イタリアン・スポーツカーABARTH 124 spiderしみ

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ABARTH

REPORT 2 日常にサソリの刺激を

文=竹岡 圭/写真=荒川正幸

オープンエアをより気軽に

しかも、オープンカーというのはクルマの中でも特別なのだ。徒歩でもなく、自転車でもなく、自動車のスピード領域で“外”との境界線がないというのは、オープンカーでしか経験できない世界である。そしてこれがまた最高に気持ちイイのだ。ほかでは味わえない高揚感があり、想像しただけで気分がアガる。これはオープンカーだけが提供できる“特別”であり、しかも124スパイダーの場合、アバルトらしい刺激的なエキゾーストをじかに味わえるという“特別”までついてくる。

そして、得てして女性は、この“特別”というキーワードが大好物なのだ。しかし同時に、非常に現実的な感性を持ち合わせていることも忘れてはならない。124スパイダーのすごさは、この“特別”と“現実”を同時に満足させられるところにある。

例えば、ルーフがそう。最近は、電動トップのクルマのなかにも「ある程度の速度までなら走りながら電動ルーフの開閉ができます」なんていうものが増えているが、手でガバッと閉められる方式に開閉速度でかなうものはない。なにより124スパイダーの場合、信号待ちはもちろん、低速なら運転中だって助手席の人が手を伸ばしてルーフを開け閉めする、なんて芸当ができてしまうのだ。

「そうは言ってもねぇ……」と、私も最初は思っていた。初めて124スパイダーに乗る際に止まったままやってみたら全然できなくて、「こんなの体が大きい男性にしかできないよ」と嘆いていたのだ。ところが、本当に運転中に雨に遭遇したところ、イザとなればできるんですねぇ。信号待ちでヒョイと後ろに手を伸ばし、片手でルーフを閉められたのだ。一度コツをつかんでしまえば、後は何度だって、簡単にできる。

ちょっとした旅行のお供にも

屋根を開け閉めする手間が124スパイダーを所有する上でまったく問題にならないことはおわかりいただけただろう。むしろ女性がその“特別”をより積極的に、より気軽に楽しめるクルマだと言える。

次に2シーターのオープンカーということで気になるのは、やはりスペースユーティリティー。屋根を格納する場所が必要なオープンカーは、必然的に荷物の収納スペースが少なくなる。ところが、このクルマには十分なトランクスペースが備わっているのだ。

「いったい何が入ってるの?」→「夢が詰まってるの」というやり取りが定番化するほどに、いつも荷物の多い私が、2泊3日のお出掛けで使うキャリーバッグ――人によっては1週間分の荷物もOKといわれるサイズのシロモノである――が、スッポリ収まるほどの積載性を備えている。こうなれば普段のお買い物はもちろん、旅行にだって行けてしまう。さすがに車中泊は厳しいものの、ゆとりの大人旅なら何ら問題はないだろう。

赤い「ABARTH」の刺しゅうが目を引くスポーツシート。車内空間のタイトな124スパイダーだが、ドリンクホルダーを脱着式としたり、座席の後ろに収納を設けたりと、ユーティリティーを向上させる工夫がこらされている。

オープン時に乗車スペースの後方に備わるレバーを引くと、折りたたまれていたソフトトップが“ぽこん”と起き上がる仕組みになっている。これにより、乗員はシートに座ったままでもルーフを閉じることができる。

トランクルームは、ルーフの状態に関わらず140リッターの容量を確保。床面を深底にするなどして、実用性が高められている。

オープン時はもちろん、トップを閉じた状態でもスタイリッシュな124スパイダー。快適性を重視して、遮音性の高い2層構造のソフトトップが採用されている。