第318回:VWのディーゼル不正はなぜ起きたのか――
エンジン開発のプロフェッショナルが事件の背景を語る

2015.10.19 エッセイ
 

アメリカで発覚したフォルクスワーゲン(以下VW)の排ガス規制逃れは衝撃的だった。今も世界中が成り行きを注目している。なぜこんな事件が起きてしまったのか。これからディーゼル自動車はどうなっていくのか。エンジン技術に詳しい畑村耕一氏に解説してもらった。

<プロフィール>
畑村耕一(はたむら こういち)
1975年に東京工業大学修士課程を修了し、東洋工業(現マツダ)に入社。ミラーサイクルエンジンの量産化や、ガソリンエンジンの排出ガス対策の研究などに携わる。2001年に同社を退社し、翌年畑村エンジン研究所を設立。多数の自動車関連企業において技術指導を行ってきたほか、近年では予混合圧縮着火の技術研究に取り組んでいる。
東京・新宿の会場で開催されたトークショーの様子。このイベントは畑村氏の著書『博士のエンジン手帖3』と、國政久郎氏と森 慶太氏の共著『営業バンが高速道路をぶっ飛ばせる理由』の発売を記念して行われた。

“エンジンご意見番”の悲しみ

「不正は普通やらんですよ。こんな割の悪いことないもん。何でこんなことをやったんですかね」

畑村耕一氏は残念そうだった。何度も「どうすりゃいいんですかね」とつぶやき、首をかしげる。技術者の良心が踏みにじられたことが、悔しいのだろう。

畑村氏はマツダで長年低公害・低燃費のエンジンを研究していた技術者である。退社後は研究所を設立して自動車関連企業の技術指導を行っている。自動車専門誌『モーターファン・イラストレーテッド』ではご意見番的存在だ。毎号1台のクルマを取り上げて批評する連載があり、このたび、それをまとめた3冊目の本『博士のエンジン手帖3』が発売された。

発売を記念して行われたトークショーが、ちょうどフォルクスワーゲンのディーゼル問題発覚の直後だった。自動車業界を揺るがす大事件に触れないわけにはいかない。聴衆から次々に質問が飛び、関心の高さが伝わってくる。自動車を愛する者は、誰もがやり場のない怒りを抱えているのだ。人々を幸せにするはずのクルマが、世界中から疑惑の目で見つめられている。無念であり、心が痛む。

畑村氏は、著書の中でディーゼルエンジンの排ガス問題について何度も触れている。厳しくなる環境規制にどうやって対処すべきかを、ずっと考えていたのだ。VWだけでなく、日本の自動車メーカーにとっても喫緊の課題である。イベントの後で、あらためてディーゼル不正問題についてお話を伺った。

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