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タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相

2025.12.03 デイリーコラム 工藤 貴宏
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タイから年間70万台を輸出

そうだ、タイへ行こう!

先日、新型「トヨタ・ハイラックス」がグローバル発表されたことでテンション上がり気味の筆者。なぜなら隠れハイラックスファンだからに決まっているじゃないですが。いてもたってもいられず一般向けの初お披露目の場となる「タイモーターエキスポ2025」という、タイの首都バンコク近郊で開催されたモーターショーへ出かけてきました。というわけでサワディカーッ。

どうしてタイかって? ハイラックスは日本での生産を終えてからタイが生産拠点となり、ピックアップトラック王国でもある国内需要を賄うだけでなく、ここから世界各地へ輸出。その数(タイからのハイラックスの輸出台数)は年間70万台にもなり、それはトヨタのタイ拠点から輸出される車両の7割を占めるというからすごい話すぎます。ハイラックスってそんなに売っているんですね。

また新型はタイの拠点を中心に開発されました。だからタイでワールドプレミアされ、一般向けの初公開となる場にもタイのモーターショーが選ばれたということなのです。

2025年11月10日にタイで世界初披露された新型「トヨタ・ハイラックス」。発表会では元横綱の白鵬 翔も登壇した。
2025年11月10日にタイで世界初披露された新型「トヨタ・ハイラックス」。発表会では元横綱の白鵬 翔も登壇した。拡大
筆者が新型「ハイラックス」と対面したのは2025年11月29日に開幕した「タイモーターエキスポ2025」の会場で。
筆者が新型「ハイラックス」と対面したのは2025年11月29日に開幕した「タイモーターエキスポ2025」の会場で。拡大
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ランボーからロボコップへ

というわけで「トラボ」というサブネームがついた実車を見てまず感じたこと。それはこれまでのアメリカのフルサイズピックアップトラックにも通じるいかにも野性的な力強さを体現したデザインから、先進感を覚える顔つきへと変化したということ。

「レボ」と呼ばれた従来モデルは大きなヘッドライトや大きく見せるグリルで古典的なワイルドさの体現だったのですが、新型はヘッドライトが細くなり、グリルが小型化されてバンパーに組み込まれ、デザインも直線基調となり端正に。どちらも力強いんだけど“筋肉モリモリの「ランボー」ではなく「ロボコップ」のようなスマートで先進的なたくましさ”といったところでしょうか。なんとも分かりにくい説明ですみません(笑)。

インテリアはより武骨感が強まった印象。その象徴がダッシュボードのデザインで、柔らかい曲線で構成して“乗用車感”を醸していた従来型とは対照的に新型は直線的で道具感を強調。「ランドクルーザー“250”」と同じ方向性といえば分かりやすいでしょうか。まさに質実剛健感ですね。

好みは分かれるでしょうけれど、筆者はこのトヨタの判断を支持したいと思います。

いっぽうで上級タイプのダッシュボードは表面にリアルステッチ入りのソフト表皮を張るなど上質感もしっかり高められていますね。武骨にしたうえで上質化を図るなんて、トヨタはなんと欲張りな戦略を(笑)。

メーターは7インチ全面液晶に、4WDのセレクターは従来のダイヤル式からトグルスイッチ式に変更されたのも新型の見逃せないポイントでしょう。

新型は細いヘッドランプを採用し、水平基調の端正なデザインに変わった。
新型は細いヘッドランプを採用し、水平基調の端正なデザインに変わった。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=5320×1855×1800mmでホイールベースは3085mm。全長が20mm短くなっただけで、ほかは現行モデルと変わっていない。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=5320×1855×1800mmでホイールベースは3085mm。全長が20mm短くなっただけで、ほかは現行モデルと変わっていない。拡大
新型には「TRAVO(トラボ)」のサブネームがつき、「トヨタ・ハイラックス トラボ」になった。ただし現行型もタイでは「ハイラックスREVO(レボ)」と呼ばれているので、日本ではハイラックスのままだろう。
新型には「TRAVO(トラボ)」のサブネームがつき、「トヨタ・ハイラックス トラボ」になった。ただし現行型もタイでは「ハイラックスREVO(レボ)」と呼ばれているので、日本ではハイラックスのままだろう。拡大

トヨタ車としての本質を守りながら進化

ラッキーなことに、筆者は新型ハイラックスの開発者に話を聞くチャンスをゲット。話をしてくれたのは、トヨタ・モーター・アジアテクニカルセンターのバイスプレジデントであるジュラチャート・ジョングスク(通称:ジラ)さん。「IMV 0(ハイラックス チャンプ)」の開発責任者を務め、新型ハイラックスの開発にも深く関わっているタイ人の(とても優秀な)エンジニアです。余談ですが新型は開発の中心拠点が日本ではなくタイのテクニカルセンターとなり、タイ人のリージョナル開発責任者(ジラさんではなくアニャラットさんという女性)がまとめたのも新型ハイラックスのトピックのひとつだったりするんです。

閑話休題。ジラさんによると「フルモデルチェンジにおいて守ったものは『品質と耐久性』。これは絶対に譲れないハイラックスの性能」とのこと。ハイラックスとしての……というよりはトヨタ車としての本質を絶対に失ってはならないという決意を感じました。

それを守り、さらに高めるために、例えばショックアブソーバーはダブルシール化で防じん性能を強化するなど耐久性をさらに高める改善を実施。「ラダーフレームは見た目こそ従来型とほとんど変わっていないけれど、補強を増やしたり鉄板を厚くしたりと、ハードな使い方でももっと耐えられるように進化している」と教えてくれました。デフもワンサイズ大きくなっているそうです。

性能面に関しては、大きなトピックとして挙げられるのが乗り心地を改善したこと。ジラさんいわく「乗ればその違いにビックリする」のだそうで、そこには縦方向だけでなく横方向の動きもしっかりと減衰するキャブマウントブッシュの新採用などが効いており「ブルブル揺れるのを止めてくれる」のだそうです。エンジンマウントはこれまでのラバーから液封式へとアップグレードされました。

あとは電動パワーステアリングの採用による操縦性の進化、それからブレーキの強化も走行性能を高める進化。ブレーキで目立つ違いはリアがディスク化されていることですが、フロントローターも大径化してより安全にしているとのこと(大きな声では言えませんがユーザーさんは過積載とかバンバンしちゃいますからね……)。ブレーキといえばATモデルに電動パーキングブレーキが採用されたのもトピックでしょう。

タイモーターエキスポ2025でお話を伺ったトヨタ・モーター・アジアテクニカルセンターのバイスプレジデントであるジュラチャート・ジョングスクさん。
タイモーターエキスポ2025でお話を伺ったトヨタ・モーター・アジアテクニカルセンターのバイスプレジデントであるジュラチャート・ジョングスクさん。拡大
インテリアも直線基調のモダンなデザインに。メーターも液晶式に変わっている。
インテリアも直線基調のモダンなデザインに。メーターも液晶式に変わっている。拡大
シフトセレクター前方には「マルチテレインセレクト」とドライブモードのダイヤルが備わっている。トランスファーの切り替えはダイヤル式からトグルスイッチ式に変わった。
シフトセレクター前方には「マルチテレインセレクト」とドライブモードのダイヤルが備わっている。トランスファーの切り替えはダイヤル式からトグルスイッチ式に変わった。拡大

電子制御に頼らない悪路走破性

エンジンやトランスミッション、それから4WDシステムなどは基本的に従来モデル用をブラッシュアップして搭載。ただし、新ギミックとしてオフロード走行時のトラクションコントロールなどの制御を切り替える「MTS(マルチテレインセレクト)」を新採用。もともと高かった悪路走破性ですが、MTSが搭載されたことで高度なテクニックなしにより多くの人が悪路を走りやすくなったというわけです。

「サスペンションストロークの拡大はあるのか?」と尋ねてみたところ「変わっていないけれど、もともとライバル以上に長い。世界トップクラスなんですよ。電子制御をすべてカットしても、クルマ本来の性能として悪路走破性は高いです」とのことでした。


それにしてもジラさん、日本語が流ちょうすぎると思ったら日本に留学して工業大学の大学院を卒業したとのこと(本人いわく日本語は日本留学時代の「学校が終わってからの『朝まで600円』のカラオケ」と「日本のドラマ」で覚えたとか)。そのうえこちらからの質問に対する答えも明快で、トヨタの将来を担うことになる素晴らしい人材であろうことがヒシヒシと伝わってきました。

そんな新型ハイラックスの日本発売予定は2026年6月。話を聞いて、日本仕様の登場と試乗がますます楽しみになってきた筆者でした。日本仕様のプロトタイプとして公開されている写真から推測すると、上級グレードにはタイ向けにはないシートヒーターとステアリングヒーター、そしてシートベンチレーションが組み込まれているっぽいですね。

(文と写真=工藤貴宏/編集=藤沢 勝)

シートはサポートのサイズが大きくなり、表皮もニットのような現代的な素材に変わっている。日本仕様の上級グレードにはヒーターとベンチレーション機能が付くようだ。
シートはサポートのサイズが大きくなり、表皮もニットのような現代的な素材に変わっている。日本仕様の上級グレードにはヒーターとベンチレーション機能が付くようだ。拡大
ステアリングホイールは「ランドクルーザー“250”」と同じタイプ。アダプティブクルーズコントロールや操舵支援システム等も備わっている。
ステアリングホイールは「ランドクルーザー“250”」と同じタイプ。アダプティブクルーズコントロールや操舵支援システム等も備わっている。拡大
新型には電気自動車版の「ハイラックス トラボe」もラインナップされる。さらに水素燃料電池車版の開発も進められている。
新型には電気自動車版の「ハイラックス トラボe」もラインナップされる。さらに水素燃料電池車版の開発も進められている。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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