憂きことが吹っ飛んでいく。




