第11戦ハンガリーGP「メルセデスの優位性とリカルドの覚醒」【F1 2014 続報】

2014.07.28 自動車ニュース
ハンガリーGPを制したレッドブルのダニエル・リカルド(右から2番目)。フェラーリのフェルナンド・アロンソ(一番左)は2位、メルセデスのルイス・ハミルトン(一番右)はピットスタートから3位表彰台にのぼった。(Photo=Red Bull Racing)
ハンガリーGPを制したレッドブルのダニエル・リカルド(右から2番目)。フェラーリのフェルナンド・アロンソ(一番左)は2位、メルセデスのルイス・ハミルトン(一番右)はピットスタートから3位表彰台にのぼった。(Photo=Red Bull Racing)

【F1 2014 続報】第11戦ハンガリーGP「メルセデスの優位性とリカルドの覚醒」

2014年7月27日にハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第11戦ハンガリーGP。何かと不運続きのルイス・ハミルトンがまたも予選でトラブルに遭ったため、おおかたがポイントリーダーでポールシッターのニコ・ロズベルグのクルージングを予想したに違いない。しかしレースでは、天候の急変とセーフティーカー導入で番狂わせが起き、タイトルを争うメルセデスの2人は再び激しく火花を散らすこととなった。

直前に降った雨のため全車ウエットタイヤを履いてスタート。トップでターン1を目指すポールシッターのニコ・ロズベルグ(先頭)、バルテリ・ボッタス、セバスチャン・ベッテルらが続いた。(Photo=Red Bull Racing)
直前に降った雨のため全車ウエットタイヤを履いてスタート。トップでターン1を目指すポールシッターのニコ・ロズベルグ(先頭)、バルテリ・ボッタス、セバスチャン・ベッテルらが続いた。(Photo=Red Bull Racing)
レース終盤を盛り上げたリカルド。フレッシュタイヤを武器に残り4周でハミルトンを、翌周にはアロンソを追い抜き、トップでチェッカードフラッグを受けた。(Photo=Red Bull Racing)
レース終盤を盛り上げたリカルド。フレッシュタイヤを武器に残り4周でハミルトンを、翌周にはアロンソを追い抜き、トップでチェッカードフラッグを受けた。(Photo=Red Bull Racing)

■前半戦、2本の“銀の矢”の軌跡

全19戦で争われる2014年のF1は、前戦ドイツGPを終えて折り返しを過ぎた。開幕前からの評判通り、メルセデスが圧倒的な速さでライバルを引き離した前半戦だったが、それでもシーズンが“死ななかった”のは、この最速マシンを操る2人のドライバー、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンによる、激しいタイトル争いのおかげである。

ドイツまでの10戦の、2人の戦績を比べると以下のようになる。

●ロズベルグ
ポイント:190点(ランキング1位)
優勝:4回
ポールポジション:5回
ファステストラップ:3回
リタイア:1回

●ハミルトン
ポイント:176点(14点差の2位)
優勝:5回
ポールポジション:4回
ファステストラップ:3回
リタイア:2回

第2戦マレーシアから破竹の4連勝を達成したハミルトンだったが、メカニカルトラブルによる2回のリタイアがポイント差に響いている。そして意外なのが、GP随一の速さを誇る2008年チャンピオンが、予選で苦しんでいることだ。5月のスペインGPを最後に遠ざかっているポールポジションの数はロズベルグより1回少ない上に、予選順位も6対4でチームメイトに負け越している(昨季は11対8で勝ち越し)。
第7戦カナダ(ロズベルグに次ぐ予選2位)、続くオーストリア(予選9位)とイギリス(同6位)では自らのミスでグリッド順位を落としており、そのキャッチアップ策を取らなければならなかった。

一方のロズベルグは、開幕戦での勝利&ハミルトン無得点でポイントリーダーに立ったものの、旧知の仲でもある宿敵ハミルトンの連勝で25点あった貯金がマイナス3点になってしまった。それでも地元モナコで(予選でハミルトンのアタックを邪魔したといわれながら)起死回生の2勝目を挙げ、オーストリア、ドイツと勝ち星を拾ってきた。第9戦イギリスではギアボックストラブルで今年唯一のリタイアを喫したが、それ以外はすべて2位以上でフィニッシュ。“勝てなくともしぶとく戦える”クレバーなドライバーは、したたかにポイントを集めている。

このままシルバーアローを駆る2人が最後まで覇を競い合うことは想像に難くないが、今年から、最終戦に限って適用される「ダブルポイント」というオマケがついてくることも忘れてはならない。勝者への25点は50点に、2位に与えられる18点は36点にと、意図的に盛り上げるためにポイントが倍になる、各所で評判の悪い新ルールである。

抜きつ抜かれつ、両者の接戦がこのまま続いたとしても、第19戦アブダビGPの結果次第で“あっさりと逆転”……などというシナリオは、どうか勘弁していただきたいものだが。

アロンソは雨とセーフティーカーを味方につけ予選5位から躍進し、今年最高位フィニッシュとなる2位表彰台。ライフの短いソフトタイヤでレースの半分近く、32周を走り切るというギャンブルを見事成功させた。昨年5月に母国スペインで挙げた勝利以来、ポディウムの頂点に立っていないダブルチャンピオンだが、シーズン前半戦に苦しんだフェラーリに弾みをつける結果をもたらした。(Photo=Ferrari)

アロンソは雨とセーフティーカーを味方につけ予選5位から躍進し、今年最高位フィニッシュとなる2位表彰台。ライフの短いソフトタイヤでレースの半分近く、32周を走り切るというギャンブルを見事成功させた。昨年5月に母国スペインで挙げた勝利以来、ポディウムの頂点に立っていないダブルチャンピオンだが、シーズン前半戦に苦しんだフェラーリに弾みをつける結果をもたらした。(Photo=Ferrari)

■ハミルトン炎上、ロズベルグ今年6回目のポールポジション

2007年のデビューから7年間、ハミルトンはハンガリーGPで4勝、ポールポジションも4回記録している。ツイスティーでテクニカル、パーマネントコースとしては最も遅いハンガロリンクは彼の“庭”である。実際、今年も3回のフリー走行すべてでハミルトンがトップタイムをマークしており、誰もがポールに最も近い男と見ていたのだが、予選Q1セッション早々になんとハミルトンのメルセデスが燃料漏れで炎上、ピットロードでストップしてしまった。先週のドイツGP予選といい、過去の2回のリタイアといい、とにかく不運が続くハミルトンはピットからのスタートとなった。

さらにQ3を前に降った突然の雨に周囲は慌てふためいた。セッションが始まると同時に各車がドライタイヤで飛び出していったものの、アタック早々に先頭のロズベルグがグリップしない路面でコースオフ、直後にケビン・マグヌッセンのマクラーレンも曲がり切れず、こちらはウォールにしたたかにヒットして赤旗中断となった。

残り約10分のうちにコンディションは徐々に改善。変化する状況に誰が一番速やかに対応できるのか、最後のポール争いは白熱した。チェッカードフラッグ後にレッドブルのセバスチャン・ベッテルが最速タイムを更新、チャンピオン久々の予選1位かと思われたが、直後にロズベルグが0.466秒上回り、3戦連続、今年6回目のポールポジションを奪い去った。

2番グリッドに甘んじたベッテルだったが、過去10戦、チームメイトのダニエル・リカルドには予選成績で3勝7敗と負け越していただけに、レースに向けて期待が持てる一発だった。
予選3位は3戦連続表彰台と波に乗るウィリアムズのバルテリ・ボッタス。リカルドは4番手に収まり、その後ろにはフェラーリのフェルナンド・アロンソ、ウィリアムズのフェリッペ・マッサ、マクラーレンのジェンソン・バトン、トロロッソのジャン=エリック・ベルニュ、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグが並び、ノータイムのマグヌッセンは10番手だがマシン修復のためピットレーンスタート。トロロッソのダニール・クビアトがトップ10最後のポジションに収まった。

2014年シーズンの話題を総ざらいにしているメルセデスのロズベルグ(右)とハミルトン(左)。ランキング2位のハミルトンにはまたしても予選でトラブルが起きピットスタートという大きなハンディキャップがついたものの、レースではランキングトップでポールシッターのロズベルグの前、3位でゴールしたのだから勝負は分からないものだ。今回もハミルトンがチームオーダーを無視したりロズベルグを強引に抑えたりとレースを盛り上げ、両者のポイント差は14点から11点に縮まった。(Photo=Mercedes)
2014年シーズンの話題を総ざらいにしているメルセデスのロズベルグ(右)とハミルトン(左)。ランキング2位のハミルトンにはまたしても予選でトラブルが起きピットスタートという大きなハンディキャップがついたものの、レースではランキングトップでポールシッターのロズベルグの前、3位でゴールしたのだから勝負は分からないものだ。今回もハミルトンがチームオーダーを無視したりロズベルグを強引に抑えたりとレースを盛り上げ、両者のポイント差は14点から11点に縮まった。(Photo=Mercedes)

■ロズベルグ順調にリードするも、セーフティーカーでポジションダウン

自身は最前列スタート、最大のライバルははるか後方、そしてここは抜きにくいハンガロリンク。ロズベルグがレースで無理をする必要はなかった。しかし決勝直前に一瞬雨粒がコース一部をたたいたとなると不確定要素ががぜん増し、圧倒的不利なハミルトンにもかすかな望みが芽生えていた。実際、レースは予想外の展開を見せることになる。

雨はやんでいたものの全車浅溝の雨用インターミディエイトタイヤを履いてスタート。ぬれ気味のターン1に先頭で飛び込んだのはロズベルグ、2番手にボッタス、ベッテルはポジションを守れず3位に落ち、アロンソは1つ順位を上げ4位につけた。一方ピットからスタートしたハミルトンは早々にスピン&コースアウトし、出だしからつまずくことに。それでもハミルトンは70周レースの4周目に17位、6周目15位、8周目13位と着実にポジションアップを果たしていた。

そんな中、ケータハムのマーカス・エリクソンがターン3でクラッシュしたことでセーフティーカーが導入され、レースは別のフェーズへと突入していった。

各車がドライタイヤへの変更に踏み切ったのだが、順調にトップを快走していたロズベルグをはじめボッタス、ベッテル、アロンソの先頭集団は、セーフティーカーが入ったタイミングが悪く、他車より1周遅れてピットインをせざるを得なかった。
14周目に再スタート。1位にリカルド、2位バトン(インター)、3位マッサと続き、ロズベルグは4位、ベッテル7位、アロンソ8位、ボッタス11位とそれぞれ順位を落とし、ハミルトンはまだポイント圏外の13位を走行していた。

苦しむフェラーリの中でもひときわ厳しい戦いを強いられてきたキミ・ライコネン(写真前)。ハンガリーでもチームの判断ミスで予選Q1敗退と不運に見舞われたものの、16番グリッドから徐々に挽回し、今季最上位となる6位入賞を果たした。(Photo=Ferrari)
苦しむフェラーリの中でもひときわ厳しい戦いを強いられてきたキミ・ライコネン(写真前)。ハンガリーでもチームの判断ミスで予選Q1敗退と不運に見舞われたものの、16番グリッドから徐々に挽回し、今季最上位となる6位入賞を果たした。(Photo=Ferrari)
過去10戦、チームメイトのリカルドには予選成績で3勝7敗と負け越していたベッテル。今回はリカルドより前の2番グリッドを得てレースに臨み、序盤こそ優勝を狙えるポジションにいたものの、中盤に360度スピンを披露してしまい脱落。リカルド優勝の陰で、7位でチェッカードフラッグを受けた。既に2勝を挙げているチームメイトに対し、チャンピオンは未勝利でいる。(Photo=Red Bull Racing)
過去10戦、チームメイトのリカルドには予選成績で3勝7敗と負け越していたベッテル。今回はリカルドより前の2番グリッドを得てレースに臨み、序盤こそ優勝を狙えるポジションにいたものの、中盤に360度スピンを披露してしまい脱落。リカルド優勝の陰で、7位でチェッカードフラッグを受けた。既に2勝を挙げているチームメイトに対し、チャンピオンは未勝利でいる。(Photo=Red Bull Racing)

■終盤の接近戦、残り3周でリカルドがトップに

23周目にセルジオ・ペレスがメインストレートでクラッシュ、2度目のセーフティーカーが出動すると、また戦況が変わることになる。

トップのリカルド、2位マッサらが再びピットへ飛び込む一方でコースにとどまるドライバーもおり、さまざまな作戦が入り乱れることに。27周目に再々スタートが切られると、1位はピットに入らなかったアロンソ、2位ベルニュ、3位ロズベルグ、4位ベッテル、5位にはハミルトンが顔を出し、6位にリカルドというオーダーとなった。

38周目、1位アロンソは最後のタイヤ交換を実施し、2ストップで、しかも速いがライフが短いソフトタイヤで走り切る賭けに出た。

その後、再びリカルドがトップに立ち、2位アロンソ、3位ハミルトン、4位ロズベルグという上位陣となったのだが、ストラテジーが違うリカルドとロズベルグはもう1回タイヤを換える必要があった。
ハミルトンに迫るロズベルグ。チームはもう1回ストップを残すロズベルグを先に行かせるようハミルトンに無線で再三指示を出したが、いくら作戦的に有利な状況にあるとはいえ、ハミルトンは最大のライバルに道を譲ることをしなかった。

リカルドは55周目、ロズベルグはその2周後に3度目にして最後のタイヤ交換を済ませると、1位アロンソ、2位ハミルトン、3位リカルドというトップ3がそろい、レースはいよいよクライマックスを迎えることになった。

アロンソはソフトタイヤでロングランを続けており、周回を重ねるごとにつらくなる一方。ハミルトンはミディアムだが2ストップで楽はできない。そこに3ストップでフレッシュなソフトタイヤを履くリカルドが猛追をしかけてきたのだから、2人のチャンピオン経験者にとっては厳しい戦いだった。
残り4周でハミルトンを抜いたリカルドは、照準を優勝に合わせ、翌周にはアロンソをも駆逐し、とうとう首位の座を奪還することに成功したのだった。

2位に落ちたアロンソにとってラッキーだったのは、後ろのハミルトンが防戦にまわってくれたことだ。最後のタイヤ交換で7位まで落ちたロズベルグはハイペースで飛ばし、4位まで挽回。宿敵ハミルトンを抜かんと、ファイナルラップで勝負に出たが、ハミルトンは強引にチームメイトを押し出しポジションを守ったのだった。

初優勝したカナダGPといい、今回といい、荒れたレースで強さを発揮するリカルドが自身2勝目を記録した。シーズン前半戦、メルセデスの圧倒的な優位性に加えて特筆すべきトピックは、今年からレッドブルに入ったこのオーストラリア人ドライバーの覚醒であろう。
そしてロズベルグ対ハミルトンの激しい覇権争いは、11点というポイント差で後半戦に持ち越された。

サマーブレイクに突入したF1。次の第12戦ベルギーGP決勝は、約1カ月後の8月24日まで待たなければならない。

(文=bg)

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