第1回:プジョー308 GTi by PEUGEOT SPORT
ドライバーを熱くする 2016.04.04 最新モデルが語る PEUGEOTの“今”<PR> プジョーが誇る伝統の“ホットハッチ”「GTi」シリーズに、モータースポーツの技術が注がれた「308 GTi by PEUGEOT SPORT」が登場。フランス車やスポーティーモデルに深い造詣を持ち、走りに一家言ある3人が、その出来栄えを語る。【どんなクルマ?】
モータースポーツ部門が鍛えた伝統の“GTi”
プジョーは1984年発表の「205 GTi」以来、ハッチバックのスポーツモデルにこの“GTi”の3文字を使い続けている。似たような性格、似たような名前のクルマはほかにもあるけれど、元205 GTiオーナーとして思うのは、プジョーのGTiは“ホットハッチ”という言葉が世界一似合うクルマではないかということだ。
絶対的な速さも大切だけれど、それだけでは“ファストハッチ”になる。ホットハッチにはそれ以上に、感覚的な速さ、デザインやレスポンスやサウンド、ステアリングやシートやペダルを通して伝わってくるライブ感こそ大切だ。GTiが高い評価を受けている肝はそこにあると信じている。
今年2月、現行308に追加されたGTi by PEUGEOT SPORTも、その一員といえるけれど、注目したいのは車名の最後にPEUGEOT SPORT(プジョースポール)の称号が追加されたことだ。プジョー直属のモータースポーツ部門が手がけた渾身(こんしん)のホットハッチということになる。
「250」と「270」の2車種が用意されていることも興味深い。ちなみに数字は最高出力を示している。エンジンはどちらも1.6リッター直列4気筒ターボで、トランスミッションは3ペダルの6段マニュアル、ハンドル位置は左だ。
昔のスポーツモデルでは、チューニングの度合いによって最高出力が異なるエンジンを用意するのはよくあることだった。排出ガス規制が厳しくなり、電子制御が当たり前になった現在の量産車ではあまり見かけなくなったが、プジョーがそれを復活させてくれたことがうれしい。
PSAプジョー・シトロエンの新世代プラットフォーム「EMP2」が採用された現行型308は、圧倒的な軽量化を実現したことでも知られている。その美点は308 GTi by PEUGEOT SPORTも受け継いでいる。1320kgという車両重量は、ライバルより50kg以上軽いのだ。
ボディーはプジョースポール専用フロントグリル、サイドスカートなどで武装。インテリアは各所に赤いステッチをあしらい、専用ステアリングやアルミペダルなどをおごっている。全部で6色が用意されるボディーカラーには、リアドアのところで大胆な塗り分けを施した「クープ・フランシュ」と呼ばれるツートーン仕様も設定されている。
→「プジョー308 GTi by PEUGEOT SPORT」オフィシャルサイト
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【運転すると?】
エンジンもシャシーも、意のままに操れる
今回はサーキットに特設されたショートコースで、250と270の両方に乗った。最初にステアリングを握ったのは270。ボディーカラーは270だけに設定される赤と黒のクープ・フランシュだ。
鮮烈なエクステリアを目にしながらキャビンに入ると、そこは想像以上にシックだ。イメージカラーの赤は、インパネやドアトリム、シートなどのステッチにとどめており、抑えがきいた色使いにセンスのよさを感じる。270に装備されるバケットシートは要所をしっかりサポートする一方で、ガチガチではなく、フランス車らしい優しさも併せ持っていた。
スターターボタンを押してエンジンを始動させ、アルミ製のノブを持つシフトレバーの確実な感触を楽しみながら、ギアをローに入れる。コースに出てまず感じたのは、扱いやすさだ。
2リッタークラスのライバルと同等の270psを1.6リッターの排気量でマークしているのにもかかわらず、2000rpmあたりからのトルクの盛り上がりはなだらか。レスポンスにも遅れはなく、自然そのものだ。フルスロットルでは強烈なダッシュを披露するのだが、反応がリニアなので安心して踏めるし、回す楽しさも味わえる。だからこそMTが生きる。
シフトレバー手前に備わる「ドライバースポーツパック」のスイッチを押してスポーツモードを選ぶと、メーターの色が白から赤に変わり、過給圧などがバーグラフで表示されるとともに、スロットルレスポンスは鋭く、サウンドは活発になる。一度でもこの音を聞いたが最後、ずっとこのモードで走りたいと多くのドライバーが思うだろう。
コーナーが近づいてきたので、右足をブレーキペダルに移す。強力な減速感に感心しながら、他の308シリーズにも装備される小径ステアリングを切ると、標準車からわずか30kg増しに抑えられたボディーがスッと軽快に向きを変えていった。15mmローダウンしたプジョースポール仕込みのシャシーはかなり強烈なグリップを発揮するのだが、その状況は手に取るように把握でき、やはり安心してクルマを操れる。
さらにペースアップすると、スロットル操作で後輪をスライドできるようになる。動きに唐突さは一切なく、これなら積極的に向きを変えるのに使えるだろう。立ち上がりでは270に標準装備されるトルセンLSDが、右足に込めた意思を忠実に推進力に変えていく。すべてがドライバーの思いどおり。だから熱くなれる。これこそホットハッチだ。
→「プジョー308 GTi by PEUGEOT SPORT」オフィシャルサイト
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【どんな人にオススメ?】
“感覚性能”を重視する人に選んでほしい
270の走りがあまりに理想に近かったので、なぜ2種類の308 GTiを用意したのかを不思議に思うようになった。でも250に乗り換えたら、これはこれで存在価値があるという結論に至った。
1.6リッターエンジンは、最高出力の数値だけが20ps低く、発生回転数や最大トルクは同一。ゆえに6段MTを操っての加速に大差は感じなかった。一方のシャシーは、ホイール/タイヤが19インチから18インチになり、トルセンLSDは装備されず、ブレーキもおとなしい。したがって、今回のようなコースを攻め込んでいくシーンでは270に分がある。
しかし308 GTiのようなホットハッチは、クローズドコースを攻めるためだけに生まれたクルマではない。メインステージはむしろ日常だ。だからこそ標準型の308と同形状のフロントシートや、当たりが穏やかなタイヤ、約50万円安い価格などは、家族の一員としてこのホットハッチを迎え入れるユーザーの味方になるはずである。
2台に共通して言えるのは、昨今ありがちな、高性能すぎて操る実感が得られないタイプのものではなく、クルマを走らせる実感が濃厚に得られる、生粋のスポーツモデルだったということだ。3ペダルMTのみという設定はその象徴だが、ターボらしからぬ自然なマナーのエンジンや、ドライバーがコントロールする余地を残したシャシーなど、車両全体にその思想が息づいている。
約30年前に登場した205 GTiも、スペックだけ見ると平凡だったのに、打てば響くようなレスポンスで多くの人を魅了したものだった。絶対性能よりも感覚性能に秀でたホットハッチが欲しい。そう考えている人にとって、308 GTi by PEUGEOT SPORTは期待に応える一台になるはずだ。
(文=森口将之/写真=田村 弥)
【クロスレビュー:桂 伸一】
コーナーを攻めて楽しめるホットハッチ
わずか1.6リッターの排気量から、実に270ps/33.7kgmを絞り出す! これが本当に1.6リッターの走りだろうかと、その力量感に満ちあふれた有り余るエンジンパワーと、ターボトルクによるはじけるような加速Gにはあきれてしまう……。
反対に、その勢いを一撃で沈めるブレーキにも頼もしさを感じる。ペダルにかける踏力の強弱を正確に減速Gに変え、車速を制御するための、あるいはクルマを止める際のコントロール性にも優れる。動力性能に余裕で対応した、信頼に応える存在である。
減速しながらコーナーの進入に向けてステアリングを切り込む。スッと素直に、軽快に応答するノーズの動きは従来のプジョーのそれで、ハンドリング特性に基本変わりはない。
ところが……コーナーのなかほどから立ち上がりに向けてアクセルを強く踏み込み、コーナリングスピードを高めていくと、グリップ力に勝る19インチタイヤが強い横Gを乗員に突きつける。そこに強力なターボトルクが加わると、大きな舵角(だかく)が与えられた前輪は瞬間的にホイールスピンを起こすが、即座にトルセンLSDが働き、駆動力は両方の前輪に無駄なく伝達される。ホイールスピンは瞬時に抑えられ、クルマが、舵を切った方向に強引に曲げられていく。
まさに、308 GTi by PEUGEOT SPORTがコーナーを攻めて楽しめるホットハッチであることを物語るシーンだ。サーキットでは特に有効な武器になること間違いなしのトルセンLSD。市街地の速度域では特に気にならないとして、峠を速いペースで進む場合、パワーオンしながらのステア操作では“曲がり過ぎ”に注意したい。
標準モードからスポーツモードにした瞬間、アクセルレスポンスはクイックになり、エンジンサウンドは野太くなり、メーターは赤く染まる。まさに“走れ走れ”とドライバーをせかす演出が楽しい。左ハンドルにマニュアルシフト!! 忘れていた感覚を呼び戻さねば、楽しい付き合いはできないのである。
(文=桂 伸一/写真=田村 弥)
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【クロスレビュー:嶋田智之】
FFのスポーツモデルとして第一級の存在
パイクスピーク・ヒルクライムは復帰初年度に、ダカール・ラリーでは復帰2年目で、いずれも“圧勝”といえる強さで制覇するという半端じゃない結果の出し方をしているプジョースポール。そんな技術者集団が手がけたモデルなのだから、と期待感を抱いていたのは確かだ。そして、ぶっちゃけクルマの出来は期待以上だった。
まず、いかにも気持ちよく走ってくれそうな姿勢がいい。品のない後付けパーツでワル目立ちしないのがプジョー流。時間をかけて足腰をキッチリと煮詰めたレーシングカーのような引き締まったたたずまいから、本気の度合いが察せられる。事実、大幅に増強されたパワーとトルクに対応するため、足まわりはダンパーやバネにとどまらず、ほぼ全面的な見直しが行われている。そうしたツメツメにツメたようなところが、隙のない姿勢を自然に作り上げているわけだ。
走りも、ある意味ではその見た目のごとし。変にとがった演出などせず、速さと楽しさをきっちり追求している感じだ。270ps仕様も250ps仕様も、数値から想像すると肩透かしを食らうぐらい乗りやすい。けれど、スロットルを踏み込んでいくとズバッと速い。
270ps仕様には最後のひと伸びがあってより速いのは確かだけど、250ps仕様でも全く不満はない。どちらもその加速感は素晴らしく力強く、骨太だ。ピーキーさなどみじんもなく、厚手のトルクとともにパワーを満遍なく解き放っていく印象で、どの回転域からでも即座に速さを引き出していける。それを6段MTで走らせるのが楽しくないはずはないだろう。
コーナリングも見事だ。筋肉質なアシがよく伸びて路面をつかみ、ドライバーの意思に忠実に曲がってくれる。曲がることそれ自体がとても気持ちいい。トルセンLSD付きの270ps仕様はそこから奥にもうひとつお楽しみがあって、ステアリングを切った分だけグイグイとその方向に食い込んでいく感覚が、さらなる刺激を生んでいる。僕が試乗をしたのはヘビーウエットというシチュエーションだったけど、そんな中でもスロットルのオンとオフでクルマの向きを変えるような走り方が楽しめるのも素晴らしい。FFのスポーツモデルとして、僕はピカイチだと思う。
ホットハッチとしては最強の一台なのに、それを演出や見せかけではなく、態度、すなわちテイストや実力で示しているのが、何ともいえずプジョーらしく、そしてプジョースポールらしい。そういうところが、また実に心憎いのである。
(文=嶋田智之/写真=田村 弥)
→「プジョー308 GTi by PEUGEOT SPORT」オフィシャルサイト
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車両データ
プジョー308 GTi 270 by PEUGEOT SPORT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4260×1805×1455mm
ホイールベース:2620mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:270ps(200kW)/6000rpm
最大トルク:33.7kgm(330Nm)/1900rpm
タイヤ:(前)235/35ZR19 91Y/(後)235/35ZR19 91Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:15.9km/リッター(JC08モード)
価格:436万円
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プジョー308 GTi 250 by PEUGEOT SPORT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4260×1805×1455mm
ホイールベース:2620mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:250ps(184kW)/6000rpm
最大トルク:33.7kgm(330Nm)/1900rpm
タイヤ:(前)225/40ZR18 92W/(後)225/40ZR18 92W(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:15.5km/リッター(JC08モード)
価格:385万円