ダイハツ・コペン ディタッチャブルトップ(5MT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・コペン ディタッチャブルトップ(5MT) 2003.05.09 試乗記 ……167.8万円 総合評価……★★凡人と非凡人!?
乗用車に限らず軽自動車の世界も、ヒト&モノが積めるミニバンのパッケージングに席巻された21世紀初頭のジャパニーズマーケット。そこに2002年6月、一筋の光明(?)ともいえる2シーターのオープンカーが登場した。市場も待ってましたとばかりに反応、当初の月販目標500台をかるく上まわり、発売開始から9カ月が経った2003年3月現在の累計販売台数は1万台に及んだ。月平均1000台前後売れているワケだ。
リポーターは大阪のコペンの専用工場「エキスパートセンター」を訪れたことがあるが、そこのセンター長は「ライン構築を失敗しましたわ。受注台数を低く見積りすぎて……」と、口では悔しがっていたけど、目は笑っていた。
このご時世にコペンのようなクルマが迎え入れられた大きな要因は、約150万円のクルマの屋根が電動で開閉できることだろう。それでなくても「前から見ても後ろからみても一緒」みたいな丸っこくて愛らしいスタイリングは、万人受けする。そこへもってきて、屋根がウィーンと電動で開き始めたら、普段はSLKの助手席でスカしてるお姉ちゃんをして「スゴイ!」言わしめる!?。
ただ、今回リポートするのは、電動開閉式ルーフを持った「アクティブトップ」仕様ではなく、「ディタッチャブルトップ」仕様のコペンだ。樹脂製ルーフの採用により30kgの軽量化、そしてリアにはスポイラーが標準装備されたコペンのホット(?)モデルである。
価格は「アクティブトップ」も「デタッチャブルトップ」も同じ。コペンのアイデンティティともいうべき「アクティブトップ」を排し、この「デタッチャブルトップ」を選ぶ人間は、ある意味相当な物好き……じゃなかったエンスーの証でしょう。凡人のリポーターなら迷わず「アクティブトップ」を選びますが……。
![]() |
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年6月19日に発表された、ダイハツの2シーターオープンスポーツ。オリジナルは、1999年に開催された、第33回東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「コペン」である。フロントに横置きされるエンジンは、0.66リッター直4DOHCターボ・インタークーラー付き(64ps/6000rpm、11.2kgm/3200rpm)。5段MTもしくはレバーの前後でシフトできる「スーパーアクティブシフト」付き4段ATを介して、前輪を駆動する。目玉は、軽自動車として「世界初採用」の電動格納式ハードトップを備えること。スイッチを押せば、約20秒で開閉が完了する。2002年9月に、テスト車の「ディタッチャブルトップ」仕様が追加された。
(グレード概要)
グレードは、電動格納式ハードトップ付きの「アクティブトップ」仕様と、それをはぶいて30kg軽量化し、かわりに樹脂製の着脱式トップを備える「ディタッチャブルトップ」仕様の2つ。MT/AT間の装備の違いは、フロントLSDがMTモデルにのみオプション設定されることくらい。価格は、トランスミッション形式、仕様にかかわらず、149.8万円となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ&装備)……★★★
“軽”らしからぬ質感が漂うインテリア。15万円払ってレザーパックにしようものなら、MOMO製の本革ステアリングホイール、本革スポーツシート、シートヒーターがもれなくついてきて、さらにワンランク上の車内空間ができあがる。
プレスリリースには「ブラックカラーを基調に、メタリック感のある装飾をポイントとして施し、スポーティ感と高品質感を実現」とある。三連メーターを縁取るメタリックにはその効果を認めるものの、シフトノブのメタルはいただけない。握った感触はまるで「ガチャガチャ」で出てくるあの丸いプラスチックケースのようだから。
オーディオ、エアコンなど各種のボタン&ツマミのレイアウトは、ドライバーの動線を大幅に乱すことなく操作が可能で使いやすい。
(前席)……★
★の少なさは、ひとえにリポーターの身長に起因する。身長180センチオーバーの人間にはヘッドクリアランスが皆無なのだ。常に頭がルーフに触れている状態となる。シートは「スポーツシート」と謳っているだけあって、適度なサポート性を有す。ただし、乗り心地はかなりつらい(詳細は後ほど)。シートポジションはテレスコピック&チルト機構がよく働き(!?)、しつこいようですが180センチ以下の人ならベストのドライビングポジションをつくり出せるだろう。調節はすべて手動。
シフト(MT)はストロークが短く、コリッコリッと心地よく入る。また、ドアポケット、カップホルダーなど必要にして十分な収納スペースも確保されている。
(荷室)……★★★★
屋根が荷室を占領してしまうアクティブトップのモデルと違って、このディタッチャブルトップのモデルはいつも広々と(?)使用できる。とはいえ、トランクスペースは凹凸が多く、カタログでもゴルフバッグひとつがようやく積める様子を伝えている程度だ。ちなみにアクティブトップのモデルの場合、オープンにした状態での荷室はCDを数枚積んだらそれでおしまいとなる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
フロント横置きの直4ツインカムターボは、「ヒューン」と過給エンジンらしい音をともなって、上までよく回る。「レブリミットの8500rpmまでストレスなく」といいたいとこだが、6500rpmあたりからはエンジンの「咆哮」が「呻き」に変わる。2000rpmで最大トルク(11.2kgm)の90%を発生し、車重800kgの軽さとあいまって、料金所ダッシュなんぞは滅法強い。さらに専用にクロースレシオ化&ショートストローク化された5MTにより、実に小気味よい加速を体感できる。高速道路では64psという非力さを感じさせず、あれよという間にリミッターが効き始めるので気を付けたい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
前後のサスペンションは他のダイハツ車とも共通だが、専用にチューニングが施され、足まわりはビシッと堅められている。そのため、乗り心地はお世辞にもいいとはいえない。ゴツゴツと路面の段差を“惜しげもなく”拾うのだ。繋ぎ目の段差が連続する首都高3号線などではドライバーは終始、“縦ノリ状態”と化す。
逆にいえばドライバーにロードインフォメーションをダイレクトに伝えるクルマともいえ、コーナリング中もタイヤの限界が手に取るようにわかる。そして早々に訪れるその「限界感」が、ドライバーの「スポーティ感」を適度に高揚させてもくれる。
最後に蛇足をひとつ。ディタッチャブルトップを取り外すには、車内4か所のロックレバー、トランク内3か所のコネクターを外さなければならない。これはたいした手間ではないが、その後のルーフを持ち上げたり、はめたりするのが面倒。しかも、それを独力でやるとなると、かなり骨の折れる作業だ。
(写真=峰昌宏)
![]() |
【テストデータ】
報告者:NAVI谷山武士
テスト日:2003年4月14日から16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:6100km
タイヤ:(前)165/50R15 73V(後)同じ(ブリヂストン・ポテンザRE040)
オプション装備:Gパック(プロジェクター式ディスチャージヘッドランプ、2DIN CD/MD・AM/FM付ステレオ+フロント2スピーカー、イモビライザーシステム)(10.0万円)/フロントスーパーLSD(3.0万円)/エアロディフレクター+ロールバー(2.0万円)/ボディカラー特別設定色(3.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

谷山 武士
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
NEW
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
NEW
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。 -
BMW M2(後編)
2025.10.16谷口信輝の新車試乗もはや素人には手が出せないのではないかと思うほど、スペックが先鋭化された「M2」。その走りは、世のクルマ好きに受け入れられるだろうか? BMW自慢の高性能モデルの走りについて、谷口信輝が熱く語る。