イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に

2011.03.18 自動車ニュース
博物館の展示から。1951年「159グラン・プレミオ」。
イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に

イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に

イタリア・ミラノ郊外アレーゼにある「アルファ・ロメオ博物館」が、2011年2月7日から休館している。

1952年「C52ディスコ・ヴォランテ」と1960年「ジュリエッタSZ」。
イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に
1951年の「AR51マッタ」。
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1954年の前輪駆動試作車「ティーポ103」。
イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に

■謎の休館に「まさか?」の声

博物館による唯一の公式アナウンスは、「メインテナンスが終了するまで休館します。ご迷惑をおかけします」というものだ。だがこれまでの経緯と、1カ月経過した現在も工事業者の出入りがないことから、博物館自体の存続を不安視する声が上がり始めている。

これまでの経緯とは、以下のとおりだ。
伊フィアット・グループ・オートモービルズは2000年ごろから、アルファ・ロメオの旧生産工場であったアレーゼから段階的撤退を進めてきた。危機感をもった地元アレーゼ市は、2010年、事実上最後の施設である博物館のフィアットによる売却を阻止すべく、イタリア文化財省に博物館の保護を要請した。
それを受けて2011年1月31日、文化財省はアルファ・ロメオ博物館に法的措置を適用する方針を明らかにした。フィアットは博物館の所有権は維持できるものの、今後の改装、移転、収蔵品の売却には同省の認可が必要になるというものだ。

文化財省の決定に対して、フィアット側は2011年3月31日までに申し立てを行うことができるが、今のところ表立った動きをみせていない。
そうした中での“謎の休館”に、イタリアの自動車ファンの間では、もしや永久閉館ではないかとの憶測が飛ぶようになった。
アレーゼ市としては、なんとか閉鎖は避けたいところ。工場がなくなった今、街に活気を呼び戻せる可能性がある数少ない観光施設だからである。ただし、フィアットとしても歴史車両は悩みの種である。本社トリノからみれば、160km離れたアレーゼは“孤島”であり、管理運営が容易ではない。そもそもトリノには「フィアット」「ランチア」の膨大な歴史車両コレクションもあって、こちらは原則非公開の状態が続いている(注:フィアット歴史館は、イタリア統一150年を記念して2011年秋まで特別公開中)。アルファ博物館休館については明確なコメントは得られていないが、「コレクション維持による資金・人手不足の状態が続いている」と、あるフィアット歴史部門関係者は背景を語る。

自治体も文化財省も潤沢な資金的バックアップをする余裕はない。今回のアルファ博物館問題に限らず、イタリアでは民間文化財に関してよく発生する問題だ。そうしたなか、「博物館がコレクションの一部を米国に売却し、その資金をもとに存続を図るのではないか」とした情報も、イタリアの一部メディアで報じられ始めた。

筆者が聞いたイタリア人アルフィスタたちの意見はさまざまだ。「アルファはミラノの宝石。なんとしても地元で存続すべき」というコメントもあれば、「大衆車の会社・フィアットにコレクションの価値はわからない。いっそアルファ・ロメオ・ブランドが高級車を理解する外国企業に買収され、コレクションも別のかたちで保護されれば、そのほうがベター」という見解もある。

G.ジウジアーロによる1976年「アルファ・ロメオ ニューヨークタクシー」。
イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に
アルファ・ロメオ博物館と隣接する社屋。(2011年3月撮影)
イタリア「アルファ・ロメオ博物館」休館に

ところで博物館所在地のアレーゼとアルファ・ロメオの歴史は、ミラノ市内からアレーゼの新拠点に移転し始めた1963年から、量産車工場としての機能を終えた2000年代中盤までの約40年間である。1世紀にわたるアルファ・ロメオの歴史においては半分以下だ。博物館に関しては1976年12月の開館だから、今日まで約37年の歴史しかない。
筆者が考えるに、誰にも大きな資金的援助を仰がず、かつ収集品の四散を防ぐには、車両をトリノに集約して「フィアット」「ランチア」「アルファ・ロメオ」という今日のグループ的枠組みで効率的なコレクション創設を目指すのもひとつ選択肢であろう。そのためには、文化財省およびアレーゼ市の了解だけでなく、アルフィスタたちの理解も必要となる。

しばらくの間は、“走るイタリアの文化財”を収めたアルファ・ロメオ博物館の将来に関して、さまざまな議論が戦われそうだ。

(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

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