タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相
2025.12.03 デイリーコラムタイから年間70万台を輸出
そうだ、タイへ行こう!
先日、新型「トヨタ・ハイラックス」がグローバル発表されたことでテンション上がり気味の筆者。なぜなら隠れハイラックスファンだからに決まっているじゃないですが。いてもたってもいられず一般向けの初お披露目の場となる「タイモーターエキスポ2025」という、タイの首都バンコク近郊で開催されたモーターショーへ出かけてきました。というわけでサワディカーッ。
どうしてタイかって? ハイラックスは日本での生産を終えてからタイが生産拠点となり、ピックアップトラック王国でもある国内需要を賄うだけでなく、ここから世界各地へ輸出。その数(タイからのハイラックスの輸出台数)は年間70万台にもなり、それはトヨタのタイ拠点から輸出される車両の7割を占めるというからすごい話すぎます。ハイラックスってそんなに売っているんですね。
また新型はタイの拠点を中心に開発されました。だからタイでワールドプレミアされ、一般向けの初公開となる場にもタイのモーターショーが選ばれたということなのです。
ランボーからロボコップへ
というわけで「トラボ」というサブネームがついた実車を見てまず感じたこと。それはこれまでのアメリカのフルサイズピックアップトラックにも通じるいかにも野性的な力強さを体現したデザインから、先進感を覚える顔つきへと変化したということ。
「レボ」と呼ばれた従来モデルは大きなヘッドライトや大きく見せるグリルで古典的なワイルドさの体現だったのですが、新型はヘッドライトが細くなり、グリルが小型化されてバンパーに組み込まれ、デザインも直線基調となり端正に。どちらも力強いんだけど“筋肉モリモリの「ランボー」ではなく「ロボコップ」のようなスマートで先進的なたくましさ”といったところでしょうか。なんとも分かりにくい説明ですみません(笑)。
インテリアはより武骨感が強まった印象。その象徴がダッシュボードのデザインで、柔らかい曲線で構成して“乗用車感”を醸していた従来型とは対照的に新型は直線的で道具感を強調。「ランドクルーザー“250”」と同じ方向性といえば分かりやすいでしょうか。まさに質実剛健感ですね。
好みは分かれるでしょうけれど、筆者はこのトヨタの判断を支持したいと思います。
いっぽうで上級タイプのダッシュボードは表面にリアルステッチ入りのソフト表皮を張るなど上質感もしっかり高められていますね。武骨にしたうえで上質化を図るなんて、トヨタはなんと欲張りな戦略を(笑)。
メーターは7インチ全面液晶に、4WDのセレクターは従来のダイヤル式からトグルスイッチ式に変更されたのも新型の見逃せないポイントでしょう。
トヨタ車としての本質を守りながら進化
ラッキーなことに、筆者は新型ハイラックスの開発者に話を聞くチャンスをゲット。話をしてくれたのは、トヨタ・モーター・アジアテクニカルセンターのバイスプレジデントであるジュラチャート・ジョンユースック(通称:ジラ)さん。「IMV 0(ハイラックス チャンプ)」の開発責任者を務め、新型ハイラックスの開発にも深く関わっているタイ人の(とても優秀な)エンジニアです。余談ですが新型は開発の中心拠点が日本ではなくタイのテクニカルセンターとなり、タイ人のリージョナル開発責任者(ジラさんではなくアンヤラットさんという女性)がまとめたのも新型ハイラックスのトピックのひとつだったりするんです。
閑話休題。ジラさんによると「フルモデルチェンジにおいて守ったものは『品質と耐久性』。これは絶対に譲れないハイラックスの性能」とのこと。ハイラックスとしての……というよりはトヨタ車としての本質を絶対に失ってはならないという決意を感じました。
それを守り、さらに高めるために、例えばショックアブソーバーはダブルシール化で防じん性能を強化するなど耐久性をさらに高める改善を実施。「ラダーフレームは見た目こそ従来型とほとんど変わっていないけれど、補強を増やしたり鉄板を厚くしたりと、ハードな使い方でももっと耐えられるように進化している」と教えてくれました。デフもワンサイズ大きくなっているそうです。
性能面に関しては、大きなトピックとして挙げられるのが乗り心地を改善したこと。ジラさんいわく「乗ればその違いにビックリする」のだそうで、そこには縦方向だけでなく横方向の動きもしっかりと減衰するキャブマウントブッシュの新採用などが効いており「ブルブル揺れるのを止めてくれる」のだそうです。エンジンマウントはこれまでのラバーから液封式へとアップグレードされました。
あとは電動パワーステアリングの採用による操縦性の進化、それからブレーキの強化も走行性能を高める進化。ブレーキで目立つ違いはリアがディスク化されていることですが、フロントローターも大径化してより安全にしているとのこと(大きな声では言えませんがユーザーさんは過積載とかバンバンしちゃいますからね……)。ブレーキといえばATモデルに電動パーキングブレーキが採用されたのもトピックでしょう。
電子制御に頼らない悪路走破性
エンジンやトランスミッション、それから4WDシステムなどは基本的に従来モデル用をブラッシュアップして搭載。ただし、新ギミックとしてオフロード走行時のトラクションコントロールなどの制御を切り替える「MTS(マルチテレインセレクト)」を新採用。もともと高かった悪路走破性ですが、MTSが搭載されたことで高度なテクニックなしにより多くの人が悪路を走りやすくなったというわけです。
「サスペンションストロークの拡大はあるのか?」と尋ねてみたところ「変わっていないけれど、もともとライバル以上に長い。世界トップクラスなんですよ。電子制御をすべてカットしても、クルマ本来の性能として悪路走破性は高いです」とのことでした。
それにしてもジラさん、日本語が流ちょうすぎると思ったら日本に留学して工業大学の大学院を卒業したとのこと(本人いわく日本語は日本留学時代の「学校が終わってからの『朝まで600円』のカラオケ」と「日本のドラマ」で覚えたとか)。そのうえこちらからの質問に対する答えも明快で、トヨタの将来を担うことになる素晴らしい人材であろうことがヒシヒシと伝わってきました。
そんな新型ハイラックスの日本発売予定は2026年6月。話を聞いて、日本仕様の登場と試乗がますます楽しみになってきた筆者でした。日本仕様のプロトタイプとして公開されている写真から推測すると、上級グレードにはタイ向けにはないシートヒーターとステアリングヒーター、そしてシートベンチレーションが組み込まれているっぽいですね。
(文と写真=工藤貴宏/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか?NEW 2026.3.3 2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。
-
“エネマネ”時代に突入! 2026年のF1は「F1ではなくなる」のか? 2026.3.2 レギュレーションは大幅変更。ホンダがアストンマーティンと手を組み復帰を果たすF1の2026年シーズンは、どんな戦いになるのだろうか? 本番前のテストを経て開幕戦が近づいてきた今、その“見どころ”についてリポートする。
-
ホンダがBEV「スーパーONE」の情報を先行公開 「ブルドッグ」の再来といわれるその特徴は? 2026.2.26 ブリスターフェンダーが備わるアグレッシブなエクステリアデザインから、ファンが「シティ ターボII」の再来と色めき立ったホンダの新型電気自動車(BEV)「スーパーONE」。2026年中の発売がウワサされる最新BEVの特徴とホンダの狙いを解説する。
-
右も左もスライドドアばかり ヒンジドアの軽自動車ならではのメリットはあるのか? 2026.2.25 軽自動車の売れ筋が「ホンダN-BOX」のようなスーパーハイトワゴンであるのはご承知のとおりだが、かつての主流だった「スズキ・ワゴンR」のような車型に復権の余地はないか。ヒンジドアのメリットなど、(やや強引ながら)優れている点を探ってみた。
-
いつの間にやら多種多様! 「トヨタGRヤリス」のベストバイはどれだ? 2026.2.23 2020年のデビュー以来、改良が重ねられてきたトヨタの高性能ハッチバック「GRヤリス」。気がつけば、限定車を含めずいぶんと選択肢が増えている!? 現時点でのベストバイは一体どれなのか、工藤貴宏が指南する。
-
NEW
第330回:「マカン」のことは忘れましょう
2026.3.2カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。JAIA(日本自動車輸入組合)主催の報道関係者向け試乗会に参加し、「T-ハイブリッド」システムを搭載する「911タルガ4 GTS」とBEV「マカン ターボ」のステアリングを握った。電動化が進む最新ポルシェの走りやいかに。 -
NEW
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】
2026.3.2試乗記ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。 -
NEW
“エネマネ”時代に突入! 2026年のF1は「F1ではなくなる」のか?
2026.3.2デイリーコラムレギュレーションは大幅変更。ホンダがアストンマーティンと手を組み復帰を果たすF1の2026年シーズンは、どんな戦いになるのだろうか? 本番前のテストを経て開幕戦が近づいてきた今、その“見どころ”についてリポートする。 -
アルピーヌA110 R70(後編)
2026.3.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き9年の歴史に幕を下ろそうとする、アルピーヌのピュアスポーツカー「A110」。“ミスター・スバル”こと辰己英治氏の目に、ディエップ流のスポーツカー哲学はどのように映るのか? スパルタンな「R70」の試乗を通し、その魅力が大いに語られた。 -
歴史に名を残す“ニッポンの迷車”特集
2026.3.1日刊!名車列伝風変わりなデザインや、聞きなれないモデル名。それでも自動車史に名を刻む、日本が生んだマイナー車を日替わりで紹介します。 -
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】
2026.2.28試乗記フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。








































