ホンダ・オデッセイ/オデッセイ アブソルート 開発者インタビュー
20年目の挑戦 2013.11.02 試乗記 本田技術研究所栃木研究所 LPL室
主任研究員
中川真人(なかがわ まこと)さん
背が高くなり、初めてスライドドアが採用されるなど、大きく様変わりした新型「ホンダ・オデッセイ」。その目指したところとは? 開発者に聞いた。
時代が求めた変化
4枚ヒンジドア。乗用車的な走り。3列シートを持つミニバンとして、独特のポジションを得ていた「ホンダ・オデッセイ/オデッセイ アブソルート」がフルモデルチェンジを受けた。2013年11月1日に発売されたニューモデルは、全高がアップして背の高い一般的なミニバンフォルムに近づき、左右リアドアはスライド式となった。
5代目となった新型オデッセイの開発を取りまとめた中川真人主任研究員にお話をうかがった。
――ティザー広告でも強調されていたように、新型オデッセイ/オデッセイ アブソルートは、ついにスライドドアを採用しました。その理由は何ですか?
時代のニーズでしょうか。3代目オデッセイが出た10年前くらいまでは、セダン、ステーションワゴンからオデッセイに乗り換えるお客さまが多かった。そのころは、スライドドアというとワンボックスのイメージが強くて、むしろ嫌われていたんです。
ところが、その後、ミニバン市場がグワッと伸びると、スライドドアを備えたクルマが普及して、ユーザーの間で抵抗感がなくなった。そのうえ、スライドドアの便利さも認知されるようになりました。
――具体的には、どのような?
狭い場所でも、横に止まっているクルマを気にしないでドアを開閉できる。それが一番大きな利点です。また、お子さまやお年寄りの方も、ドアをサッと開けて、乗り降りがしやすい。そんなよさもあります。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“現代ミニバン”の3要素
初代オデッセイがデビューしたのは、1994年。「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)」を標榜(ひょうぼう)し、“セダンづくりから発想したミニバン”というコンセプトが新しかった。それから19年。市場は大きく変化した。
今回、背を高くしたのも、お客さまのニーズが10年前とは全然変わってしまったためです。「室内空間」「スライドドア」「キャプテンシート」……。
――その3要素がどうしても必要だ、と。
そうです。2列目のシートにしても、以前はベンチシートと独立したキャプテンシートの比率が、7:3くらい。2代目オデッセイくらいまでは、ベンチシートの方が多かった。ところが、いまはまったく逆。他社の例を出すのも何ですが、トヨタさんでは、9割近くがキャプテンシートになるモデルもあるそうです。
――「とにかく人をたくさん運びたい」というより、「車内でも余裕をもってリラックスしたい」というニーズに変わったわけですね。
もちろんベンチシートの需要も残っています。小さいお子さまがいる人は、おむつを交換するのにベンチシートを選ばれたりもします。
ただ、お子さまが小学生以上になると、キャプテンシートが多くなる。左右独立していてリラックスできるのと、サードシートまで2列目シートの間を通ってのウォークスルーが可能。シートを動かさずに、3列目までパッと行ける。そんなニーズも高まっています。
新型はハンパじゃない
一般的なミニバンフォルムに近づき、左右スライドドアを採用した5代目オデッセイ/オデッセイ アブソルート。それは、これまでの上級ミニバン「エリシオン」を統合することになった。
――オデッセイは、5代目となって初めてホイールベースが延ばされました。
1列目から3列目までの空間を広くするために、ホイールベースを延ばしています。
――ホイールベース2900mmは、今回統合されることになったエリシオンと同寸ですね。
エリシオンのお客さまにも買っていただくためには、室内の天地に加え、前後の長さも必要でした。ホイールベース延長は、7/8人乗ったフル乗車のときに、3列目シートの足元空間を確保するのに役立っています。
――エリシオンは、「ボディーサイズのわりにハンドリングがいい」と言われたミニバンでした。ただ、販売面では……。
ちょっと中途半端だったかもしれませんね。特に新型「トヨタ・アルファード」の出現で、苦戦するようになりました。同じ価格帯で、アルファードの方がかなり大きかったですから。お客さまは、10mm、20mmの違いをシビアに見ます。
――ユーザーが「ミニバンに乗り慣れた」ということもあるのでしょう。
その通りです。「ミニバン to ミニバン」の方は、やはり「前のモデルより少しでも広く」と考えられます。
――ニューオデッセイは、全高を高めるだけでなく、床を低くしてもいます。ライバルに対するアドバンテージは何ですか?
われわれとしては、「トヨタ・エスティマ」をターゲットとしています。価格帯もボディーサイズもほぼ一緒ですから。エスティマに対しては、圧倒的な広さがあります。それからダイナミック性能。「乗り心地」「走行性能」「燃費」。いずれもエスティマよりかなり上を行っております。
家庭のクルマとして、3代目オデッセイのアブソルートを使っている主任研究員。今回、「アブソルートEXに乗り換えよう」と考えているそうだ。
(インタビューとまとめ=青木禎之/写真=峰 昌宏)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
MINIジョンクーパーワークス エースマンE(FWD)【試乗記】 2025.11.12 レーシングスピリットあふれる内外装デザインと装備、そして最高出力258PSの電動パワーユニットの搭載を特徴とする電気自動車「MINIジョンクーパーワークス エースマン」に試乗。Miniのレジェンド、ジョン・クーパーの名を冠した高性能モデルの走りやいかに。
-
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.11.11 ボルボの小型電気自動車(BEV)「EX30」にファン待望の「クロスカントリー」が登場。車高を上げてSUVっぽいデザインにという手法自体はおなじみながら、小さなボディーに大パワーを秘めているのがBEVならではのポイントといえるだろう。果たしてその乗り味は?
-
メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.10 2020年に上陸したメルセデス・ベンツの3列シート7人乗りSUV「GLB」も、いよいよモデルライフの最終章に。ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」に追加設定された新グレード「アーバンスターズ」に試乗し、その仕上がりと熟成の走りを確かめた。
-
アウディSQ5スポーツバック(4WD/7AT)【試乗記】 2025.11.8 新型「アウディSQ5スポーツバック」に試乗。最高出力367PSのアウディの「S」と聞くと思わず身構えてしまうものだが、この新たなSUVクーペにその心配は無用だ。時に速く、時に優しく。ドライバーの意思に忠実に反応するその様子は、まるで長年連れ添ってきた相棒かのように感じられた。
-
MINIジョンクーパーワークスE(FWD)【試乗記】 2025.11.7 現行MINIの電気自動車モデルのなかでも、最強の動力性能を誇る「MINIジョンクーパーワークス(JCW)E」に試乗。ジャジャ馬なパワートレインとガッチガチの乗り味を併せ持つ電動のJCWは、往年のクラシックMiniを思い起こさせる一台となっていた。
-
NEW
ホンダ・ヴェゼルe:HEV RS(4WD)【試乗記】
2025.11.15試乗記ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」にスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。ベースとなった4WDのハイブリッドモデル「e:HEV Z」との比較試乗を行い、デザインとダイナミクスを強化したとうたわれるその仕上がりを確かめた。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ・マカン4編
2025.11.14webCG Moviesポルシェの売れ筋SUV「マカン」が、世代交代を機にフル電動モデルへと生まれ変わった。ポルシェをよく知り、EVに関心の高いレーシングドライバー谷口信輝は、その走りをどう評価する? -
ホンダが電動バイク用の新エンブレムを発表! 新たなブランド戦略が示す“世界5割”の野望
2025.11.14デイリーコラムホンダが次世代の電動バイクやフラッグシップモデルに用いる、新しいエンブレムを発表! マークの“使い分け”にみる彼らのブランド戦略とは? モーターサイクルショー「EICMA」での発表を通し、さらなる成長へ向けたホンダ二輪事業の変革を探る。 -
キーワードは“愛”! 新型「マツダCX-5」はどのようなクルマに仕上がっているのか?
2025.11.14デイリーコラム「ジャパンモビリティショー2025」でも大いに注目を集めていた3代目「マツダCX-5」。メーカーの世界戦略を担うミドルサイズSUVの新型は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 開発責任者がこだわりを語った。 -
あの多田哲哉の自動車放談――フォルクスワーゲン・ゴルフTDIアクティブ アドバンス編
2025.11.13webCG Movies自動車界において、しばしば“クルマづくりのお手本”といわれてきた「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。その最新型の仕上がりを、元トヨタの多田哲哉さんはどう評価する? エンジニアとしての感想をお伝えします。 -
新型「シトロエンC3」が上陸 革新と独創をまとう「シトロエンらしさ」はこうして進化する
2025.11.13デイリーコラムコンセプトカー「Oli(オリ)」の流れをくむ、新たなデザイン言語を採用したシトロエンの新型「C3」が上陸。その個性とシトロエンらしさはいかにして生まれるのか。カラー&マテリアルを担当した日本人デザイナーに話を聞いた。

































