第1回:50ccのスクーターから巨大なトライクまでイッキ乗り!
輸入バイク チョイ乗りリポート(前編)
2016.05.16
JAIA輸入二輪車試乗会2016
バラエティー豊かな輸入バイクが大磯ロングビーチに集結! webCGメンバーがピックアップした注目モデルの走りを、2回に分けてリポートする。
2年連続のこの天気……雨男は誰だ?
昨年(2015年)の第1回に続き、今年も開催されたJAIAの輸入二輪車試乗会。文字通り欧米8ブランド、約60台のきらびやかなオートバイがスタンバイ状態で用意された、実に豪快で豪華なテストイベントだ。例によって、といっても2回目ですが、webCG編集部員の自称“縄文体形”ホッタ青年と、“偏愛トラキチ”の関 顕也氏の3人で果敢に挑んでまいりました。
しかし、このイベント自体なのか、あるいは大磯ロングビーチという場所なのか、僕らはどうにも相性が悪いみたいだ。昨年は一日中冷たい雨。今年もまた朝方まで降り、路面はウエット状態。こうなると互いに無言のまま雨男探しが始まり、見上げる雲そのままに陰鬱(いんうつ)な空気がたれ込むことになる。でも、結果から言えばなんとか雨はもってくれた。そうなるとまた無言のまま、自分が晴れ男なのだとさり気ないアピール合戦が始まることになる。
雨の日のオートバイが醸し出す複雑な人間模様。そんな前置きはどうでもいいですね。では、全9台のリポート、前後編に分けてお届けします。
出るとこ出たらやりまっせオーラ
BMW S1000RR……218万円
ホッタ青年に言われるまま、この日最初の一台としてまたがったのは、BMWの「S1000RR」。いわゆるスーパースポーツと呼ばれる本気アスリート系だ。こういうのに準備運動もなしで乗ると筋を痛めるんだけどなあとつぶやいてみたが、ホッタ青年は3歩どころか3mも離れた場所に立っていた。
エッジが効いているというか、むやみに触れれば指を切りそうなほど鋭いボディーシェイプ。その下に潜むエンジンは、スーパースポーツの主流たるインラインフォー。BMW伝統のボクサーツインをあっさり捨てたところに畏れを感じるわけです。しかも199ps! 同クラスの「ホンダCBR1000RR」フルパワー仕様より20psくらいデカいなんて、そんなの素人が扱えるはずがない。と思いきや、安直に言えば“乗りやすさ”を提供するためのBMW式おもてなしがてんこ盛りなのである。
状況に合わせてサスペンションを自動調整するDDC。四輪のBMWでも同名称のトラクションコントロールDTC。それらの組み合わせを任意で選べるライディングモード。フライバイワイヤ式のスロットルに、クラッチレバーを使わずシフト操作ができるシフトアシストProなどなど、要するに、一見さんでも店主の意図がわかる全部のせラーメンだ。
じゃ何も怖くないね、と気軽に乗れるかといえばそうでもなくて、普通に接する分にはジェントルだけど、出るとこ出たらやりまっせというオーラは股座(またぐら)の間からぶ~んと漂ってくる。だから無理はしない。そういう自省を促す点でも、実は大人なモデルかもしれない。
いずれにせよ準備運動をしたところでこのオートバイの魅力を存分に引き出せるわけではないけれど、二輪テクノロジーの最前線に触れるという意味では、最初の一台にふさわしかった。こういう世界観を忘れるとすぐに老けちゃうだろうし。
ハーレー星団、健在なり!
ハーレーダビッドソン・ソフテイル スリムS……248万5000円
排気量1801㏄かつ税込み本体価格248万5000円にして、シートはたったひとつ。こんな体ではカミさんのイエスをもらえまい。そんな割り切った潔さとぜいたくさ。それが「ソフテイル スリムS」への率直な賛辞だ。
以前ハーレーダビッドソン(長いので以下HD)の専門誌で連載を担当させてもらったよしみでいささかの肩入れもあるけれど、HDの律義さには常に感心する。
HDを彩ってきた古いエピソードには、反社会的やワイルドといった匂いがつきものだが、製造会社としてはていねいな技術革新を繰り返し、より扱いやすいアメリカンバイクをつくり続けている。メーカーなら当たり前と言えばそれまでだけど、世間のイメージとはギャップがあるでしょ。そこに彼らの生真面目さを感じるわけです。
事実、片方のシリンダーだけで900㏄もあるソフテイル スリムSは、爆発力よりは安定感、たけだけしさよりは落ち着きにテイストが寄せられており、そこそこ手足が長ければ誰でもすぅっと乗れてしまうはずだ。好みは別にしてテクノロジー自体に破綻がないというのは、このルックスを守り通している意地を鑑みても拍手を送る他にない。
毎年イヤーモデルを投入する点でもHDの律義さは感じられる。革新的技術の年次投入よりはボディーペイントなどのデザイン面でそれは発揮されているのだけど、なかなかにナイスなルックスが多い。ソフテイル スリムSもそう。パットン戦車か! と突っ込まずにいられないオリーブドラブ系塗色は、それこそ往年のアメリカ陸軍式マット仕上げだが、ラメをまぶしたかのような鈍い輝きを放っている。そうした手の掛け方はHDならではだ。
そして最も感心すべきは、オートバイではなくハーレーに乗りたいと決め打ちする人を絶やさないこと。HDに乗るたび、まったく別の宇宙に連れていかれる感覚を覚える。ハーレー星団は健在だった。
“確信犯的意外性”なヒット
ドゥカティ・スクランブラー アイコン……106万5000円
プロ野球の世界では、「まさかここで打つとは!?」と驚かせる選手に対して「意外性」という評価が与えられる。本来なら実に無礼な話だ。逆転のチャンスでバッターボックスに立ったら、そりゃ誰でもランナーを返すべくバットを振るでしょ。ただ、信頼性が乏しい選手はそうした意外性を何度も発揮することでレギュラーを勝ち取っていくのが常だとしたら、少なくとも最初のうちは本気で意外性に賭けるしかないのだろう。自分でも驚く衝撃を伴いつつ。
って、何の話だっけ? そうそう、ドゥカティの「スクランブラー」。競争一途(いちず)なドゥカティにとって、つくり手の彼らにしても、それを受け取る乗り手としても、これは確信犯的意外性に満ちたモデルといっていい。確信犯的と前置きしたのは前例があるからだ。1993年から始まったモンスターがそれに当たる。レースイメージ全開バリバリのラインナップの中で、いわゆるネイキッドと呼ばれる丸目ヘッドライトのルックスはあまりに斬新に見えた。
一方でこのスクランブラーは、原本があるらしい。主にダートで競うアメリカのスクランブルレースに参戦するため、1962年に登場したその名も「スクランブラー250」を、「もし今もドゥカティがつくり続けていたなら……」という体で再編集したという。
そうしたヘリテイジへのヒモづけに水を差すつもりなど毛頭ないが、はっきり言えば「そんなの関係ねぇ(古っ)」だ。そのスッキリとしたルックスそのままの、軽やかな乗り味というか乗りやすさは、多くのライダーあるいはライダー予備軍が心待ちにしていたものかもしれない。現にかなり人気らしいじゃないか。となれば、詰まるところ意外でも何でもなくなる。この手の類いはバイク乗りにとって永遠のマストアイテムなのだから。だが、こういうヒットこういうヒットはなかなか打てないのが現実。だからこそみんなが注目するんだな。
案外恋に落ちるかも!?
ベスパ・プリマベーラ50……34万6000円
「人生初の2ストに感動しました」 それがホッタ青年の感想。ちょ、待てよ!? 2スト知らないの? そんなに若いの? うわうわ驚いた。それにしてもこの時代に2ストの新車に乗れるとはねぇ。ワタシも驚いたのだよ、ホッタ青年。
もはやおなじみの殿堂入りスクーターと呼ぶべきベスパ。イタリア語で春、あるいはボッティチェリの絵画作品と同じ優美な名前の「プリマベーラ」の「50」は、2ストローク空冷単気筒クランクケースリードバルブエンジン搭載。パルンパルルンという小太鼓を連打するような排気音のなんと懐かしいこと。ヨーロッパの新興メーカーにはいまなお2ストモデルがあると聞いたけれど、ベスパにもまだあったとはねぇ。
実はベスパには心残りがあった。昨年のこの試乗会で用意されていた「ベスパ946エンポリオアルマーニ」。特にシート周辺のデザインが秀逸な、ネオクラシックと呼ぶべき美麗なスクーターに今年こそ乗ってみたかった。しかし、それはベスパの本体であるピアッジオ社設立130周年と、ジョルジオアルマーニ社設立40周年を記念した2015年の特別限定車。もはや手の届かないモデルとなったことを知ったのはつい最近だった。
そこに前触れもなく現れたのが、陽気な小娘プリマベーラ。もう笑っちゃうしかないでしょ。でもって春のような排気音に踊らされて、案外恋に落ちちゃったりして。髪を切った直後のアン王女を目の当たりにするがごとく。どうかなあ。パルンパルルン。
ある意味でリアクションキング
カンナム・スパイダーF3リミテッド……291万8160円
前編最後に紹介するのは、試乗会でも異彩を放っていた前2輪後1輪のスリーホイラー、「カンナム・スパイダーF3リミテッド」。ごわごわゴツいデザインとマットブラック仕上げのいでたちには、バットマンのコスチュームで乗りたいと思った。
まるでスノーモービルみたいですねと担当の方に話したら、「そりゃそうです。BRPはスノーモービルメーカーですから」とお答えになられた。
説明します。カナダのボンバルディアさんが1942年に世界初のスノーモービルを発明。そして設立されたBRP(ボンバルディア・レクリエーショナル・プロダクツ)は、スノーモービルや水上バイクの開発に従事。そのラインナップの中に、陸を走る「カンナム」シリーズがあるそうな。
特記事項をもうひとつ。BRP社製品で使用されているエンジンは、二輪や四輪、はては航空機用のそれまで製造していたオーストリア生まれのロータックス製であること。10年程前にロータックス社がBRPの傘下に入り、今日に至っているという。ロータックスって、BMWやビューエルのエンジンもつくっていたんだよなあ。
世の中知らないことだらけ。もちろんカンナムも初体験。パドルシフト付き6段セミAT。リバースもあり。通常のオートバイと同じスロットルグリップだが、ブレーキレバーはなし。ブレーキはフットペダル式でABS付き。なにより運転感覚の不思議さ。二輪のように傾ける行為は一切不要で、曲がるときはハンドルバーをエイヤと押したり引いたり。オートバイと同等のオープンエア式快適さに包まれながら、その点だけは何とも新鮮というか奇妙だった。
それにしても存在感あるなあ。これで誰かとの待ち合わせに乗りつけたらどんなリアクションをするだろう。それ、すっごく見てみたい。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明)

田村 十七男
-
第2回:今年イチバンのオススメはこれだ!
輸入バイク チョイ乗りリポート(後編) 2016.5.25 魅力的な輸入バイクが一堂に会するJAIA輸入二輪車試乗会。後編では、ハーレーダビッドソンのカスタムモデルやトライアンフ伝統のバーチカルツインモデル、ドゥカティのアドベンチャーツアラーなどに試乗。その魅力をリポートする。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。