「アメリカン・ヒストリックカーショー&チャリティーオークション」の会場から
2012.11.14 画像・写真2012年11月11日、山梨県富士吉田市の富士Calm(カーム)で「アメリカン・ヒストリックカーショー&チャリティーオークション」が開かれた。昨年に続いて2回目となるこのイベントは、富士山が見下ろす、紅葉が始まった自然豊かな広場で古き良き時代のアメリカ車に囲まれ、日がな一日のんびりとクルマ談義でも楽しもうというものである。参加資格は1980年以前に生産されたアメリカ車またはアメリカ製エンジンを搭載した車両、およびそれらの継続生産車ということで、今回はおよそ120台が集まった。アメリカ車のイベントというと、カスタム系のカーショーを思い浮かべる向きも少なくないと思うが、このイベントはノーマル車およびそれに準じたモデルが大半を占める。中でもファンの間では「モパー」(Mopar)と呼ばれるクライスラー系、それもいわゆるマッスルカーが多いのも特徴である。また、イベント名にも冠しているとおり、チャリティーオークションも実施された。参加者は必ずオークションへの出展物を持参するという決まりで、その売り上げ25万円全額が、東日本大震災の影響で行き場がなくなってしまったペットの犬と猫を保護している団体に寄付された。当日は朝から雲の多い、いまひとつの天候だったが、アメリカ車とその愛好家が醸し出すおおらかな雰囲気に包まれていた会場から、印象に残ったモデルを紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

雪を頂いた富士山が見下ろす、すっかり黄色くなった芝生広場に集まった、およそ120台のアメリカン・ヒストリックカー。
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雪を頂いた富士山が見下ろす、すっかり黄色くなった芝生広場に集まった、およそ120台のアメリカン・ヒストリックカー。
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1963年「スチュードベーカー・アバンティ」。経営不振に陥っていたスチュードベーカーが、起死回生を狙ってこの年にリリースした、レイモンド・ローウィのデザインになる高級パーソナルカー。スチュードベーカーの倒産後は製造権を取得した会社によって「アバンティII」として長らく作り続けられたが、この個体は生産台数5000台以下といわれるスチュードベーカー製の、しかも初期型。それを3年間かけてフルレストアしたという、まさにコンクールコンディションの驚きの1台だった。
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1950年「フォード・カントリースクワイア」。前年に初の本格的な戦後型として登場した49年型フォードをわずかにフェイスリフトしたモデルだが、その49年型は量産車としては世界で初めてフラッシュサイドボディー(前後フェンダーが独立しておらず、ボディーサイドがツライチ)を採用していた。ウッドフレーム/パネルで飾られた「カントリースクワイア」は、3列シートで8人乗りのワゴン。ウインドシールドに付けられたバイザーとホワイトウォールタイヤがいい感じ。
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1955年「シボレー・ベルエア・2ドアハードトップ」。日本でも根強い人気のある「フィフティーズ」こと50年代のモデルは、今回は5、6台と少なめだった。シボレーの55〜57年型は、フィフティーズのなかでも王道を行く人気車である。
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1966年「ダッジA100ワゴン」。「フォルクスワーゲン・タイプ2」が北米市場でも人気を博したことから、それに対抗するコンパクトなキャブオーバーをビッグ3はそれぞれ開発した。「ダッジA100」はクライスラーが64年にリリースしたモデルで、当時のフルサイズ・ダッジと共通するイメージの、クロムのリングで縁どられたヘッドライトが特徴的。この個体は、まるで新車のように美しかった。
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1971年「シボレー・モンテカルロ」。「ポンティアック・グランプリ」とボディーシェルを共用するモデルとして70年に登場した、シボレー・ブランド初のパーソナルクーペ。サイズはインターミディエイト(中間サイズ)とはいえ、全長5.2m、全幅1.9m以上。おとなしいスタイリングだが、60年代半ば以降は下級モデル専用のようになっていたシングルヘッドライトを再び流行(はや)らせるきっかけとなった。
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1972年「ダッジ・コロネット」。インターミディエートのセダンをストリートレーサー風にセンスよく仕上げている。室内は「ベンコラ仕様」(ベンチシート+コラムシフト)のまま、というところがチャームポイント。日本車でいうなら、型式名C130こと2代目「日産ローレル」のセダンをローダウンして……といったところか。
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個性的なスタイリングを持つ1960年代のクライスラーのフルサイズ・ワゴン。左は62年「プリマス・サボイ」で、右は64年「ダッジ・ポラーラ」。顔つきには前出の「ダッジA100ワゴン」に通じるものがあると思うが?
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1972年「フォード・ランチェロ」。「シボレー・エルカミーノ」のライバルとなる乗用車ベースのピックアップ。そもそもは57年にフルサイズ・フォードをベースに生まれ、60年にはベースをコンパクトの「ファルコン」に変更、66年から生産中止となる79年まではインターミディエイトをべースに作られた。この個体は6世代目で、当時の「トリノ」をベースとしている。
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1978年「リンカーン・コンチネンタル・マークV」。全長5.8m、全幅2mを超える巨大な2ドアハードトップボディーに7.5リッターV8を積んだ、GMの「キャデラック・エルドラド」と並ぶフォードの最高級パーソナルクーペ。ちなみに大きさを誇ったのもこの世代までで、80年に登場した次の「マークVI」では全長5.6m弱、5.7リッターにダウンサイジングされ、さらに4年後の「マークVII」では全長5.2m弱、5リッターまで縮小される。
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ここからはモパー(クライスラー)のいわゆるマッスルカーを紹介しよう。ハコスカの兄貴のような雰囲気のこれは1969年「ダッジ・コロネットR/T」。「コロネット」は2/4ドアセダン、2ドアハードトップ、2ドアコンバーチブル、5ドアワゴンという幅広いラインナップをそろえる中間サイズのモデル。数年前に復活した「チャレンジャー」や「チャージャー」にも設定されていた「R/T」とは、「Road(公道)&Track(サーキット)」の略で、ダッジ伝統の高性能モデルのグレード名である。
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1969年「ダッジ・チャージャー R/T」。68年に2代目に進化した「チャージャー」に設定されたホットバージョン。V8エンジンは375hp(SAEグロス、以下同)を発生する4バレルキャブ仕様の440マグナム(7.2リッター)が標準で、オプションで425hpの426ヘミ(7リッター)が用意されていた。
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1970年「ダッジ・チャレンジャー R/T」。数年前にリメイク版が出た「チャレンジャー」は、「マスタング」や「カマロ」への対抗車種としてこの年にデビューしたスペシャルティーカーで、フルモデルチェンジした「プリマス・バラクーダ」とボディーを共用する。高性能グレードの「R/T」は数台参加していたが、このパープルの個体は390hpを誇る440シックスパック(7.2リッター)を搭載、スペシャルな426ヘミ搭載モデルを除けば最強バージョンである。
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1970年「プリマス・クーダ」。この年に世代交代した「バラクーダ」の高性能グレードが「クーダ」。新たにボディーを共用する「ダッジ・チャレンジャー」という兄弟車種も登場したが、この個体は前出の「チャレンジャー R/T」と同じ390hpの440シックスパック(7.2リッター)を積んだホットバージョンである。
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1970年「プリマス・ヘミ・クーダ」。「クーダ」のコンバーチブルだが、モパーのマッスルカーを語る際に外せない、「ヘミ」ことヘミフェリスカル(半球型)ヘッドを持つクロスフロー・ユニットを積んだスペシャルなモデル。ちなみに排気量は426立方インチ(7リッター)で、パワーは425hp。ショッキングピンクのような派手なボディーカラーも、「ムーランルージュ」という名のカタログカラーだそうだ。
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1971年「プリマス・ダスター340」。コンパクトカーの「バリアント」をベースにしたスポーティーな2ドアクーペが「ダスター」で、70年にデビュー。「ダスター340」は、サイドストライプや粗いグリルなどで派手に装ったボディーに275hpを発生する340立方インチ(5.6リッター)のV8を積んだハイパフォーマンスモデル。
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1969年「フォード・マスタング・マッハ1」。マッスルカーはクライスラーの専売特許というわけではなく、もちろんフォードやGMにも存在した。これはこの年にビッグマイナーチェンジを受けた初代「マスタング」に初めて設定された「マッハ1」(最近では原語の響きに近い「マック1」と表記するようだが)。この個体はホモロゲーション取得を目的とした「BOSS302/429」を除けば最強となる、335hpを発生する428コブラジェット(7リッター)を積んでいる。
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1968年「シボレー・シェベルSS396」。セダンからワゴンまで幅広いバリエーションを持つシボレーの中間サイズ「シェベル」の2ドアハードトップに、325hpを誇る396ターボジェット、もちろんジェットエンジンでもターボ付きでもなく、そういう名称の6.5リッターV8エンジンを積んだホットグレード。さらにオプションで350hp仕様も用意されていた。
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1969年「ポンティアックGTO」。ホモロゲーションモデルではなく単なる高性能モデルだが、「フェラーリ250GTO」からちゃっかりいただいた車名の響きのよさもあってか、64年にデビューした初代モデルは成功作となり、元祖マッスルカーとも呼ばれる「ポンティアックGTO」。これは68年に登場した2代目で、標準で366hp、オプションで370hpを発生する400立方インチ(6.6リッター)のV8を搭載。なお、ヘッドライトは当時流行したコンシールドタイプ(格納式)で、普段はグリルに隠れていて見えない。
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「フォード・マスタング」に対抗する「シボレー・カマロ」のポンティアック版として、1967年に登場したモデルが「ポンティアック・ファイアーバード」。そのホットバージョンが「トランザム」である。70年に2代目となったが、手前の黒は78年、奥のゴールドは80年のモデル。ボンネットに貼られた大きな火の鳥のデカールは、日本車にも模倣された。
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1961年「シボレー・コルベット」。アメリカ製TVドラマ『ルート66』で知られる……といっても、もはや通じないかもしれないが、そのドラマで有名になった61年型。「C1」と呼ばれる初代「コルベット」の最終年度より1年前のモデルで、283立方インチ(4.6リッター)のスモールブロックV8を搭載。
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1969年「シボレー・カマロRS」。「フォード・マスタング」の対抗馬として67年に登場した初代「カマロ」の最終型で、「RS」は「Rally Sport」の略である。エンジンは300hpを発生する350立方インチ(5.7リッター)のV8だが、望めば375psの396ターボジェット(6.5リッター)を積むこともできた。
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1964年「シボレー・シェベル・ワゴン」。この年にシボレー初のインターミディエイトとして登場した「シェベル」。中間サイズとはいえ全長5m以上、全幅1.9m以上だが、当時の「ベルエア」や「インパラ」といったフルサイズ・シボレーは全長約5.4m、全幅2m以上あった。
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1982年「シボレー・エルカミーノ」。前出の「フォード・ランチェロ」のライバルとなる乗用車ベースのピックアップ。59年に俗に「キャッツアイ」と呼ばれるテールランプを持つテールフィン全盛時代のフルサイズから派生。64年に登場した2代目からはインターミディエイトをベースにしていた。この個体も同時代の「マリブ」と同じ顔つきを持つ。
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1966年「ビュイック・リビエラGS」。GMのなかでキャデラックに次ぐポジションにあるビュイックの、フルサイズをベースとする高級パーソナルカーが「リビエラ」。63年に初代が誕生、66年にフルモデルチェンジした2代目は、流行(はや)り始めていたコークボトルライン(ドアからリアフェンダーにかけて、コークのボトルのような曲線を描く)を大胆に導入。360hpを発生する425立方インチ(7リッター)エンジンを積む。