最終戦ブラジルGP「激闘の20戦、僅か3点差で決着」【F1 2012 続報】

2012.11.26 自動車ニュース
最終戦ブラジルGPを6位で終えたことで、3年連続ドライバーズチャンピオンとなったレッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真中央)。既にコンストラクターズタイトル3連覇を決めていたチームのクルーたちと喜びを分かち合った。(Photo=Red Bull Racing)
最終戦ブラジルGP「激闘の20戦、僅か3点差で決着」【F1 2012 続報】

【F1 2012 続報】最終戦ブラジルGP「激闘の20戦、僅か3点差で決着」

2012年11月25日、ブラジルのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1世界選手権第20戦ブラジルGP。セバスチャン・ベッテル対フェルナンド・アロンソ、13点を挟んでのプレッシャーのかかったワールドチャンピオン決定戦では、不安定な空模様に左右されながら好勝負が繰り広げられた。アロンソはタイトル獲得の必須条件であった表彰台をクリアし2位でフィニッシュ。一方のベッテルは最後尾からの追い上げにより6位でゴールし、最年少トリプルワールドチャンピオンとなった。二人のポイント差はわずかに3点だった。

今年最後の表彰台に立ったドライバー。マクラーレンのジェンソン・バトン(写真左から3番目)は難しいコンディションで今季3勝目をあげた。タイトル獲得の必須条件である表彰台を確保、2位でフィニッシュしたフェラーリのフェルナンド・アロンソ(同一番左)は、3点差で栄冠まであと一歩のランキング2位。今季前半になかなか結果が残せなかったフェリッペ・マッサ(同一番右)はファイナルレースで好走をみせ、チームを助けながら3位完走。母国ファンの前で復活をアピールした。(Photo=Ferrari)
最終戦ブラジルGP「激闘の20戦、僅か3点差で決着」【F1 2012 続報】

■最終戦決戦の難しさ

まれにみる混戦状態で幕を開けた2012年シーズンの最終戦は、ワールドチャンピオン決定戦。3連覇に王手をかけたポイントリーダー、レッドブルのセバスチャン・ベッテルと、2006年以来のタイトル獲得を目指すフェラーリのフェルナンド・アロンソ、ともに3度目の戴冠を狙う2人のトップドライバーによる一騎打ちとなった。

ここまでの19戦で273点を手に入れているベッテルに対し、アロンソは13点ビハインドの260点。ベッテルがチャンピオンになるための条件は、アロンソの結果に関わらず、とにかく4位以内でゴールすることだった。
一方のアロンソは、表彰台にのぼることが必須条件で、優勝の場合はベッテル5位以下、2位ならベッテル8位以下、3位だとベッテル10位以下でチャンピオンになれる計算だった。

ポイントテーブル上はベッテルが圧倒的に優位なポジションにいたのだが、実はこの二人、まったく逆の立場で2010年最終戦アブダビGPを戦い、15点差のランキング3位だったベッテルが、タイトルに最も近かったアロンソを首位の座から引きずり下ろし逆転王者になったという過去がある。この時フェラーリは、8点差でランキング2位だったマーク・ウェバーのレッドブルに気を取られるあまり戦局を見誤り、敗退したのだった。

スクーデリアは、2008年最終戦でもフェリッペ・マッサがマクラーレンのルイス・ハミルトンに目前でタイトルを奪われるという屈辱を味わったが、その前年のファイナルレースでは、フェラーリに移籍してきたばかりのキミ・ライコネンが、ハミルトン、アロンソを飛び越え、まさかの初タイトル獲得という番狂わせを演じたこともあった。

つまり、タイトルがかかったシーズン最後の大一番というものは、下馬評通りにいかないことが少なくないということである。

今年の王座決定戦までの二人の軌跡をたどれば、今季後半にマシンのポテンシャルとともに覚醒し、4連勝して一気にポイントリーダーまでのぼりつめたベッテルと、開幕前からの絶不調から何とか身を持ち直すも、最速ではないマシンでだましだまし走り、隙あらば勝利してコンスタントにポイントを稼いできたアロンソという対照的な戦い方がみえてくる。過去19戦でベッテルは5勝しポディウム10回、対するアロンソは3勝、表彰台は12回を数える。

アロンソが7月の第10戦ドイツGP以来勝ちに恵まれていないことを考えると、最終戦でベッテルが持つ13点のアドバンテージは盤石にもみえたが、しかしここはブラジル、サンパウロ。標高約800mの高地は天気予報士が無能にみえてしまうほど空模様が読みにくく、雨が降ればレースも荒れがちになり、そしてウエットとなればアロンソのテリトリーに入る。

アロンソは雨で混乱した第2戦マレーシアGPで優勝、やはり雨がらみの予選となった第9戦イギリスGP、次のドイツGPでは2連続ポールポジションを決めると、それぞれ2位、優勝というリザルトを残していた。

いくらポイントでリードしていても、最後の最後で不測の事態が起きれば取り返しがつかない。「失うものはない」と言い切るのは追う立場のアロンソ&フェラーリ。彼らの手には攻める以外の術はないからだ。だがベッテルは、勝利への希求の念と守勢への誘惑のはざまで戦わなければならない。

最終戦決戦はかくも難しい。ゆえにこの難題を克服した者は真の世界王者としてたたえられる。史上最多20戦で争われた2012年シーズンのフィナーレは、当代きっての2人のトップドライバーによる、手に汗握る好勝負が繰り広げられた。

「失うものは何もない」という決意を胸に、13点ビハインドで決戦にのぞんだ7番グリッドのアロンソ(写真手前)は、スタートの蹴りだしが悪かったレッドブル勢に襲いかかり、早々に表彰台圏内にジャンプアップ。栄冠への意気込みが伝わるスタートとなった。(Photo=Ferrari)
最終戦ブラジルGP「激闘の20戦、僅か3点差で決着」【F1 2012 続報】

■マクラーレンが最前列グリッド、レッドブル2列目、フェラーリは……

快晴の金曜日から徐々に天候が崩れ、土曜日の予選開始時点では軽い雨が路面をたたく程度だったが、トップ10グリッドを決めるQ3になるとコンディションは好転していた。このセッションを席巻したのはマクラーレンの2台。このレースを最後に“ホーム”を離れ来季はメルセデスのドライバーとなるハミルトンが僚友バトンを抑え、今年7回目、自身通算26回目のポールポジションを獲得した。マクラーレンの最前列独占は通算62回目で、史上最多記録が更新された。

2列目はウェバー3位、ベッテル4位。レッドブルにマクラーレンを脅かすほどの速さはなく、タイトルのかかった一戦、雨が予報される決勝を前に、ベッテルは絶好のスタート位置を得られなかった。

前戦アメリカGPでの好調さをキープし、フェラーリのマッサが5番グリッドにつけた。チャンピオンシップ・コンテンダーのもう一人、アロンソはといえば8番手タイムどまり。(チームメイトを除き)ベッテルとの間には、ウィリアムズのパストール・マルドナド、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグが割って入ったが、重量測定を無視したマルドナドには累積警告で10グリッド降格のペナルティーが科され、アロンソのグリッド位置は7番目へと繰り上がった。

ライコネンのロータスが8番グリッド、ニコ・ロズベルグのメルセデス、フォースインディアのポール・ディ・レスタがトップ10を締めくくった。

4番グリッドからターン1までに7位に落ちたベッテル。直後にブルーノ・セナに追突されると180度スピンを喫しまさかの最後尾に。しかしタイトル防衛に燃えるベッテル&レッドブルは、天候、路面状況が刻々と変わる難しいコンディションで見事な挽回をみせ6位完走。アロンソに3点差をつけ連覇を達成した。(Photo=Red Bull Racing)
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■ベッテル、スタート早々に180度スピン、最後尾に

レースデイに空を覆った雲は雨気たっぷりで流れていき、約束していた滴を気まぐれに地上に落とした。
コースの一部で軽い雨が降っていたものの、全車ドライタイヤを履いてスタート。マクラーレンの2台が順当にグリッドを離れてターン1に飛び込むと、その後方では2列目のレッドブルの蹴りだしが悪く、その隙を突いてフェラーリがチャンピオンチームに襲いかかった。

ターン1までの短い距離で7位に落ちたベッテルは、中位集団に巻き込まれてしまう。ブルーノ・セナのウィリアムズに追突されたレッドブルはストレートエンドで180度スピン。この接触でセナとセルジオ・ペレスは0周リタイアとなったが、不幸中の幸い、ベッテルはマシン後部にダメージを負ったものの走行可能で、最後尾からレースを組み立てることになった。

オープニングラップは1位ハミルトン、2位バトン、3位マッサ、そして4位にアロンソ。71周の2周目、アロンソが3位に上がると、状況はいよいよフェラーリに味方をし始めた。

しかし5周目にはアロンソがコースオフし、ヒュルケンベルグに3位の座を奪われてしまう。ウェバーもスピンを喫するなど、ぬれた路面をドライタイヤで攻めるのは難しくなってきていたのだ。10周を過ぎ、ウェバー、ハミルトン、アロンソ、既にポイント圏内まで挽回していたベッテルらはピットに飛び込み、軽い雨用のインターミディエイトタイヤを選択した。

レース序盤、ドライタイヤのままトップ快走を続けた2台。フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグ(写真前)は、2010年にウィリアムズでポールポジションを獲得したブラジルでトップを力走したが、雨で滑り、優勝を争っていたルイス・ハミルトンのマクラーレンに追突。ドライブスルーペナルティーを受けながら5位で完走した。ハミルトンはリタイアせざるを得なかったが、僚友のバトンが1位の座を守り切り最終戦で勝利した。(Photo=Force India)
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■フォースインディア&ヒュルケンベルグの好走

一方でドライタイヤのまま走り続けたのがバトンとヒュルケンベルグだった。この2台は40秒のマージンを築きレースをコントロールするのだが、意外にも好ペースで周回を重ねるフォースインディアは19周目にマクラーレンを抜き、ヒュルケンベルグが1位のポジションに躍り出た。
抜きんでた二台のアドバンテージは、23周目から29周目、路面に散らばったマシンの破片をクリアするためにセーフティーカーが入ったことで帳消しとなった。

レースが再開すると、ヒュルケンベルグがトップをキープ。フロントタイヤのグレイニング(ささくれ)に悩まされていたバトンをハミルトンが抜き、2位からフォースインディアを追った。そして雨脚が強くなった48周目、ヒュルケンベルグは一瞬マシンの挙動を乱し、ついにハミルトンが首位奪還に成功した。

だが55周目、再びトップに返り咲かんとターン1で仕掛けたヒュルケンベルグはハミルトンにヒット、マクラーレン最後のレースでハミルトンはリタイアとなり、ヒュルケンベルグはこの接触の責任を問われドライブスルーペナルティーを受けることとなった。

伝説のドライバーの最終章。308戦目、現役最後のレースを13番グリッドからスタートしたメルセデスのミハエル・シューマッハー(写真右)は、2007年チャンピオンのキミ・ライコネン(同左)と激しいポジション争いを繰り広げるなどし7位入賞を果たした。レース後には同じドイツ出身のベッテルに歩み寄り3連覇の偉業をたたえた、7度ワールドチャンピオンになったレジェンドは、最後の一年をランキング14位で終え、今度こそGPドライバーとしてのキャリアに終止符を打った。(Photo=Mercedes)
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■アロンソ2位、ベッテル6位、3点差でベッテル3連覇達成

残すところ10周あまりとなり、1位に戻ったバトン、2位マッサ、そしてアロンソは3位。ベッテルはといえば、52周目にドライのミディアムタイヤ、2周後にはインターミディエイトとタイヤの選択でバタバタしたものの、7位を走っていた。

62周目、当然マッサはチームリーダーに進路を譲り、アロンソは2位。アロンソのタイトル獲得にはベッテル8位以下という条件がつくが、直後にレッドブルのエースは、母国ドイツの伝説、ミハエル・シューマッハーをオーバーテイクし6位に上がっていた。69周目、フォースインディアのディ・レスタがマシンをウォールにヒットさせ、2度目のセーフティーカー出動となると、徐行走行のままレースは静かにチェッカードフラッグを迎えた。

アロンソ2位、ベッテル6位で281点対278点。相克する二大ドライバーの勝負は、わずか3点差で決着をみた。過去2年とは違い、守る立場からタイトルを目指したベッテルは、「もっともタフなレースだった」とレース後に振り返った。13点のアドバンテージ、目まぐるしく変わる天候にタイヤ選択、まさかの最後尾からの追い上げ、ライバルの動向、抱えるには多く重すぎるほどの難題に立ち向かったベッテルは「本当に難しかった。どのように落ち着いてトライしようと言うんだい? とにかくプッシュにプッシュを続け、カムバックしようとしたんだ」。

数々の最年少記録を保持する25歳のドイツ人ベッテルは、ここに最年少トリプルワールドチャンピオンというレコードを加えた。

最終戦でも小林可夢偉(写真右)の活躍が光った。14番グリッドからオープニングラップで10位、そしてセーフティーカー後の再スタートではレッドブルの2台をずばっと抜き5位、さらに4位まで順位を上げた。しかしレース残り2周となった時点で、7位シューマッハーを抜こうとしてスピン、結果9位入賞。この週末、ザウバーは来季のドライバーズラインナップを発表しており、そこに小林の名前はなかった。最終戦でのポイント献上と3年間の業績に、チーム代表のモニシャ・カルテンボーン(同左)は笑顔で応えた。今季入賞9回、日本GPでは自身最高位の3位を決め、ドライバーズランキングは12位だった。2013年に小林が収まるシートは未定である。(Photo=Sauber)
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■敗れたアロンソの「強さ」と「質」

負けたフェラーリは、アロンソ、マッサがそろってポディウムに上がった。31歳のスペイン人アロンソは、2010年シーズンと同じくベッテルに次ぐランキング2位。レース後に口を開いたアロンソは、「最高のチャンピオンシップだった」と激闘の一年を締めくくった。

思うように進化しないマシンで長期にわたりチャンピオンシップをリードできたのは、レースでの圧倒的な安定感だった。20レースを戦ってのアロンソの平均予選順位は6.1位、決勝順位は2.95位。開幕時にはトップから1秒以上離されていたマシンに鞭を打ち、何とか表彰台に食い込み、フィニッシュしたレースでは常にポイントを稼いできた。だがシーズン終盤のベルギーGP、日本GPの、スタート直後のもらい事故による無得点が結果的に大きく響いたかたちとなった。

それでも100%チャンピオンになると最後まで言い続け、チームを鼓舞してきたアロンソは、この歴史と栄光に彩られた唯一無二の集団を率いる「強さ」と「質」を世に知らしめたといっていい。2年前のアブダビでみせた敗者の顔は、チームやファン、スポンサーまでも背負って立つ、精悍(せいかん)な指揮官の顔に変貌していた。スクーデリアの未来は、このスペイン人に託されている。そう印象づける今シーズンだった。

2013年のF1は、3月17日のオーストラリアGPで開幕、全19戦が予定されている。さらなる激闘を前に、GPはしばしの間、ウィンターブレイクに入る。

(文=bg)

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