第8戦オーストリアGP「ロズベルグの最大の成果」【F1 2015 続報】

2015.06.22 自動車ニュース
第8戦オーストリアGPを制したのはメルセデスのニコ・ロズベルグ(右から2番目)。2位はロズベルグのチームメイトであるルイス・ハミルトン(一番左)、3位はウィリアムズのフェリッペ・マッサ(一番右)だった。エンジンパワーがものをいうレッドブル・リンクでメルセデス・ユニット勢が表彰台を独占した。(Photo=Mercedes)
第8戦オーストリアGPを制したのはメルセデスのニコ・ロズベルグ(右から2番目)。2位はロズベルグのチームメイトであるルイス・ハミルトン(一番左)、3位はウィリアムズのフェリッペ・マッサ(一番右)だった。エンジンパワーがものをいうレッドブル・リンクでメルセデス・ユニット勢が表彰台を独占した。(Photo=Mercedes)

【F1 2015 続報】第8戦オーストリアGP「ロズベルグの最大の成果」

2015年6月21日、オーストリアのレッドブル・リンク(4.326km)で行われたF1世界選手権第8戦オーストリアGP。予選で失敗し2番グリッドに甘んじたメルセデスのニコ・ロズベルグが、不得手としていたレースでの逆転に成功。今後のタイトル争いがおもしろくなりそうな予感のする一戦となった。

予選Q3の最後のアタックでコースアウト、タイムアップを果たせず2番グリッドに甘んじたロズベルグ。決勝ではスタートでポールシッターのハミルトンをかわし、終盤はバイブレーションに悩みながらもしっかりとトップを守り切り今季3勝目を飾った。これでポイントリーダーのハミルトンとの差は10点まで縮まった。(Photo=Mercedes)
予選Q3の最後のアタックでコースアウト、タイムアップを果たせず2番グリッドに甘んじたロズベルグ。決勝ではスタートでポールシッターのハミルトンをかわし、終盤はバイブレーションに悩みながらもしっかりとトップを守り切り今季3勝目を飾った。これでポイントリーダーのハミルトンとの差は10点まで縮まった。(Photo=Mercedes)
ロズベルグ同様に予選でコースをはみ出すミスをおかしたものの、今季7回目のポールポジションを獲得できたハミルトン。しかしスタートではロズベルグに先を越され、またピットアウト後の出口で白線をまたいだことで5秒のペナルティーが加算され、結果2位でゴールした。ハミルトン4勝対ロズベルグ3勝、10点を挟んでのタイトル争いは、シーズン中盤に来て熱を帯びてきた。(Photo=Mercedes)
ロズベルグ同様に予選でコースをはみ出すミスをおかしたものの、今季7回目のポールポジションを獲得できたハミルトン。しかしスタートではロズベルグに先を越され、またピットアウト後の出口で白線をまたいだことで5秒のペナルティーが加算され、結果2位でゴールした。ハミルトン4勝対ロズベルグ3勝、10点を挟んでのタイトル争いは、シーズン中盤に来て熱を帯びてきた。(Photo=Mercedes)

■「伝統の一戦」の行方

2017年以降のイタリアGPの開催が危ぶまれている。2016年のレースをもって開催の契約が切れる同GPだが、その契約延長交渉が難航しているというのだ。
イギリスGPと並び、F1世界選手権がはじまった1950年から欠かさず行われてきたイタリアGPは、F1と不可分な関係にあるといっても過言ではなく、この伝統の一戦の今後に注目が集まっている。

イタリアGPは、1980年に1度だけイモラに譲ったものの、それ以外はイタリア北部のモンツァで開催されており、同地でのF1開催は今年で65回とどのコースよりも多い。長い直線を組み合わせた超ハイスピードサーキットでは過去幾多の接戦や名勝負が繰り広げられ、例を挙げれば枚挙にいとまがない。そしてフェラーリの地元であり、熱狂的なファンであるティフォシたちがゴール後にコースになだれ込むシーンはおなじみとなっている。

まさにF1におけるクラシックレースの代表格であるイタリアGPだが、こうしたF1の本場、ヨーロッパを舞台とした伝統的なGPは年々減少している。
例えばミハエル・シューマッハーが2冠を達成した1995年シーズンは、全17戦のうちヨーロッパで行われたレースは11戦と65%近くを占めていた。それが今季は全19戦中7戦が開かれるのみで、割合からしたらわずか37%にすぎない。イタリアはイモラでのサンマリノGPは2006年、GPとして最古の歴史を持つフランスGPは2008年を最後にカレンダーから消え、今年はシューマッハーやセバスチャン・ベッテル、メルセデスといったチャンピオンを輩出したドイツでのGPも途中で開催を断念した。

一方で、20年前は日本のみだったアジアではマレーシア(1999年~)、中国(2004年~)、シンガポール(2008年~)を加え4カ国まで増え、ふた昔前には皆無だった中東でのレースはバーレーン(2004年~)、アブダビ(2009年~)と2カ国で行われている。昨年はロシアで初開催、そして2016年には新たに旧ソ連のアゼルバイジャンが仲間入りする予定である。

F1が歴史ある地から新興国へと軸足を移している背景には、契約金の高騰があるとされる。GPを誘致せんと中央・地方政府が強力に後押しする国々が続々と近代的サーキットを造りプロモーションを仕掛けてくれば、伝統ある開催地であってもかなわないというわけだ。
昨シーズン11年ぶりに復活したオーストリアGPも、地元の大富豪、レッドブルのオーナーであるディートリッヒ・マテシッツの(財)力がなければ実現はならなかったであろう。

F1の商業面を牛耳るバーニー・エクレストンは、伝統とカネを天秤(てんびん)にかけては容赦なく伝統を切り捨てる人物なのかもしれない。しかし、眩(まばゆ)いばかりにきらめく「黄金」はマネーだけではない。
ローマは一日にして成らず。モンツァも、そして1964年から続くGPの歴史を背負ったオーストリアもしかりだ。

定位置の3番グリッドから3位を維持していたフェラーリのセバスチャン・ベッテル。しかしピットストップ中にタイヤがうまくはまらずタイムロス、ウィリアムズのマッサに3位の座を奪われてしまった。終盤猛追するもかなわず0.6秒差で4位。(Photo=Ferrari)
定位置の3番グリッドから3位を維持していたフェラーリのセバスチャン・ベッテル。しかしピットストップ中にタイヤがうまくはまらずタイムロス、ウィリアムズのマッサに3位の座を奪われてしまった。終盤猛追するもかなわず0.6秒差で4位。(Photo=Ferrari)

■2台ともコースオフしながらもメルセデスが予選1-2

牧歌的な景色が広がる丘陵地帯につくられたレッドブル・リンクは、モナコ、ブラジルのインテルラゴスに次ぐ今季3番目に短い全長4.3km。ターンの数は9つしかなく、直線基調で、さらに起伏に富んでいるがゆえにパワーユニットの優劣が如実にあらわれることで知られている。

予選は、セッション前に雨が降ったこともありハーフウエットではじまったものの、徐々に乾いてきたことで各車ドライタイヤで走行。ルイス・ハミルトンが今季7回目、通算45回目のポールポジションを獲得し、ニコ・ロズベルグが2位に入ったものの、メルセデスの2台は最後のアタック中、別々の場所でコースアウト、ドタバタのうちにセッションを終えた。これでシルバーアローは19戦連続でポールポジションからスタートすることになった。

フェラーリのベッテルが“いつもの”3番グリッド。タイムはハミルトンの0.355秒遅れだった。昨年のポールシッターであるウィリアムズのフェリッペ・マッサは予選4位、僚友バルテリ・ボッタスは6位で、その間には1週間前のルマン24時間レースで優勝したフォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグが割って入った。
トロロッソの新人マックス・フェルスタッペンは7位、ザウバーのルーキー、フェリッペ・ナッサー8位、そしてロータスの2台、ロメ・グロジャン9位、パストール・マルドナド10位が5列目に並んだ。

なおマクラーレン勢はフェルナンド・アロンソがQ2進出の15位、ジェンソン・バトンはQ1止まりの17位だったが、エンジンその他の部品交換によるペナルティーで2人とも25グリッド(!)ダウン、つまり最後尾まで追いやられた。

お膝元で苦戦したレッドブル勢。ダニエル・リカルド、ダニール・クビアトともにエンジンの年間規定数を超えたことで10グリッド降格、レースではリカルドが10位入賞で最後の1点を獲得し何とか面目を保ち、クビアトは12位完走。ルノー・ユニットを不調の元凶とする主張は変わらず。(Photo=Red Bull Racing)
お膝元で苦戦したレッドブル勢。ダニエル・リカルド、ダニール・クビアトともにエンジンの年間規定数を超えたことで10グリッド降格、レースではリカルドが10位入賞で最後の1点を獲得し何とか面目を保ち、クビアトは12位完走。ルノー・ユニットを不調の元凶とする主張は変わらず。(Photo=Red Bull Racing)

■ロズベルグ、抜群のスタートで首位へ

レースはスタートで波乱が起きた。2番グリッドのロズベルグが抜群の蹴り出しでトップ奪取に成功。2位に落ちたハミルトンもチームメイトに食らいつき、激しい首位争いが行われていたその後方で大きなクラッシュが発生した。
14番グリッドから出走したキミ・ライコネンと、19番グリッドから順位を上げていたアロンソが接触、後ろにいたマクラーレンがフェラーリのフロントに乗り上げる格好で2台は止まり、セーフティーカーの出番となった。

71周レースの7周目にレースは再開。1位ロズベルグ、2位ハミルトン、3位ベッテル、4位マッサ、5位ヒュルケンベルグの順でターン1に飛び込んでいった。ロズベルグはファステストラップを連発しながら逃げ、また2位ハミルトンも1~3秒台のギャップで虎視眈々(たんたん)と首位奪還を狙った。
一方、打倒メルセデスの旗頭、フェラーリのベッテルはといえば、20周を過ぎトップから10秒遅れの3位。今回もシルバーアローは別格の速さを見せた。

レース半ばの34周目、首位ロズベルグがピットに飛び込み、スーパーソフトからソフトタイヤに交換。翌周ハミルトンもタイヤを替えるも、順位に変動はなかった。
ポジションチェンジが起きたのはその後ろの3位争い。37周目、3位ベッテルがピットストップを行ったがタイヤ交換に手間取り、既に最初のピットインを済ませていたマッサに先を越されてしまったのだった。

マクラーレン・ホンダには試練が続いている。フェルナンド・アロンソがQ2進出を果たし予選15位、ジェンソン・バトン(写真)は同17位。しかし、アロンソは年間規定数を超える5基目のエンジン&同じく5基目のターボチャージャーと熱エネルギー回生装置MGU-H投入、加えてギアボックス交換で25グリッド降格。バトンは6基目のターボチャージャーとMGU-H、5基目のエンジンと運動エネルギー回生装置MGU-Kを使ったことで同じく25グリッドダウン。最後尾からの追い上げも果たせず、アロンソはキミ・ライコネンとのクラッシュで0周リタイア、程なくしてバトンもメカニカルトラブルで戦列を去った。(Photo=McLaren)
マクラーレン・ホンダには試練が続いている。フェルナンド・アロンソがQ2進出を果たし予選15位、ジェンソン・バトン(写真)は同17位。しかし、アロンソは年間規定数を超える5基目のエンジン&同じく5基目のターボチャージャーと熱エネルギー回生装置MGU-H投入、加えてギアボックス交換で25グリッド降格。バトンは6基目のターボチャージャーとMGU-H、5基目のエンジンと運動エネルギー回生装置MGU-Kを使ったことで同じく25グリッドダウン。最後尾からの追い上げも果たせず、アロンソはキミ・ライコネンとのクラッシュで0周リタイア、程なくしてバトンもメカニカルトラブルで戦列を去った。(Photo=McLaren)

■マッサ、3位の座を死守

1位を堅調に走るロズベルグに朗報が届いたのは39周目のこと。ハミルトンがピットアウトする際、レーン出口の白線越えというミスをおかしたことで5秒加算のペナルティーを受けることになったのだ。この時点で両車の間には5秒の差ができており、ロズベルグは一気に10秒ものマージンを手に入れた。
レース後半でタイヤのバイブレーションがひどくなるも、この貯金のおかげでロズベルグは余裕をもってチェッカードフラッグを受けることができた。ゴール時のタイム差は3.8秒、正式結果では8.8秒のリードで勝ったことになる。

メルセデス同士の攻防戦の裏では、表彰台の最後の一角をかけて接戦が繰り広げられていた。ピットでの作業の遅れで4位に落ちたベッテルが、3位マッサとのギャップをジリジリと詰め、46周で3秒、57周で1.9秒、63周になるとその間隔はDRS作動圏内の1秒を切った。しかしウィリアムズを駆るベテランのマッサも必死に応戦し、わずか0.6秒差で自身今季初、チームとしては2戦連続の表彰台を勝ち取った。

ロズベルグにとっては、ポールから今季初勝利を飾った第5戦スペインGP、ハミルトンの予想外のピットインで棚ぼた優勝した第6戦モナコGPに次ぐ今シーズン3勝目。ポイントリーダーのハミルトンとの間にあった差を17点から10点まで減らした。

だが、オーストリアでのロズベルグの最大の成果は、いままで不得手としていた「レースでの逆転勝利」を成功させたことにある。予選での失敗で目前に迫っていたポールポジションをハミルトンに明け渡したロズベルグ。いつもの彼ならレースでもそのまま2位に甘んじていたのだが、今回はスタートでハミルトンを出し抜き、しっかりとトップを守り切った。今後のタイトル争いがおもしろくなりそうな予感のする、そんなオーストリアでの一戦だった。

次戦イギリスGP決勝は、7月5日に行われる。

(文=bg)
 

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