トヨタ・プリウス プロトタイプ(FF/CVT)/プリウス プロトタイプ(4WD/CVT)
TNGAの出発点 2015.11.18 試乗記 “クルマづくりの構造改革”をうたう新世代プラットフォームをベースに、これまで以上の走る楽しさや燃費性能を目指して開発された、4代目「トヨタ・プリウス」。トヨタを代表するエコカーは、どのような進化を遂げたのだろうか。量産型の発売に先駆け、プロトタイプに試乗した。プリウスの「弱み」とは?
富士スピードウェイには朝から大勢の取材陣が詰めかけ、駐車場はまたたく間に満杯になった。プロトタイプではあるが、新型プリウスに初めて乗れる機会なのだから当然だ。注目のモデルであるというだけではなく、トヨタが「これが未来の骨格だ」というスローガンを掲げて推進するToyota New Global Architecture(TNGA)を採用する第1号車なのである。これから10年以上先まで「もっといいクルマづくり」を続けていくための、基盤となるテクノロジーが見えるはずなのだ。
会場に並べられた試乗車の中で、ひときわ目を引くのは新色「サーモテクトライムグリーン」に塗られたモデルである。「シエンタ」の「エアーイエロー」も鮮烈だったが、さらに派手な色だ。遮熱機能付きというのが新しい。ほかの色でも、大胆な造形はなかなかのインパクトがある。東京モーターショーに展示されている時はショーカーとして受け止めることができたが、これが日本中の道にあふれると街の風景が変わってしまいそうだ。
説明会では、もっとショッキングな出来事が待っていた。渡された資料の表紙にとんでもないことが書いてあったのだ。「これまでのプリウスの『強み』と『弱み』」というタイトルで、初代から3代目までのモデルの写真が並べられる。「圧倒的な燃費性能」と「先進装備」を強みとして掲げるのはいい。しかし、その次に「走りの楽しさ/乗り心地」と「スタイリング」が弱みだったとはっきり書いてある。これまでのプリウスは乗り心地が悪くて走っても楽しくなかったし、見た目がカッコ悪かったと言っているようなものだ。諸先輩方にケンカを売っているようにも聞こえるが、まあ、そのぐらいの意気込みで作ったということなのだろう。
リアドアを閉めた時の音に驚く
まだナンバーが付いていないクルマなので、試乗は富士スピードウェイの構内路を使って行われた。制限速度は60km/hということだったから、市街路とほぼ条件は同じだ。最初にリアシートに座ってみた。低重心パッケージをアピールしているだけに、見るからに構えが低い。実際、初代から続いた1490mmという全高が今回は20mm下げられて1470mmとなっている。これでは頭が天井についてしまうのではないかと心配して乗り込んでみたのだ。
案に反して十分なスペースが確保されていたことにはもちろん感心したのだが、ほかにも驚くべきことがあった。ドアを閉めた時に、どっしりとした重厚な音が響いたのだ。プリウスだから当然パシャッという軽い音だと思い込んでいたので、意表を突かれた。現行型との違いは明らかである。剛性を約60%向上させたとされていて、やわなボディーでないことは確かだろう。運転席に座る前からこんなに期待が高まるとは思わなかった。
外観はフロントまわりやリアに思い切った意匠を施しているが、トライアングルシルエットが受け継がれているからひと目でプリウスだとわかる。しかし、内装はずいぶん印象が変わった。これまではセンターコンソールが盛り上がってボリュームがあったが、新型はその部分が低くなってドライバーの囲まれ感は薄い。広い前方視界と相まって、開放的な空間構成になった。コンソールトレイなどに使われるホワイト加飾は光沢があり、どことなくストームトルーパーを思わせる。センターメーターは今回も採用されていて、もはやこれは変えることのできないプリウスの伝統になったのかもしれない。
システムを起動して走りだすと、ああプリウスだなという安心感に包まれる。モーターとエンジンが巧妙に協業している、あの感じだ。まったく別物になったのではなく、1997年以来の積み重ねの上に新型も作られている。それでも、少し強めにアクセルペダルを踏んだ時のレスポンスやステアリングを切り込んだ時の応答性はダイレクト感が増した。着実に進歩しているのだな、という感想である。まだその時は真価がわかっていなかったのだ。
悪路ゾーンでも揺るがないフロア
会場には、現行型プリウスも用意されていた。「どうぞ乗り比べてください」ということで、開発陣の自信がうかがわれる。乗り換えてみると、自分の頭のなかの現行型プリウスと全然違う。新型に引きずられて、記憶が改変されていたことに気づいた。なんともゆる~い作りなのだ。いや、そんなことはないだろう。新型があまりにもシャキッとしているから、比較すると頼りなく感じられてしまっただけだ。
ホットスタンプ材やこれまでより多くの超高張力鋼板を採用し、レーザースクリューウェルディングや構造用ボディー接着剤の採用で接合剛性を上げている。リアサスペンションはダブルウィッシュボーンに換えられた。そういったさまざまな改良が劇的な変化につながっているのだろう。それを深く感じさせたのは、コースに設置された悪路ゾーンである。路面をデコボコにした区画が10km/hに制限されており、通ると激しい揺れに見舞われる。現行型はフロアがバラバラになりそうで怖くなったが、新型はピシッとして乱れを見せない。
今回からプリウスには、新しく4WDモデルが加わった。リアにモーターを配置した電気式四輪駆動である。メーター内のディスプレイには駆動力の分配状況を表示できるので、どんな状況で4WDになるのか試してみた。基本はFFで、定常走行では後輪は駆動力を持たない。発進時もそのままで、4WDになったのは上り坂で急発進した時に一瞬だけだった。よほど不安定な状態にならなければシステムは作動しないが、雪道では大切な機能だ。雪国からは要望が多かったという話で、4WDモデル追加は朗報だろう。
さらに、試乗にはもうひとつのステージがあった。全長800mほどのショートサーキットである。タイトコーナーが連続するテクニカルなコースだ。普通に考えれば、プリウスを持ち込むような場所ではない。まずは、ここにも並べられていた現行型でコースイン。上り坂ではなかなか加速しない。ある程度スピードが出たところでコーナーを迎えると、ブレーキの感触がなんとも不安だ。本当に減速できるか、確信を持てないのである。ステアリングを切り込んでもボディーは嫌々ついてくる感じで、はなはだ心もとない。想像どおりの結果だ。
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サーキット走行での差は歴然
新型に乗って最初のコーナーに差しかかると、何もかもが違うことに気づく。ブレーキは手堅く仕事をこなし、着実にスピードを殺す。現行型のぐにゃっとした感触は取り除かれて、的確なライン取りで曲がることができる。コーナー出口での収束は鮮やかだ。姿勢の乱れを見せずに加速に移っていく。スピードに乗ってすぐに次のコーナーに到達し、リズミカルにサーキット走行を楽しむことができた。テスト車の中には17インチホイールを装着したモデルもあり、15インチのものに比べて一段とスポーティーな印象だった。
プリウスなのにスポーツ走行が楽しいというのは、妙な気分である。ドライブモードスイッチでパワーモードを選ぶと、加速力が増してさらに気持ちよく走れる。これで燃費も向上しているというのだとすれば、驚異的だ。スポーツカーを目指して作ったわけではないだろう。ただ、サーキットで安心感を持って走れるということは、安全性にも貢献するはずだ。しっかりしたボディーが力強い加速と確実な減速、シュアなハンドリングをもたらしている。人とクルマの一体感が高まれば、運転でミスを犯す可能性は減少する。
安全装備も強化された。4つの機能をセットにした衝突回避支援システムの「Toyota Safety Sense P」は、「ランドクルーザー」に続いての採用である。「ヴィッツ」や「アクア」などに搭載されている「Toyota Safety Sense C」との違いは、Cのプリクラッシュセーフティーシステムが車両のみを対象にしているのに対し、Pでは歩行者も検知できることだ。この日は実際に体験するプログラムもあり、約30km/hでダミー人形に接近して自動ブレーキが作動するのを確認した。「クラウン」で初採用された「ITS Connect」も設定されている。10年先の未来を占うモデルであり、先進装備はテンコ盛りにする必要がある。
新型プリウスで採用されたTNGAの全体像はまだ明らかになったとはいえない。トヨタのサイトにある「TNGA、46のこと」には“トヨタの新しいクルマづくり”の思想を表していると書いてあるが、各項目には抽象的な言葉遣いも多い。ようやく具体的な形をとって現れたのが、新型プリウスである。環境車という限定を取り去っても、クルマとしてしっかりとした土台を持っているというサインを感じ取ることはできた。2020年にはトヨタ車の半分がTNGAモデルになるという。未来に向けて、まずはいいスタートを切れたのではないか。
(文=鈴木真人/写真=峰 昌宏、webCG)
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テスト車のデータ
トヨタ・プリウス プロトタイプ(FF車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/3600rpm
モーター最高出力:72ps(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgm(163Nm)
タイヤ:(前)215/45R17/(後)215/45R17
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※データはすべて暫定値であり、変更されることがあります。
テスト車の年式:--
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・プリウス プロトタイプ(4WD車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1475mm
ホイールベース:2700mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/3600rpm
フロントモーター最高出力:72ps(53kW)
フロントモーター最大トルク:16.6kgm(163Nm)
リアモーター最高出力:7.2ps(5.3kW)
リアモーター最大トルク:5.6kgm(55Nm)
タイヤ:(前)195/65R15/(後)195/65R15
燃費:--km/リッター
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※データはすべて暫定値であり、変更されることがあります。
テスト車の年式:--
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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